▼伊予鉄道・三津駅前広場改修 (2006年09月15日『朝日新
聞』) 松山市 整備事業に1300万円 昭和初期から残るといわれる伊予鉄道三津駅の駅前広場約3,500平方メートルを改修するため、松山市は9月定例議会に提出する予算案に整備事業費 1,300万円を計上した。 市は今年度中に測量や設計などの準備を進める方針だ。しかし、改修でロータリーを整備するには駅舎の一部を改築せざるを得な い計画になっており、歴史ある駅舎と新しい広場をどう融合させるのかが課題に上っている。(小坪遊) ◇地元「デザイン残して」 03年、交通の利便性を高めるよう市の交通結節点整備計画策定事業の中で三津駅前の広場の改修が課題に持ち上がった。三津駅前の広場をロータリー化し、 バスの駅前までの乗り入れを可能にする計画だった。 伊予鉄道の郊外線の中では7番目にあたる1日平均約2,072人の利用(05年) がある。しかし、駅前にある「三津駅前」のバス停に行くには駅前の市 道に出た上で南へ約50メートル歩かなくてはならない。市はロータリー化でスムーズな乗り継ぎを可能にし、バリアフリー化にも取り組む。昨夏には、地域住 民に対し詳細な計画図面も示した。 一方、地域住民らは駅舎の存続を心配している。全国の駅舎を回ってガイドブックなどを書いている写真家の杉崎行恭さん(52)によると、三津駅は木材を 使い、曲線を生かしたデザインが特徴で、「材木で栄えた三津の歴史を感じさせる建造物」という。しかし、詳細図面ではロータリーの整備を行うと、その一部 が現在の駅舎にかかることが判明。計画を聞いた地元有志からは駅舎保存を求める声が相次ぎ、2,500人を超える署名が集まった。 川を挟んで三津駅の西にあるカフェ「FLOR(フロア)」を営む徳永孝さん(32)は「三津の昔の姿を残す駅舎を守ることは、三津の歴史を守ること」と 話す。 存続を求める有志と、市、伊予鉄道の立場は図面の発表後、平行線をたどった。結局、今年5月に、署名を集めた有志が「駅舎が残せなくてもせめてデザイン だけは残してもらえないか」と伝えて議論は一段落した。 市も伊予鉄道も「イメージを残して欲しいという意向は聞いている」と答えるものの、伊予鉄道は「駅舎をどうするかは白紙。老朽化が目立ち、必要な措置は とりたい」としている。 徳永さんは「ロータリーも駅舎も両立させるのがセンスある行政のやり方」と、今後の対応を見守る。 |