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3−2.仙台都市圏の JR線

目 次
@JR路線別の各駅乗車人員の推移の分析
A 新駅開業の影響を見る
B 新駅設置構想と戦前のガソリンカー駅
C 仙台駅の列車ダイヤの研究
  (1) 東北本線  (2) 仙石線  (3) 仙山線
D東北本線の改良を考える
  (1) 利府駅の研究
E仙石線の改良を考える
  (1)仙石線の改良・改善の歴史
  (2)仙台〜石巻間の輸送について
  (3)連続立体交差事業
F仙 山線の改良を考える
  (1) 仙山線の改良・改善の歴史
  (2) 「中江駅」構想と高架・複線化構想について
  (3) 北仙台駅とその周辺の改良・改善を考える
  (4) 仙山線乗車記
G常磐線の改良を考える


@JR路線別の各駅乗車人員の 推移の分析

■仙台都市圏の東北本線  1日あたり乗車人員の推移
営 業`
駅   名
1985年度 1990年度 1995年度 2000年度 2005年度 2006年度
2007年度 2008年度
2009年度
2010年度 2012年度
45.0
白石
**
**
**
3,590
3,240
3,104
3,063
3,030
3,007
2,897
2,900
31.7
大河原
4,205
**
4,230
4,052
3,702
3,574
3,523
3,435
3,356
3,218
3,319
28.7
船岡
**
3,557
3,430
3,234
3,189
3,170
3,135
3,128
3,135
3,125
3,276
24.1
槻木
**
3,511
4,849
3,478
3,216
3,148
3,063
3,039
2,937
2,826
2,773
17.6
岩沼
7,035
7,737
7,748
7,341
7,198
7,153
7,157
7,088
7,011
6,743
6,933
13.9
館腰 ※
**
(1,765)
(2,105)
2,268
2,409
2,361
2,093
2,069
1,927
1,846
2,110
10.4
名取 ※
**
(7,363)
(7,873)
6,729
6,719
6,976
8,334
9,745
10,164
10,085
10,830
7.7
南仙台
3,925
6,456
7,679
7,600
8,048
8,165
8,543
8,700
8,652
8,521
9,105
5.5
太子堂





1,637
1,774
2,273
2,487
2,549
2,869
4.5
長町
3,668
4,615
5,035
5,645
6,021
6,050
5,968
6,403
6,562
6,379
7,006
0.0
仙台
(うち新幹線)
69,021
(**)
84,260
(**)
98,260
(22,221)
78,195
(22,474)
76,723
(22,496)
76,162
(22,831)
78,915
(23,614)
78,839
(22,944)
77,146
(21,648)
74,672
(20,439)
80,171
(24,319)
4.0
東 仙台
2,055
3,226
3,755
3,915
3,351
3,270
3,276
3,253
3,159
3,019
3,161
8.1
岩 切
2,599
3,211
3,212
3,253
3,603
3,811
4,035
4,094
4,119
3,984
4,260
12.3
利 府
**
**
**
2,429
2,703
2,616
2,582
2,596
2,579
2,563
2,700
10.4
陸 前山王 ※
**
(603)
494
635
非公表
非公表 非公表
非公表
非公表
非公表 非公表
11.7
国 府多賀城




906
976
1,014
1,099
1,091
1,052
1,104
13.4
塩 釜 ※
(3,203)
4,064
4,091
3,769
3,381
3,392
3,352
3,270
3,158
3,033
3,166
23.4
松 島
**
**
**
1,731
1,527
1,477
1,473
1,494
1,405
1,320
1,398
25.4
愛宕
**
**
**
523
非公表 非公表 非公表
非公表
非公表
非公表 非公表
34.8
鹿 島台
**
2,810
2,570
2,226
2,055
1,988
1,912
1,859
1,817
1,695
1,879
39.7
松 山町
**
**
**
777
707
695
693
696
689
677
670
43.2
小 牛田
**
**
**
2,532
2,221
2,154
2,133
2,069
2,049
1,984
2,053
営 業` 駅名
1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
2009 年度
2010 年度
2012 年度
JR東日本のwebサイト及び各自治体の統計書から筆者作成
**資料未入手のため不明  ※館腰、名取、陸前山王、塩釜の()付乗車人員は1-12月平均


■仙台都市圏の常磐線・阿武 隈急行 主要駅の1日あたり乗車人員 の推移
営 業`
駅   名
1985年度 1990年度 1995年度 2000年度 2005年度 2007年度 2008年度
2009年度
2010年度 2012年度
常 磐線
26.1
亘 理
**
**
**
2,810
2,494
2,362
2,298
2,212
2,158
2,608
31.1
浜 吉田
**
**
**
1,034
884
810
769
744
717
173
35.0
山 下
**
**
**
1,164
986
936
932
882
851
215
39.5
坂 元
**
**
**
506
427
403
383
356
331
85
44.9
新 地
**
537
475
非公表
347
341
321
322
317
174
53.7
相 馬
2,165
2,229
2,371
2,002
1,722
1,758
1,703
1,593
1,502
901
66.3
鹿 島
**
778
683
596
484
434
430
405
378
293
73.8
原 ノ町
**
2,696
2,697
2,336
1,991
1,851
1,815
1,717
1,679
619
阿 武隈急行
35.7
角 田
**
1,757
2,034
1,746
**
**
**
**
** **
JR東日本のwebサイト及び各自治体の統計書から筆者作成、営業`は仙台駅から の営業キロ
**資料未入手のため不明

■仙石線主要駅の1日あたり乗車 人員の推移
営 業`
駅   名
1985年度 1990年度 1995年度 2000年度 2005年度 2006年度
2007年度 2008年度 2009年度
2010年度 2012年度
0.0
あ おば通



19,198
21,200
21,298
21,535
21,587
21,155
20,180
19,441
1.3
榴ヶ 岡
2,092
2,334
2,540
2,745
2,580
2,505
2,625
2,654
2,681
2,621
2,891
2.4
宮 城野原
3,828
5,091
5,142
5,469
5,581
5,478
5,701
5,772
5,648
5,429
5,244
3.2
陸 前原ノ町
2,905
3,594
3,898
3,561
3,644
3,566
3,637
3,618
3,538
3,354
3,620
4.0
苦 竹
1,760
2,278
2,530
2,712
2,502
2,414
2,407
2,384
2,420
2,334
2,458
5.6
小 鶴新田




3,429
4,046
4,698
5,279
5,367
5,310
5,380
7.7
福 田町
2,814
3,131
3,387
4,221
4,028
4,075
3,928
3,886
3,676
3,516
3,533
8.6
陸 前高砂
2,897
3,365
4,067
4,284
4,603
4,669
4,670
4,849
4,859
4,659
4,788
10.3
中 野栄
1,730
2,905
3,981
4,377
3,742
3,679
3,732
4,221
4,321
4,144
4,718
12.6
多 賀城
**
(6,989)
7,318
7,963
7,195
7,126
7,116
7,061
6,781
6,389
6,046
14.4
下 馬
**
(3,921)
3,341
3,657
3,547
3,529
3,560
3,580
3,493
3,364
3,540
15.2
西 塩釜
2,521
2,654
2,689
1,120
非公表 非公表 非公表
非公表
非公表
非公表 非公表
16.0
本 塩釜
5,542
4,491
4,112
3,599
3,245
3,089
3,108
3,074
2,992
2,849
2,736
17.2
東 塩釜
2,646
2,852
2,803
2,504
2,398
2,372
2,488
2,558
2,546
2,467
2,469
23.2
松 島海岸
**
**
**
1,083
1,001
1,038
1,119
1,140
1,187
1,136
1,078
25.5
高 城町
**
**
**
1,225
1,127
1,089
1,084
1,075
1,102
1,047
1,078
34.0
野 蒜
**
**
**
727
617
579
571
527
493
478
27
37.2
陸 前小野
**
**
**
391
378
364
371
390
364
346
175
41.4
矢 本
**
**
**
1,391
1,256
1,208
1,168
1,125
1,069
1,020
777
47.8
蛇田
**
**
**
978
896
895
886
867
848
826
364
48.8
陸 前山下
**
1,477
1,295
1,242
非公表 非公表 非公表
非公表
非公表
非公表 非公表
50.2
石 巻
**
7,323
6,022
5,075
4,513
4,392
4,197
3,936
3,811
3,627
2,077
営 業` 駅 名
1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
2009 年度
2010 年度
2012 年度
JR東日本のwebサイト及び各自治体の統計書から筆者作成
**資料未入手のため不明


■仙山線(東照宮〜作並)の1日あたり乗車人員の推移
営業`
駅 名
1985年度 1990年度 1995年度 2000年度 2005年度 2006年度
2007年度 2008年度 2009年度
2010年度 2012年度
3.2
東 照宮

1,355
2,144
2,349
2,380
2,423
2,605
2,644
2,616
2,533
2,735
4.8
北 仙台
1,248
2,174
2,984
3,421
3,806
3,926
4,159
4,239
4,304
4,203
4,277
6.5
北 山
414
1,378
1,995
2,201
2,786
2,928
2,210
2,219
2,218
2,113
2,316
7.5
東 北福祉大前





1,083
1,957
2,369
2,628
2,760
2,889
8.6
国 見
272
1,921
3,966
4,390
4,306
4,102
3,909
3,759
3,510
3,509
3,637
10.1
葛 岡


246
409
437
419
426
非公表
非公表
非公表 非公表
12.7
陸 前落合
777
1,882
2,400
2,597
3,193
3,350
3,521
3,581
3,529
3,469
3,786
15.2
愛 子
1,111
1,901
2,273
2,939
3,380
3,358
3,420
3,458
3,441
3,409
3,657
20.6
陸 前白沢
112
129
126
96
72
65
55
非公表
非公表
非公表 非公表
23.7
熊ヶ 根
148
155
120
102
107
111
105
非公表
非公表
非公表 非公表
28.7
作 並
159
289
266
252
233
225
230
206
189
179
167
合  計  
4,241
11,184
16,520
18,756
20,700
21,990
22,597
22,475
22,435
22,175
23,464
JR東日本のwebサイト及び仙台市統計書より筆者作成、2008年度から合計に葛岡、陸前白沢、熊ヶ根は含まない。
営業`は仙台駅からの営業キロ




A新駅開業の影響を見る      


 仙台都市圏のJR線は近年、新駅の設置が続いている。その効果によってJR線は仙台駅から15km圏域ぐらいまでは利用者数が増加傾向にあると言っ ても良いだろう。鉄道はネットワーク性が大事であり1つの新駅がその都市圏の中心駅の利用者増に寄与するのは当然 としても、薄く広く各駅の利用者を増加させる効果が期待できる。そのため新駅を設置し、利用者を底上げしていくことが仙台都市圏のJR線における列車本数 の増加、更には快速列車の増発などのダイヤ面の改善に結び付くはずだ。
 そして仙台都市圏のJR線には新駅設置の可能性がある場所がまだまだ多いと思われる。例えば東北本線の仙台駅〜長町駅間は4.5km、仙台駅〜東仙台駅 間は4.0kmもあり、大都市近郊らしからぬ駅間距離がある。このような箇所は仙台都市圏の他の駅間でも見られるのだが、そのような箇所では実際、新駅構 想がある場合もあって今後、具体化する可能性も充分ある。そういった新駅設置の可能性や構想を纏める前にまずは既に開業した新駅の影響を見てみたい。もち ろん影響というのは基本的に好影響のことで、新駅を設置することの意義有効性をアピール したい意図があるに他ならない。
 さて取り上げる新駅は、2000年以降に開業した小鶴新田、太子堂、東北福祉大前の3駅とした。本当は国府多賀城駅も取り上げたかったのだが、隣接する 陸前山王駅の乗車人員のデータが近年分から集計されなくなり、比較できなくなってしまったため諦めた。


(1)小鶴新田駅と周辺3駅(苦竹、福田町、東仙台)

 仙石線の小鶴新田駅は新田東地区の土地区画整理事業の進捗に伴い苦竹駅〜福田町駅間に2004(平成16)年3月13日に開業した。
 小鶴新田駅と仙石線におけるその両隣の苦竹福田町の両駅と新田東地区に隣接する東北本線の東 仙台駅の乗車人員の推移を比較してみることにした。

小鶴新田駅は近代的な橋上駅舎  2013.9

苦竹駅を発車する「あおば通」駅行き普通列車  2008.11

■1日あたり乗車人員の推移 (人)

苦 竹
小 鶴新田
福 田町
東仙台
合 計
1992 年度
2,490

3,391
3,691
9,572
1993 年度
2,457

3,295
3,781
9,533
1994 年度
2,485

3,215
3,673
9,373
1995 年度
2,530

3,387
3,755
9,672
1996 年度
2,704

3,724
3,882
10,310
1997 年度
2,621

4,004
3,988
10,613
1998 年度
2,542

4,062
3,899
10,503
1999 年度
2,469

4,123
3,851
10,443
2000 年度
2,712

4,221
3,915
10,848
2001 年度
2,755

4,297
3,895
10,947
2002 年度
2,555

4,241
3,785
10,581
2003 年度
2,603
1,105
4,267
3,763
11,738
2004 年度
2,442
1,565
4,188
3,546
11,741
2005 年度
2,502
3,429
4,028
3,351
13,310
2006 年度
2,414
4,046
4,075
3,270
13,805
2007 年度
2,407
4,698
3,928
3,276
14,309
2008 年度
2,384
5,279
3,886
3,253
14,802
2009 年度
2,420
5,367
3,676
3,159
14,622
2010 年度
2,334
5,310
3,516
3,019
14,179
2012 年度
2,458
5,380
3,533
3,161
14,532
JR東日本のwebサイトと仙台市統計書より筆者作成

 苦竹駅、福田町、東仙台の3駅とも小鶴新田駅開業の影響はありそうだが限定的と言ってもいいだろうか。ただその中でも東仙台駅がやや落ち込みが大きいよ うだ。小鶴新田駅開業前の2002年度と2008年度の乗車人員を比較すると、苦竹駅が93.3%、福田町が91.6%、東仙台駅が85.9%とな る。しかし、それよりも小鶴新田駅の急成長ぶりには驚かされる。実際、私の記憶でも土地区画整理事業の始まる まで の小鶴新田駅の周りは見渡す限りの水田地帯で、市街化調整区域そのものであった。ところがあれよあれよという間に土地が造成され、駅ができマンションや アパート、スーパーがあっという間に建ち並び、「元気フィールド仙台」という立派な仙台市の運動公園までできた。隣接する国道4号仙台バイパスも6車線化 と立体交差のインターが完成したことでます ます交通至便な 場 所になり、今後も発展が期待できそうだ。

 ところで苦竹駅はJR長町駅が2006(平成18)年に高架化されるまで仙台市内のJR在来線で長らく唯一の高架駅で、独特の存在感がある(と勝手に 思っ ている)。国道45号線をオーバーク ロスしていて、個人的にはどことなく鶴見線の国道駅を連想させる駅だ。高架化は国鉄時代の1966(昭和41)年のことなのだが、何となく古い私鉄っぽい 雰 囲気が漂うのは 気のせいか。苦竹駅は旧宮城電気鉄道時代には存在せず、新田駅が前身で国有化後に移転の上、改称しており現在の雰囲気と私鉄時代とはそれこそ全く関係ない のだが・・・。とにかく私はなぜか昔か ら苦竹駅が好 きなのである。
 駅前の国道45号線は長いこと4車線化拡幅工事を行っており、苦竹駅の前後だけ下り線0.5kmが片側1車線のままの状態が続いていた。しかし2012 年12月23日に念願の4車線化が完成した(参 照)。この「国道45号坂下拡幅(総延長1.2km)」事業は1972年に事業を開始したとのこと。たかだか1.2kmの事業に何と40年の歳月 を費やしたのである。

苦竹駅から仙台市街地方向を望む。中央を走る国道45号線の下り線が1車線のままとなっている 2008.11

4車線拡幅が完了した国道45号線。流れもスムーズになっている 2013.9



(2)太子堂駅と周辺4駅(JR長町、地下鉄長町、南長町、富沢)
 東北本線の太子堂駅は南仙台駅〜長町駅間に2007(平成19)年3月18日に開業した。太子堂駅の開業に影響を受けそうなのは、JR長町駅地下鉄長 町駅地下鉄富沢駅地下鉄長町南駅の4駅と思われるので各駅の乗車人員の推移を見てみ る。

太子堂駅 2011.10

長町駅 2011.10

■1日あたり乗車人員数の推移 (人)

JR
太子堂
JR
長町
地 下鉄
富沢
地 下鉄
長町南
地 下鉄
長町
合 計
1994 年度

5,058
4,732
7,006
6,513
23,309
1995 年度

5,035
5,040
7,422
6,588
24,085
1996 年度

5,196
5,017
7,604
6,353
24,170
1997 年度

5,303
5,026
9,324
6,117
25,770
1998 年度

5,420
5,049
10,102
5,665
26,236
1999 年度

5,562
5,037
10,573
5,776
26,948
2000 年度

5,644
5,362
11,052
5,998
28,056
2001 年度

5,682
5,399
11,450
5,964
28,495
2002 年度

5,685
5,403
10,928
5,834
27,850
2003 年度

5,699 5,433
10,879
5,758
27,769
2004 年度

5,889
5,620
10,892
5,765
28,166
2005 年度

6,021
5,769
11,271
5,706
28,767
2006 年度
1,637
6,050
5,688
11,418
5,607
30,400
2007 年度
1,774
5,968
5,420
10,734
5,277
29,173
2008 年度
2,273
6,403
5,309
10,463
5,412
29,860
2009 年度
2,487
6,562
5,238
10,504
5,297
30,088
2010 年度
2,549
6,379
5,247
10,860
5,639
30,674
2012年度
2,869
7,006
5,929
11,492
6,188
33,484
JR東日本webサイトと仙台市統計書より筆者作成

 1994年度と2010年度を比較すると長町南駅が大きく増加している。これは先に述べたように1997年に隣接して巨大なショッピングモールが開店し たこと が大きく影響しているようだ。その一方で地下鉄の長町駅が大きく減って、それを逆転するようにJR長町駅が増加している。これはJR線の列車本数が増え利 便 性が増していることが大きいのだろう。長町〜仙台間ならばJR線の方が早くて運賃も安いので、列車本数が増加して利便性でも地下鉄と大差無いと利用者が判 断 すれば、仙台駅 周辺に行く場合はJRを選択する人が増えるには自然だ。しかし例えば、市役所や県庁などがある勾当台公園駅まで行くならば地下鉄で行く方が当然便利であ り、地下鉄の利用 者を増やすには五橋駅や広瀬通駅、勾当台公園駅などの仙台駅から離れた都心部の強化がポイントの1つと思われる。
 さて太子堂駅は2007年3月の開業であるため、2006年度の数字はほぼ2週間程度の限られた数字であるので、定期客の切り替え等が起きたと思われる 2007年度の数字から分析してみたい。まず気が付くのは、地下鉄駅が軒並み対前年で乗車人員を減らしてい る点だ。JR長町も若干減っているが、地下鉄3駅合計で対前年5.7%減に対し、JR長町駅は同1.4%減で減少率に大きな差がある。この地下鉄の不振の 理由の1つに太子堂駅の開業の影響があるように思われる。前述したJR長町と地下鉄長町の競合関係と同様のことが、太子堂駅と富沢駅、地下鉄長町駅におい ても発生していると思われる。太子堂駅と富沢駅は直線距離で約1.2kmであるし、長町南駅や長町駅に至ってはもっと近いのだ。

■仙台駅まで行く場合の条件比較

JR  太子堂
地 下鉄 富沢
地 下鉄 長町南
地 下鉄 長町
所 要時間
8分
13分
11分
9分
運 賃
180円
290円
240円
240円
列 車頻度
平日朝    4〜6分毎
日中概ね 10〜20分毎
平日夕   4〜10分毎
平 日朝    3分毎
日中       7分毎
平日夕 5〜6分毎
JTB時刻表等を参考に筆者作成

 上記表より太子堂駅は仙台駅まで行く場合、周辺の地下鉄駅より早くて安いことが分かる。特に富沢駅との運賃差は110円もあり、そうなると例えば勾当台 公園駅まで 行く場合を考えると、地下鉄で富沢〜勾当台公園駅間 は仙台駅までと同じ290円なのだが、太子堂〜仙台駅間をJRに乗り、仙台駅から匂当台公園駅に隣接する県庁市役所前までバスに乗っても100円区間であ るから180円+100 円 = 280円で行けてしまう。乗り換え時間を含めても所要時間も大差ないと考えるとJRを利用する選択肢も大いにありえる。このように仙台市中心部のバス が100円均一になったことも、JRには有利に働き地下鉄には不利に作用していると言える。そもそも仙台〜勾当台公園駅間のような地下鉄にとって ドル 箱と思われる区間で競合が起きるのだ。このことについてはまた別途考えたいと思う。
 ただ列車頻度については、JR東日本に苦言を呈したい。本数が増えたと言っても日中の「概ね」というのが曲者で、日中でも5分間隔があるかと思えば、最悪の場合25分以上間が空く(太子堂が快速通過のため)ことがあ るのだ。その点は地下鉄は日中でも7分毎であるので分かりやすく便利だ。JR東日本はただ本数を増やすだけでなく、定時隔ダイヤにすべきである。5〜25 分間隔のダイヤという のは、非常識と言われても言い訳できないはずだ。このようなダイヤ上の不備は仙山線や仙石線でも見られ、JR東日本の経営姿勢を問い質したい。利用者無視 のダイヤで腹立たしいので、今後も繰り返し訴えていくつもりである。


(3)東北福祉大前駅と周辺2駅(北山、国見)

市道を跨ぐ東北福祉大前駅 バス停も近い 2013.9

T字路に面し駅前に余裕のない国見駅 2013.9
 仙山線の東北福祉大前駅は北山駅〜国見駅間に太子堂駅と同じ2007(平成19)年3月18日に開業した。東北福祉大前駅の開業に影響を受けそうなのは 両隣の北山駅と国見駅なので、これらの駅の乗客数の推移を見てみる。

■1日あたり乗車人員数の推移 (人)

北 山
東 北福祉大前
国 見
合 計
1992 年度
 1,019

 2,411
 3,430
1993 年度
 1,429

 3,293
 4,722
1994 年度
 1,765

 3,662
 5,427
1995 年度
 1,995

 3,996
 5,991
1996 年度
 2,276

 4,346
 6,622
1997 年度
 2,241

 4,596
 6,837
1998 年度
 2,161

 4,494
 6,655
1999 年度
 2,097

 4,432
 6,529
2000 年度
 2,201

 4,390
 6,591
2001 年度
 2,251

4,338
6,589
2002 年度
 2,320

4,544
6,864
2003 年度
 2,546

4,746
7,292
2004 年度
 2,706

4,723
7,429
2005 年度
 2,786

4,306
7,092
2006 年度
 2,928
1,083
4,102
 8,113
2007 年度
 2,209
1,957
 3,908
 8,074
2008 年度
2,219
2,369
3,759
8,347
2009 年度
2,218
2,628
3,510
8,356
2010 年度
2,113
2,760
3,509
8,382
2011 年度
2,115
2,684
3,472
8,271
2012 年度
2,316
2,889
3,637
8,842
JR東日本のwebサイト及び仙台市統計書より筆者作成

 仙山線開通当初は北仙台駅〜陸前落合駅間7.9kmに駅は無かった。しかし沿線の都市化に伴い、1984(昭和59)年2月1日に北山駅、国見駅の2駅 が一度に開業した。さらに国見駅と陸前落合駅間には葛岡駅が1991(平成3)年3月16日に開業し、東北福祉大前駅が2007年に開設されたことで、北 仙台駅〜陸前落合駅間に4駅も開業したことになる。
 国見駅は仙山線の中間駅では最大の乗車人員数を誇る(但し2007年度から中間 駅では北仙台駅が最大となった)ようになったが、快速は長年停車しなかった。しかし2004(平成16)年10月16日 のダイヤ改正か ら国見駅と陸前落合駅に停車するようになった。そのため国見駅は北山駅や東北福祉大前駅よりも利便性は高いと言える。
 さて1992年度以降の乗車人員を上記の表に掲げたが、北山駅と国見駅の2駅合計の乗車人員は1997年度に1回目の ピークに達しその後伸び悩むが、 2002年度から再度増加傾向になり2004年度に再度ピーク に達するが、2005年度には国見駅が減少していて伸び悩みに入りそうな気配があった。しか し東北福祉大前駅の開業によって更にブレークスルーが起きたことが見て取れる。但し北山駅や国見駅の乗車人員が大きく減っていることから東北福祉大前駅に 利用者が流れている実態が予想される。国見駅は快速が停車するため駅自体の利便性は高いものの、駅周辺の道路網などは東北福祉大前駅の方が路線バスの通る 道路に接している点など周囲との交通の便は優れていると言えそうだ。また北山駅の場合、駅前の道路は自動車が進入できず、近くにはバス路線も無いような住 宅密集地で徒歩や自転車、バイクで駅まで来るしかないような環境である。今後もこの3駅周辺では抜本的な道路環境の好転は当面考えられないので、仙山線の 活用が引き続き重要である。そういった意味でも仙山線の複線化などの強化策が求められるが、丘陵地帯の住宅密集地に線路が通っているため、複線化は難しい と私でも言わざるを得ない。うーむ・・・。



B新駅設置構想と戦前のガソ リンカー駅    
 東北本線の仙台駅は隣接する駅とは仙台〜長町間は4.5km、仙台〜東仙台駅間は4.0kmと大都市とは思えない駅間距離がある。しかし、実は戦前には 長町 〜仙台間に2駅、仙台〜東仙台間に1駅が存在したのである。ガソリンカーは塩竈〜長町間で運転されていたのだが、戦時中の燃料不足により運転本数が徐々に 減り、1944年には運行休止。ガソリンカー駅も休止のままとのことだが、実質的には廃止で殆ど跡形も残っていない。

■戦前のガソリンカー駅
駅 名
位 置
開 業年月日
休 止年月日
行 人塚
長町・仙台間
1933年12月21日
1944年11月11日
三 百人町
長町・仙台間
1933年8月15日
1944年11月11日
小 田原東丁
仙台・東仙台間
1933年8月15日
1944年11月11日

 そのため行人塚駅、三百人町駅、小田原東丁駅のいずれも正確な場所は調べた限りでは不明である。しかし地名からおよその場所は想定できる。

 まずは、行人塚駅だが東北本線には「行人塚踏切」が存在する。場所はここな のだが駅もこの辺だったのであろう。この踏切は南小泉と河原町を結ぶ道路上にあり、交通量は比較的多い。東北本線は広瀬川の橋梁に向かって上りかけている 地点であり、その地形を活かして道路と立体交差したいところ。また周囲はマンションや一戸建てが密集する市街地であり、駅を設置する価値はありそうだ。た だ問題は地下鉄・河原町駅までの距離が700m程度しかないことだ。仙台市としては、地下鉄の利用者を減らすことになる東北本線・行人塚駅の復活には積極 的にはならないだろう。またJR東日本が自己負担で新駅を設置する可能性は極めて低いと思われる。

 続いて三百人町駅。地名からするとこの辺だろう。ちなみに東西に走る県道 235号には三百人町バス停が存在する。この道路は仙台駅と若林区の各地を結ぶバスが多数(日中でも片道8本程度)走る幹線道路だが、歩道も満足にない狭 隘な2車線道路であり終日混雑している。そのため、もし三百人町駅があれば仙台駅まで電車で数分で到着できると考えられるので、バスと比べると大幅な利便 性向上が期待される。しかしそれでも三百人町駅復活には大きな問題がある。今度は建設中の地下鉄・東西線の存在だ。(仮称)連坊駅が約500mほど北側に 設置(ここ)されるため、やはり仙台市としては三百人町駅を復活させること に消極的なスタンスを取るだろう。そういった意味では三百人町駅はもう少し南側の六 十人町付近に設置する方が良さそうだ。この辺には遠い将来、(都)南小泉茂庭線が伸びてきて交通の便が良くなることも有利だ。ただこの都市計画道 路ができると地下鉄・河原町駅までの利便性が飛躍的に高まるので、東北本線に駅を設置するのがやっぱり難しいかもしれない…。

 そして小田原東丁駅だが、この辺だろうか。この辺りの道路はいずれも狭 く、一方通行だらけである。東北本線との踏切も多数あって、古くからの密集住宅地といった感がある。そういった意味では駅を復活させるだけでなく、都市計 画道路も整備して風通しの良い街並みを整備したいところだ。まぁ、今の下町然とした雰囲気が良いと思う住民も多いのかもしれないが(笑)。いずれせよこの 辺りはバスが通れるような道も無く、今後も地下鉄などの公共交通機関が整備される予定も無いため、小田原東丁駅が復活すれば劇的に仙台駅までの交通の便が 良くなるだけに是非とも検討してもらいたいところだ。

 このように3カ所の内、小田原東丁駅が最も復活の可能性が高そうだと個人的には考えている。




C仙台駅の列車ダイヤの研究      
(1) 東北本線  (2) 仙石線  (3)仙 山線

仙台駅 2011.10

あおば通駅 2008.11

あおば通駅 2008.11
 仙台都市圏の列車ダイヤは、本数が少ない、等間隔ダイヤになっていない、快速が少ない、など不満だらけであることは最初にも述べたことだが、改めて項を 設けて実証的に纏めてみたい。
 しかし現状を確認するだけでなく、過去とも比較してみたい。私の手元には過去の時刻表がいくつかあるが、差し当たり分割民営化から間もない1988(昭 和63)年8月の時刻表を参照することにした。ちょうどソウルオリンピックの頃で、時刻表の表紙にはセマウル号とソウル地下鉄の走行する姿が載っている。 1988年は25年前つまり四半世紀前ということになるが、その間に仙台都市圏の列車ダイヤはどのように変貌したか、確認してみることにする。もちろん 1988年 と現在の比較だけでは不十分だと思うので、適宜他の年代の時刻表も参照していきたい。

(1)東北本線   

▼東北本線 上り方面 (常磐線、仙台空港線、阿武隈急行を含む)
 仙台駅の東北本線上り方面が、20年前と比較した際の列車本数の増加という観点では、もっとも変化が大きい。1988年時点では平日1日あたり普通列車 が75本/日だったが、2009年現在では同普通列車が112本/日、快速列車が7本/日の計119本であり1.5倍以上に増加している。これはもちろん 仙台空港鉄道に乗り入れる40本/日の増加によるところが大きいが、福島行きの快速列車が平日3本、休日5本運転されるようになった点も大きな変化といえ よう。
 それでは、「本数が増えて良かった〜!」で済むかと言えば、それで済まないのが仙台都市圏なのである。下記の時刻表を見れば一目瞭然、運転間隔がマチマ チで非常に分かりにくい。さらに問題なのは、運転間隔が狭いのはまぁ良いとしても、逆に間隔 が極端に空くことがあるのだ。快速の運転が始まったのは評価すべきだが、そのあおりを喰って普通列車の間隔が空いてしまって いる。
 具体的には、11時36分発「白石行き」が出ると、快速「仙台空港行き」、休日は快速シティラビット「福島行き」と快速が続き、次の普通が12時ちょう どの「白石行き」で24分も空いている。同様に12時45分発「山下行き」が出ると 13時1分発快速シティラビット「福島行き」があり、次の普通列車は13時11分発「仙台空港行き」まで26分も 空く。ほぼ 30分近く普通列車が無いということは、長町、太子堂、南仙台の快速通過駅はそれだけ列車間隔が空くということで、これでは都市 鉄道としては失格と言わざるを得ない。
 実は1988年当時のダイヤでも日中の10時台、12時台にも列車間隔が空いていた時間があったが、それでも24分空くのが最大で現在の26分も普通列 車が来ない時間があるというのは、僅か2分の差とは言え退化しているといわざるを得ない。そもそも現在、日中 は1時間に7本程度の列車本数があるので、平均すれば8〜9分間隔で列車が来ることになるのだが、普通列車と快速列車のバランスが悪く(例えば11時台は 休日は快速が3本もあるのに普通列車は3本だけ、12時台は逆に普通列車だけで7本)、普通列車に限ってみると4〜26分間隔という有り様で、利用者の利 便性 を 無視したダイヤになっている。このようなイライラさせるダイヤというのが、JR東日本仙台支社クオリティなのか、同じJR東日本の地方線区である 新潟地区 は運転本数こそ少ないが、きっちり日中20分間隔になっていて利便性が高いのと好対照だ。仙石線や仙山線でも同様の問題があり、やはりJR東日本仙台支社クオリティなのかも知れない・・・。

■2009(H21)年5月現在 東北本線・常磐線・仙台空港鉄道・阿武隈急行線  <上り>
4
カシオペア35上 北斗星56上
15
02福 07空 特ス15上 18原 快 ラ29福 33空 38岩 43白 51山
5
29い
16
快ラ03福 07空 15原 快30空 43白 50空 54原
6
03郡 08空 27白 34 原 53岩
17
01福 18白 23原 29 空 34岩 43白 53原 57空
7
02郡 06空 特ス14上 19原 25白 30岩 36空 41岩 45福 53梁  58岩 
18
04福 08空 特ス16上 21梁 26原 34空 39白 44新 53岩
8
03空 08岩 12原 18 空 24 白 38山 47空 52福
19
00空 05黒 17い 28 白 34空 40福 44原 49空
9
01白 06空 11梁 25原  36空 41白 快53空
20
00白 16原 27空 34 福 49空
10
02白 09空 特ス21上 24原 35空 51白 55空
21
01白 08原 26白 33 空 39新 56松
11
快ラ04福 15原 19空 36白 快43空 快 ラ49福
22
07空 26白 41原 52 空 57大 
12
00白 04空 13原 20 空 33白 39空 45山
23
16白 32山 55
13
快ラ01福 11空 15い 24福 35空 46原 52空
24
07※※
14
06白 11原 19空 29 福 快36空 48白 53空
【平日】普通列車112本、快速7本 計119本

■1988(S63)年8月現在 東北本線・常磐線 <上り>
4
北斗星2号53上
15
07平 28白 40山 56 福
5
29平 北斗星4号49上
16
15平 29白 38原 特ひ44上 56福
6
03黒 26白 38平 北斗星6号49上
17
13原 22白 35原 45 福 51岩
7
08黒 19白 25平 29岩 特ひ41上 45福 54梁
18
03丸 13水 26白 43 山 56須
8
00岩 07原 14大 22 白 31山 45福 56白
19
05原 19白 35原 42 福 56白
9
09平 29白 42福 55 大
20
16平 27福 35山 44 白
10
03平 23白 特ひ43上 47福
21
15原 28白 46福
11
06平 28白 43福
22
09白 26原 37大
12
04平 18白 42山 48 福
23
03白 17山 34大
13
06平 19白 31矢 46 原
24
14
02大 16白 30平 50 福
【平日】普通列車75本

東 北本線・常磐線
東北本線
常磐線
阿武隈急行
仙台空港鉄道
上: 上野
黒:黒磯 矢:矢吹 須:須賀川 郡:郡山 松:松川 福:福島 白:白石 大:大河原 岩:岩沼
水:水戸 平:平 い:いわき 原:原ノ町 山:山下 新:新地
梁:梁川 丸:丸森
空:仙台空港
00仙【土曜・休日運休】 00仙【土曜・休日運転】 【金 曜運休】 ※※【金曜運転】
特ス:特急スーパーひたち 特ひ:特急ひたち 快ラ:快 速仙台シティラビット

 ここで1985(S60)年度以降の主要駅の乗車人員の推移から考察してみよう。
 上述の東北本線の乗車人員数では、槻木、船岡、大河原、白石の4駅が現在ほぼ3,000人台 の同規模で、大河原駅がやや多めではあるが、岩沼以北との差は大きい。一方の常磐線は、更に乗車 人員は少なく、仙台に最も近い亘理が、相馬や原ノ町よりも乗車人員が多いという状況だ。下記には沿線自治体の人口推移を纏めたが、東北本線沿線は増加もし くは微減程度だが、常磐線沿線は軒並み減少が続いており、仙台との結び付きの弱さがそのまま人口面のマイナスになっていると思われる。常磐線の改良・改善 で仙台へのベッドタウンとしての地位を高めることが、良いか悪いかは別として、人口減少の歯止めにはなりそうだ。

■東北本線沿線自治体の人口推移
市 区町
太白区
名取市
岩沼市
柴田町
大河原町
白石市
年 月日
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
1980 年10月1日


49,715

34,910

32,106

19,332

41,275

1985 年10月1日


50,897
2.4%
36,519
4.6%
35,416
10.3%
20,305
5.0%
42,262
2.4%
1990 年10月1日
199,890

53,732
5.6%
38,091
4.3%
37,315
5.4%
20,901
2.9%
42,030
-0.5%
1995 年10月1日
212,412
6.3%
61,993
15.4%
40,072
5.2%
38,749
3.8%
21,995
5.2%
41,852
-0.4%
2000 年10月1日
221,461
4.3%
67,216
8.4%
41,407
3.3%
39,585
2.2%
22,767
3.5%
40,793
-2.5%
2005 年10月1日
222,447
0.4%
68,662
2.2%
43,921
6.1%
39,809
0.6%
23,335
2.5%
39,492
-3.2%
2010 年10月1日
220,715
-0.8%
73,140
6.5%
44,198
0.6%
39,344
-1.2%
23,536
0.9%
37,425
-5.2%
総務省「国勢調査」より作成

■常磐線・阿武隈急行沿線自治体の人口推移
市 区町
亘理町
山元町
新地町
相馬市
南相馬市
角田市
年 月日
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増 加率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
1980 年10月1日
27,822

17,630

8,704

38,332

74,296

33,731

1985 年10月1日
29,263
5.2%
18,236
3.4%
8,876
2.0%
39,346
2.6%
77,139
3.8%
35,119
4.1%
1990 年10月1日
30,301
3.5%
18,268
0.2%
8,904
0.3%
39,134
-0.5%
77,253
0.1%
35,431
0.9%
1995 年10月1日
33,034
9.0%
18,815
3.0%
9,093
2.1%
39,449
0.8%
77,860
0.8%
35,316
-0.3%
2000 年10月1日
34,770
5.3%
18,537
-1.5%
9,017
-0.8%
38,842
-1.5%
75,246
-3.4%
34,354
-2.7%
2005 年10月1日
35,132
1.0%
17,713
-4.4%
8,584
-4.8%
38,630
-0.5%
72,837
-3.2%
33,199
-3.4%
2010 年10月1日
34,846
-0.8%
16,711
-5.7%
8,218
-4.3%
37,796
-2.2%
70,895
-2.7%
31,336
-5.6%
総務省「国勢調査」より作成


▼東北本線 下り方面 (気仙沼・古川方面を含む)
 仙台駅の東北本線の下り方面は日中ほぼ20分間隔の運転が確保されている。時刻が多少バラついてはいるものの、まぁ許せる範囲か。1988年時点では、 日中は1時間に2本の列車本数しかない上に30分間隔にもなっておらず、閑散ダイヤとしか言いようがない。そういった点では、現在20分間隔の運転を確保 しているのは、仙台都市圏の他線が等間隔ダイヤが確保されていないことと比較しても及第点をあげられるレベルかもしれない。まぁ20分間隔で及第点をあげられるのが、仙台都市圏全体のレベルの低さを象徴的に現している気 がする。
 仙台駅発の利府駅行き最終列車の時間は、1988年時点では21時54分発であったが、2009年時点では22時23分と約30分程繰り下がった。とは 言っても、白石、松島、東塩釜、愛子行きの最終列車が23時55分〜58分であるのと比べても大幅に早い。約1時間半も早いのは明らかに早過ぎるというべ きだろう。何しろ、常磐線山下駅行きの最終列車ですら23時32分なのだ。尚、阿武隈急行の角田、丸森方面に接続する最終列車が仙台駅発22時26分と利 府駅と同じレベルなのだが、利府駅の仙台駅からの営業キロが12.3kmに対し丸森駅のそ れ は41.5kmもあ る。3倍以上も距離が遠い街までと同じ時間帯に最終列車が出てし ま うというのは異常だ。利府駅行きの最終列車を松島駅行きの前、例えば23時40分頃に増発することを提案したい。

■2009(H21)年5月現在 仙台駅 東北本線 <下り>
6
00一 21利 30松 39 利 44小
16
02小 19石 30利 41 小
7
05利 15石 27利 46 小 53松
17
01小 18小 30利 42 一 51利 南三陸58気
8
01一 06利 25利 30 小 南三陸54気
18 02小 24利 30石 45 利 57一
9
00一 08利 17松 42 小
19
09利 20小 34利 40 小
10
00松 07利 24松 40 一
20
00一 12利 40小 カシオペア59札
11
00松 20松 41小
21
04一 12利 34松 55 小
12
00松 20松 45小
22
23利 36石
13
00松 22小 41一
23
20小 北斗星30札 55
14
00松 20小 44一
24
07※※
15
02松 21小 42小
普通列車66本 快速列車2本 計68本

■1988(S63)年8月現在 仙台駅 東北本線 <下り>
6
06一 24利 32松 40 利 55古
16
05一 29石 南三陸53気
7
09一 16松 26利 39 小 50松
17
03利 11一 21小 28 利 42石
8
01利 09一 18利 南三陸28気 36小 59一
18
03一 14利 26松 44 一
9
20小 43小
19
00利 11石 31小 57 一
10
05一 30松 58一
20
08利 30松 58一
11
20小 45松
21
04利 北斗星14札 29松 54利
12
05一 18小
22
11石 北斗星25札 38小
13
05一 26小
23
03小 北斗星34札 39松
14
05一 27小
24

15
06一 26小 51小
普通列車56本 快速列車2本 計58本

一:一ノ 関 利:利府 松:松島 小:小牛田 石:石越 気:気仙沼 古:古川 札:札幌
【2009 年】快速停車駅
南三陸: 仙台〜小牛田ノンストップ 以下略
【1988 年】快速停車駅
南三陸: 仙台、塩釜、松島、鹿島台、小牛田 以 下略
【金 曜運休】 ※※【金曜運転】


(2)仙石線 
 仙石線は、仙台都市圏では唯一国鉄時代から「国電ダイヤ」と呼ばれる都市型ダイヤを設定していた。むしろ地方線区としては相当早い時期から充実したダイ ヤを設定していた珍しい線だとも言える。
 具体的には、手元に1975(S50)年11月改正のダイヤが載った時刻表があるのだが、それを紐解くと仙台〜松島海岸駅は日中15〜30分間隔(とい う記述だけで具体的時刻は不明!)、仙台〜石巻駅の快速列車が1時間毎、特別快速も1日2往復設定というようなダイヤだったということが分かる。地方都市 圏の国鉄の輸送改善の転換点としては、1982(S57)年11月のダイヤ改正において「広島シティ電車」の愛称で列車の短編成化と増発が行われたのが嚆 矢であり、それ以前から仙石線では充実したダイヤが設定されていたことは特筆すべきことと思われる。
 そういった古くからの国電ダイヤの伝統は1988(S63)年時点でも改善されて続いており、日中でも1時間に快速1本、普通5本の計6本が確保されて いることが分かる。時刻はバラついているため、必ずしも分かりやすいとは言えないが、当時の仙台都市圏の他の線区では、日中は1時間に2〜4本程度の運転 本数であったことからすると、仙石線は別格の存在であったと言える。
 しかし、2009年の現在はどうであろうか。列車の総本数が1988年と比べると 僅か2本とはいえ減っているのにまず驚き。 1995年よりは2本ほど増えてるが。 そして日中、特に10〜12時台は1時間に4本程度の列車本数しか確保されていない。そのため快速の前後の普通列車の間隔が30分以上も空くのだ。実は 1988年時点でも快速列車の前後で20分程度空いてしまうという弱点があったものの、現在はそれが更に悪化しているという ダイヤなのだ。一方、朝夕のラッシュ時の列車本数は増発されており、始発は繰り上げ終発は繰り下げるなどの改善も見られるので、良く言えばメリハリのあるダイヤに なっていると言えなくもないが、これはやはり褒め過ぎだろう。10〜12時台は利用客が相対的に少ない時間帯とはいえ、普通列車の間隔が約30分も空くと いうのは、仙石線レベル の線区ならば考えられない状態ではあるまいか。
 次の問題は快速だ。現在のダイヤでは8時58分発と12時57分発から16時58分発までの計6本が、あおば通〜多賀城駅間は各駅停車の快速である。こ れは普通列車を増発せずに、快速列車に普通列車の機能を委ねた折衷案的な対応と言え1988年時点では見られなかった快速である。石巻までの所要時間が通 常の快速ならば、あおば通駅から65〜66分のところをこの多賀城駅までの各駅停車の快速は70〜75分かかる。ちなみに普通列車は85分程度かかるた め、やはり快速列車の速達性は重要だ。あおば通〜多賀城(もしくは東塩釜)駅間に普通列車を増発し、快速は全て仙台〜多賀城駅間は通過する運行に戻すべき だろう。

■2009(H21)年5月現在 あおば通駅 仙石線(平日) <下り>
5
02石 27石
15
06東 20石 27多 39 東 48東 57石
6
07東 快31石 42石 53東
16
07東 20石 30多 42 東 49多 58石
7
03東 09石 18東 26 東 32石 38東 44東 50東 58東
17
06東 14東 22石 28 東 38東 48東
8
04東 12東 19石 25 小 30東 35小 41多 47東 52小 58石
18
快03石 07東 15東 20石 26東 35東 45東 53 東
9
05小 12東 17小 23 石 29小 37多 50東 57小
19
快10石 13東 22石 30東 41東 50東 58東
10
快07石 20石 36多 49東
20
快15石 19東 35東 52石
11
快06石 20石 36東 49東
21
04東 18東 35東 50 石
12
快06石 20石 43東 57石
22
05東 26東 51石
13
06東 20石 31多 45 東 57石
23
05東 20東 37東 58
14
06東 20石 26多 38 東 47多 57石
24
09※※
普通列車91本 快速7本 (区間)快速6本 計104 本

■1995(H7)年6月現在 仙台駅 仙石線(平日) <下り>
5
21石 53石
15
快00石 08東 17石 26苦 45東
6
18東 快33石 39石 54東
16
快00石 09東 17石 26苦 30東 45東
7
01東 11石 20東 30 東 36東 43多 快49石 56東
17
快00石 06東 17石 25東 34東 34東 45東
8
04多 10東 15石 20 苦 25東 30多 35苦 40東 47多 55苦
18
快00石 06東 17石 25東 34東 45東
9
快03石 10東 17石 24苦 33多 42東 48苦
19
快00石 06東 17石 31東 45高 51苦 58石
10
快00石 04東 17石 36多 45東
20
15東 30東 55石
11
快00石 04東 17石 34多 45東
21
03苦 17東 40東 快56石
12
快00石 05東 17石 21苦 35多 45東
22
06東 30東 快45石
13
快00石 04東 17石 32多 45東
23
00高 15苦 30東 58 東
14
快00石 08東 17石 27苦 45東
普通列車87本 快速15本 計102本

■1988(S63)年8月現在 仙台駅 仙石線(平日) <下り>
5
24石 48石 57高
15
04東 16多 28東 37 多 快46石 49石
6
25東 38石 53高
16
04東 09原 16東 28 石 38東 49東
7
00東 10石 16東 30 東 39石 46東 53東
17
04石 14東 23東 33 石 42東 55東
8
00東 07多 13石 20 東 27東 36原 42東 49東 57石
18
04原 09石 17東 29 東 36原 42石 51東 
9
09東 17多 22原 30 東 37原 快46石 49東 58石
19
03東 10原 16石 28 東 40高 47原 55石
10
10東 17多 28東 快46石 49石
20
11東 27東 43石 50 原
11
00原 08東 16多 28 東 快46石 49石
21
00東 17東 35石 53 東
12
04東 09原 16多 28 東 快46石 49石
22
14高 22原 33石 49 原
13
04東 16多 28東 37 原 快46石 49石
23
05東 20原 38東
14
04東 09原 16多 28 東 快46石 49石
普通列車99本 快速7本 計106本

石:石巻  高:高城町 東:東塩釜 多:多賀城 小:小鶴新田 苦:苦竹 原:陸前原ノ町
【2009 年】快速停車駅
:あおば通、仙台、多賀城、本塩釜、東塩 釜、松島海岸、高城町、野蒜、陸前小野、矢本〜石巻間各駅停車
:あおば通〜多賀城間各駅停車、本塩釜、東塩釜、松島海岸、高 城町、野蒜、陸前小野、矢本〜石巻間各駅停車
【1995 年】快速 停車駅
6時台:仙台、多賀城、本塩釜、松島海岸、高城町、野蒜〜石巻間各駅停車
7時台:仙台〜高城町間各駅停車(但し下馬、西塩釜通過)、野蒜、陸前小野、矢本〜石巻間各駅停車
9〜17時台:仙台、多賀城、本塩釜、松島海岸、高城町、野蒜、矢本〜石巻間各駅停車
18、19時台:
仙台、多賀城、本塩釜、松島海岸、高城町、野蒜、陸 前小野、矢本〜石巻間各駅停車
21、22時台:仙台、多賀城、本塩釜〜石巻間各駅停車
【1988 年】快速停車駅
:仙台、本塩釜、松島海岸、高城町、野 蒜、陸前小野、矢本、石巻
58【金 曜運休】 09※※【金曜運転】


(3)仙山線  
 仙山線のダイヤは現在、ほぼ毎時3本の運転が確保されるようになっている。2004年10月ダイヤ改正からは国見駅と陸前落合駅にも快速列車が停車する ようになり、これらの駅と北仙台駅、愛子駅は日中でもほぼ20分間隔の列車が確保されている。8時台及び12時台の快速は仙台〜愛子駅間が各駅停車であ り、実質的には愛子までは普通列車として機能している。このため快速通過駅でも極端に列車本数が減ることは無いが、それでも20分間隔の1本が抜けるので 40分以上は空いてしまう。もちろん1988年時点と比べると、当時の快速通過駅は1時間以上運転間隔が空いていたことから改 善はされてきているのだが、 現実的な理想を言えば、普 通列車の20分間隔運転快速列車の1時間毎運転ぐ らいであろう。単線でかつ行き違い設備も限られている仙山線は、これ以上の増発が 難しくなっているのかもしれないが、何とかしてほしいところだ。

■2009(H21)年5月現在 仙台駅 仙山線 <下り>
6
10山 37作
16
10愛 28愛  44山
7
07山 22愛  39愛 58 愛
17
12愛 30愛 快50山
8
15山 32愛 48山
18
08作 27愛  47山
9
03愛 18愛  37山
19
17愛 37山
10
05愛 34愛 快50山
20
08愛 快26山 44愛
11
17愛 52山
21
03山 31愛
12
11愛 29愛 45山
22
01愛 16山  51愛
13
05愛 25愛 快46山
23
36愛 58
14
04愛 24愛  44山
24
07※※
15
04愛 24愛 快45山
普通列車41本 快速5本 
(区間)快速3本  計49本

■1988(S63)年8月現在 仙台駅 仙山線 <下り>

6
13山 36愛
16
快27上 41愛
7
15山 44愛
17
06愛 22作 特快43山
8
快11山 32作 48愛
18
05山 39愛  55愛
9
15山
19
19上 53愛
10
05愛 快29山 48愛
20
快12山 30愛
11
02山 30作
21
12愛 31山
12
00愛 快31山
22
19愛
13
08山 52愛
23
03愛 35愛
14
24愛 快42山
24

15
08愛 34山 58愛 普通列車31本 快速6本 
(区間)快速1本 特別快速1本 計39本
山:山形  作:作並 愛:愛子 上:上ノ山
【2009 年】快速停車駅
:仙台、北仙台、国見、陸前落合、愛子、 作並、面白山高原、山寺、羽前千歳、北山形、山形
:仙台〜愛子間は各駅停車、愛子〜山形は快速停車駅と同じ
【1988 年】快速停車駅
:仙台、北仙台、愛子、作並、山寺、北山 形、山形
:仙台 〜熊ヶ根間は各駅停車、作並、山寺、北山形、山形
特別快速:仙台〜山形間ノンストップ
【金 曜運休】 ※※【金曜運転】


D東北本線の改良を考える    

(1)利府駅の研究      △
 
東北本線の利府支線は1962(昭和37)年に東北本線が海岸回りの現在線に切り替えることになり利府〜品井沼間が廃止され て以降、盲腸線となっている が、1980年代ぐらいから利府町が仙台のベッドタウン化が本格的に始まり急速に人口が増加、それに伴い利府支線の重要性は増してきている。
 しかし単線の利府支線の列車本数は、増加しつつあるとはいってもまだまだ少なく、自家用車等で岩切駅まで行きそこから東北本線に乗り換える利用者も多い と聞く。そのような利府駅の問題を新聞記事等を参考に考察してみたい。

利 府駅 2009.7
■ 利府町の人口の推移
年 月日
  人口 
増 加率
1980 年10月1日
11,201

1985 年10月1日
12,031
7.4%
1990 年10月1日
16,321
35.7%
1995 年10月1日
25,135
54.0%
2000 年10月1日
29,848
18.8%
2005 年10月1日
32,257
8.1%
2010 年10月1日 
34,000
5.4%
総務省「国勢調査」より作成
 利府町の人口は1990年代に驚異的な増加率を示している。さすがに2000年代以降は徐々に落ち着いてきているが、1990年から2005年の15年 間で町の人口が 約2倍に増加したことが分かる。
 2000年4月には当時、ジャスコとして東北最大級のイオン利府ショッピングセンターが開店、商業的地位を一気に高めたほか、2001年のみやぎ国体、 2002年のワールドカップ日韓大会では、町内にある宮城スタジアムが会場になるため周辺道路などのインフラ整備が進んだ。
 しかし、この宮城スタジアムが最寄の利府駅からは徒歩で1時間弱か かるという信じられないアクセスで、評判が極めて悪い。そのためワールドカップ以後は約5万人を収容するスタジアムを満員にするようなイベントは殆ど開催 されない。2万人程度のJリーグの試合ですら、周辺道路が大渋滞し観客が試合に遅れるような問題が発生しているのである。隣接する総合体育館がコンサート 等で頻繁に利用されているのだが、こちらは1万人以下の収容人数で、バスや自家用車のアクセスで何とかなっているのと好対照だ。建設する前にこういったア クセス面を考慮しなかったはずは無いと思うのだが、最寄駅を考慮せずにこのような数万人規模の施設を建設してしまうところに、宮城県当局の悪い意味での田舎者的発想と、仙台市内ではなく利府町に立地させた点で仙台市との確執までも垣間見れるが、いずれにせよ利用者不在の「日本一の欠陥 不要スタジアム」の汚名は免れまい。
 一方、仙台市泉区の泉中央には逆にサッカー関係者や観客から高い評価を得ている仙台市が所有する仙台スタジアム(ユアテックスタジアム仙台)がある。収 容人員が2万人弱で宮城スタジアムの半分以下だが、サッカー専用のためピッチ上の選手と観客の距離が近く、声援が反響するような設計になっていることから 非常に盛り上がり、泉中央駅から徒歩数分という抜群のアクセスもあって、日 本有数のスタジアムと言われている。このように仙台都市圏には「日本一ショボいスタジアム」(と勝手に命名)と「日本一素晴ら しいスタジアム」(これも勝手に命名)の両方があるというのは、極めて皮肉な状態と言わざるを得ない・・・。先にできたのが仙台スタジアムなので、それを 踏まえた競技場を宮城県当局は造れなかったのか、本当に信じられない思いだ。
 ついつい熱くなってしまい、利府町とは関係ない話に及んでしまったが、この宮城スタジアムは、立地のさせ方によっては利府支線の 更なる(大幅な?)改良・改善のきっかけになり得たと思うだけに余計にとても悔しいのだ。

■利府駅及び岩切駅の1日あたり乗車人員数及び増加率の推移

 利府駅
 岩切駅
合計
年度
乗 車人員
対 前年度
増加率
乗 車人員
対 前年度
増加率
乗 車人員
対 前年度
増加率
2000 年度
2,429

3,253

  5,682

2001 年度
2,443
0.5%
3,214
-1.2%
5,657
-0.4%
2002 年度
2,624
7.4%
3,277
2.0%
5,901
4.3%
2003 年度
2,616
-0.3%
3,361
2.3%
5,977
1.3%
2004 年度
2,649
1.3%
3,446
2.5%
6,095
2.0%
2005 年度
2,703
2.0%
3,602
4.5%
6,305
3.4%
2006 年度
2,616
-3.2%
3,811
5.8%
6,427
1.9%
2007 年度
2,582
-1.3%
4,035
5.9%
6,617
3.0%
2008 年度
2,596
0.5%
4,094
1.5%
6,690
1.1%
2009 年度
2,579
-0.7%
4,119
0.6%
6,698
0.1%
2010 年度 2,563
-0.6%
3,984
-3.2%
6,547
-2.3%
2011 年度
2,573
0.3%
4,059
1.9%
6,632
1.3%
2012 年度
2,700
4.9%
4,260
5.0%
6,960
4.9%

 利府駅の乗車人員は、もう少し前からのデータがあればもっと良かったのだが、2005年度をピークに頭打ちになり微減傾向を示すようになってしまったこ とが分かる。 一方、岩切駅は順調に乗車人員を増やしており、特に利府駅が微減傾向になった2006年度、2007年度の増加率が6%近くにまで上昇している。岩切駅周 辺の土地区 画整理事業の進捗による周辺人口の増加もあるが、この区画整理によって岩切駅の周辺道路が整備され利府町内からのアクセスが更に便利になったことで、利 府駅の利用者が岩切駅にシフトしていることも考えられる。利府町の人口増加の状況を踏まえても、利府駅の乗車人員が減少傾向にあるのは不可解であ り、潜在的な鉄道利用者も含めて取り込めていないと思われる。Cの(1)の中でも述べたが、非常に早い終電など 列車本数の少なさが起因の問題が利府駅の乗車 人員の伸び悩みから微減傾向へと陥っている原因であろう。利府駅の利便性向上によってまだまだ鉄道利用者が伸びる可能性があると言える。

■守ろう「地域の足」 <16> 第3部 仙台との距離 1 増便要望  利府
不便な通勤電車 朝の混雑時、本数少なく  
(2000年4月1日付 『河北新報』20面)

始発駅でも座れず

 仙台市のベッドタウンとして人口が急増する利府町。町中心部にあるJR東北線(利府線)の利府駅は、朝のラッシュ時間帯になると、仙台方面への通勤・通 学の住民でホームはあふれんばかりになる。利府駅は岩切駅(仙台市宮城野区)で分岐する東北線の支線の発着点だ。
 利府駅から仙台市中心部の職場に通う蜂谷勝一さん(52)=同町赤沼=は「渋滞がひどいマイカーより、電車は時間も正確で快適だ」としながらも、「年々 混雑がひどくなって、始発駅なのに座れないこともある。本数が少ないので、少しでも遅れると出社時間に間に合う便がなくなってしまう。せめてもう1本でも 列車があれば」とこぼす。
 仙台都市圏では昨年11月、大規模交通実験が行われた。利府駅で実施されたマイカーと電車を乗り継ぐパーク・アンド・ライド(P&R)では、参 加者の半数以上から「列車の本数が少なく利用しにくい」と不満の声が出た。

1時間に2本あるだけ
 朝のラッシュ時(午前7、8時台)に、利府駅から仙台方面へ向かう電車は1時間に2本。同じくP&R実験が行われたJR仙石線多賀城、東北線名 取の両駅ではほぼ5−10分間隔で電車が走っている。利府駅でP&Rに参加した住民は「通勤電車と呼ぶには程遠い」と話す。
 住宅団地の開発が進む利府町、10年前には人口が約1万7千人だったが、まもなく3万人を超える見込み。大郷町など周辺住民の利用もあり、利府駅の利用 客は今後も増えるとみられている。
 町も長年にわたってJR側に増便の要望を続けてきたが、利府−岩切間が単線であることや、岩切駅で合流する東北線の本線が過密ダイヤとなっていることも あり、実現のめどは立っていない。

まず駅前の活性化
 利府町の千葉幸雄助役は「町としてできることから手を打たなければ」と語り、町内各地から利府駅までのアクセス強化を進める。団地と駅を結ぶバス路線を 宮城交通に委託して増設し、町民バスももう1台増やす予定だ。
 駅利用客対象のアンケートを実施して町民ニーズの把握に乗り出したほか、ホームの拡張や屋根の設置などは、町の財政負担も含めてJR側に要望を強化して いる。
 昨年12月には、利府駅前の地権者らで組織する「利府駅前活性化推進協議会」が結成された。大型店の進出が続く県道仙台・松島線(利府街道)沿いだけで なく、駅前の町中心部に賑わいをつくり出そうと官民挙げて動き始めた。ショッピングセンターや公共施設などの入った複合ビルの建設なども視野に入れてい る。
 千葉助役は「駅前に人が集まることで、利府駅自体の活性化を図りたい」としており、こうした努力が増便の動きにつながっていくことを期待している。

  
■JR 利府発の列車増便 来月2日から 通勤時の混雑緩和へ
(2000年11月4日付『河北新報』18面)

 利府駅 の人口増加に伴って地元から列車増発の要望が出ていたJR東北線岩切駅(仙台市宮城野区)−利府駅(利府町)間について、12月2日から朝の通勤時間帯に 1往復増発されることが3日までに、JR東日本のダイヤ改正で決まった。1日約2,300人の利用者を抱える利府駅の混雑緩和につながると期待されてい る。
 増発されるのは仙台駅に直接乗り入れる普通列車。4両編成で下りは仙台発午前7時8分、利府着7時23分。利府で折り返して上り列車となる。上りは利府 発7時29分、仙台着7時46分。
 今回の決定について、JR東日本仙台支社は「利府駅の利用客が増加している実態などを踏まえて、利便性向上のために増発を決めた」(総務部)と説明して いる。
 利府町は仙台市への通勤圏に位置していることから、昭和50年代以降に大規模な住宅団地開発が進んで人口が急増。平成4年に人口2万人、今年6月には3 万人を突破した。
 利府駅の利用者も増加が続いたが、東北線の支線(利府線)に当たる岩切−利府間は単線であることなどから、現在はラッシュ時でも1時間に2本の運行体制 となっている。このため町は、JR側に列車増発を要望していた。
 鈴木勝雄利府町長は「町発展のために鉄道は不可欠だ。増発は町民の悲願であり、これまでの要望活動が実ってうれしい。町として今後、利用客の確保に積極 的に取り組みたい」と話している。

  
■JR東北線 利府駅 ホーム増設へ W杯サッカー観客に対応
(2002年1月22日付『河北新報』24面)

 JR東 日本仙台支社は21日、6月に開かれるサッカーのワールドカップ(W杯)に合わせ、観客輸送力の向上を図るため、宮城大会の会場となる宮城スタジアム(宮 城県利府町)の最寄り駅、JR東北線利府駅に新しいホームを増設する、と発表した。
 同駅構内には現在、単線に対し、ホームが1本しかないが、対面式でもう1本建設。レールを分岐させ、新ホームにも列車を引き込むことで仙台−利府駅間の 直通列車が可能になる。
 新しいホームは延長約125メートル、幅3−4メートルで、既存ホームに相対する形になる。両ホームは、線路の終点付近で平面通路で結ばれる。工事は3 月に開始。使用開始は6月上旬の予定。費用は9千万円。
 新設ホームはW杯以降も、宮城総合運動公園で行われるコンサートなど、大規模イベントの際に運行する臨時列車に対応。現行では、仙台−利府駅間の直通列 車は1時間に2本程度だが、今後は4本程度まで増やすことができる。定期列車での活用は、沿線住民の利用状況を見て検討する。
 宮城県ワールドカップサッカー推進局が2000年度にまとめた基本計画では、宮城大会当日の利府駅利用者を6千人以内と想定。同局は「計画は当時の駅設 備に基づく算定だったため、ホームの新設で、さらに多くの鉄道輸送を見込める」と歓迎している。
 利府駅ではホーム新設工事に合わせ、既存ホーム上部の屋根も増築する。現在は約10メートルしかないが、車両数で4両分にあたる約80メートルに延長。 新しいホームには約20メートルの屋根を確保する。工事費は約3千万円。
 利府町も、駅前広場と駅南東の町営駐車場を結ぶ延長約35メートルの自由通路の新設を予定している。駅周辺のシャトルバスの運行経路と待機場を整備し、 W杯の大量輸送に備える。


■パーク&ライド 利府駅でも推進
(2002年2月23日付『河北新 報』23面)

 利府町 は新年度、JR利府駅に隣接する町営駐車場の利用料金を改定し、通勤客に乗用車と列車を乗り継いでもらう「パーク・アンド・ライド」を推進する。塩釜市や 大郷町の利用者も視野に入れ、利府駅の利便性向上を目指す。
 町は4月から利便性を考慮して、駅東駐車場の料金を時間制払いから1回払いに切り替える。料金は1回当たり200−300円程度にする見通し。
 6月までに実施されるJR東日本の利府駅の輸送力増強に合わせ、町はJRから引き込み線跡地の一部約2千平方メートルを借り受け、バスプールにも転用で きる町営駐車場を駅北側に整備する。駅東と合わせた収容台数は計142となる。




E仙石線の改良 を考える    

地下化された宮城野原駅 2011.10

高架化された本塩釜駅 2012.3

(1)仙石線の改良・改善の歴史
 仙石線は、JR在来線では最北の直流電化路線で、古くは地元で「国電」と呼ばれていた通り、仙台都市圏では珍しく都市鉄道として古くから機能していた。 仙石線は元をたどれば宮城電気鉄道という私鉄で、戦時買収された多数の私鉄のうちの1社である。宮城電気鉄道は、積極的な経営で知られ、仙台駅は日本で最 初の地 下駅として建設されたり、女川や仙台西部までの延長線計画を持っていたほか、輸送需要が増大した時に備え複線用地を当初から取得しておく(仙台−西塩釜、 石巻 −赤井)など先見性を持った経営を行っていた。歴史に「もしも」は禁物ではあることは百も承知ながら、それでもこの宮城電気鉄道が国鉄に買収されず民鉄の ままで現在に至って いたならば・・・と夢想せずにはいられない。恐らく仙台都市圏の発展と共に順調な経営を行うことができたはずで、JRと仙台〜塩釜・松島・石巻間などで競 争原理が働き、仙台都市圏全体の交通の健全な発展へと繋 がったような気がする。さらには仙台の地元資本の育成とい う観点からも相当なインパクトがあったと 思 われる。逆に悪い想像をすれば、私鉄のままでも、経営判断を誤ってインフラの更新を怠った結果、モータリゼーションの進行や東北本線との競争で輸送量が落 ち込み、仙台駅付近の連続立体交差化も行えず仙台駅東口の再開発が遅れ、宮城電気鉄道も弱小私鉄として息も絶え絶え・・・という可能性だってあるわけで、 JR東日本という巨大資本の元にあることのメリットもあるだろうし、この現状を変えることが不可能である以上、こういった夢想はこれ以上は止めておこう。
 10年くらい前までのJTB時刻表において仙石線は、全列車を記載せず早朝深夜以外は発駅の発時刻のみしか分からない表記をしていた。平日ダイヤと休日 ダイヤに分かれていることも特徴的で、いずれも東 京・大阪以外の地方線区では見られない異色の佇まいで、仙石線が都市型ダイヤなんだという印象を強烈にアピールしているかのようであった。私の記憶では、 2000年3月の仙石線地下化完成に伴うダイヤ改正からそのような記載方法を止めて全列車を載せる形式に変更したような気がするが、今では平日ダイヤと休 日ダイヤの区別もしなくなりごく普通のページという印象し か残らない。まぁ、以前のような発駅の発時刻だけの表記というのは、時刻を確かめるには非常に分かりにくいので、今のほうが望ましいのは言うまでもないの だ が、何となく仙石線のアイデンティティの1つが失われたような気がする。実は、その当時の方が現在よりも優れたダイヤだった側面もあったりするのだが、そ の点 はCの(2)項のダイヤの研究で詳細に述べている。
 仙石線はインフラ面の整備においては、仙台都市圏の中ではいち早く都市鉄道として≠フ改良が進んでいたと言える。東北本線は国土幹線としての改良が所 謂「ヨンサントオ」の1968(S43)年10月ダイヤ改正までに進められ全線複線電化が完成したが、これは仙台都市圏の都市鉄道としての改良とは次元が 異なる。一方、仙石線はと言えば、そのヨンサントオの前後から複線化などの都市鉄道化への投資が始まっている。そして最大のインフラ整備は、1985年に 着 工し2000年に完成した仙台地区の連続立体交差事業であろう。この工事によって仙台−陸前原ノ町駅間が地下化されるとともに、あおば通駅までの延伸もさ れている。さらに現在は、多賀城駅周辺の連続立体交差事業(高架化)が本格的に始まっており、都市鉄道としての機能強化は未だ終わってはいない。
 さて、この項ではインフラ面の改良の歴史をまず振り返りながら纏めつつ、Cの(2)項でも指摘したダイ ヤ面の改良にも繰り返し言及し仙石線の課題を 探ること にしたい。

■国鉄時代(昭和40年代)から現在までの仙石線の改良・改善策
年 月日
内    容
1966 (S41).01.20
苦竹駅が高架化
1968 (S43).02.23
福田町〜多賀城駅間が複線化
1968 (S43).03.19
陸前原ノ町〜福田町間が複線化
1969 (S44).09.26
多賀城〜西塩釜駅間が複線化
1979 (S54).10.01
103系電車が投入
1981 (S56).04.01
陸前高砂〜多賀城駅間に中野栄駅が開業
1981 (S56).11.01
西塩釜〜東塩釜駅間が高架・複線化
1983 (S58).09.20
CTC化
1983 (S58).10.02
休日ダイヤ実施、線内の最高速度が85km/hが95km/hに引き上 げられる
1985 (S60).10.24
仙台地区の連続立体交差事業着工
1987 (S62).03.31
矢本〜陸前赤井駅間に東矢本駅が開業
1988 (S63).03.13
ダ イヤ改正
▽快速に「うみかぜ」の愛称が付く
▽陸前大塚駅の交換設備使用開始
1990 (H02).07.21
仙石線の石巻駅駅舎を石巻線の駅舎と統合
1991 (H03).03.15
陸前原ノ町電車区が閉鎖され宮城野電車区に移転
1991 (H03).03.16
ダ イヤ改正
▽データイムの快速列車を増強、朝夕の時間帯に拡大
▽快速列車は1日下り9本、上り7本から1日13往復に増強
▽多賀城駅が快速停車駅に
▽陸前小野駅はデータイムの時間帯は快速通過駅に
2000 (H12).03.11
仙台〜陸前原ノ町駅間が連続立体交差事業により地下化、仙台〜あおば通 駅間が延伸開業
2000 (H12).06.25
野蒜〜陸前小野駅間の鳴瀬川橋梁の架け替え工事完成
2002 (H14).11.05
205系電車の投入開始
2003 (H15).09.07
苦竹駅の改装が完成
2004 (H16).03.13
苦竹〜福田町駅間に小鶴新田駅が開業
2004 (H16).10.16
ダ イヤ改正
▽快速の「うみかぜ」の愛称廃止
▽平日ダイヤと土曜休日ダイヤを一本化
2005(H17).03.01
西塩釜駅が利用客減少のため無人化
2007(H19).03.18
ダ イヤ改正
▽多賀城駅の高架化工事の本格化に伴い、多賀城駅折り返しの一部列車を東塩釜駅まで延長
2007 (H19).11.01
中野栄駅の駅前広場が供用開始
2008 (H20).04.01
仙台市営バスが陸前高砂駅に新設された駅前広場に乗り入れ開始
2009 (H21).11.29
多賀城駅の上り線の高架化完成
2012 (H24).03.03
被災した陸前山下駅の新駅舎が使用開始
2012 (H24).04.08
多賀城駅の下り線の高架化完成、但し暫定的に完成時の中線ホームを使用


(2)仙台〜石巻間の輸送について    
 東北地方の中心都市・仙台市と人口では県下第2位の石巻市。しかし石巻市は東北地方の主要交通手段である東北本線、東北新幹線、東北自動車道、国道4号 線のいずれも経由していない。県内の人口規模で第2位となる都市が、当該地方の主要交通ルートのいずれからも外れているというケースは珍しいと言える。そ れはともかく、石巻と仙台との行き来は、伝統的に仙石線と国道45号線が担ってきた。近年では三陸道の整備が進み、高速バスもこれに加わった。しかし 2011年3月11日に発生した東日本大震災による被災で、仙石線は区間運休が続き、仙台〜石巻間を直通する鉄道旅客輸送は東北本線・石巻線経由の直通快 速2往復(平日のみ)だけとなっている。2015年に予定されている仙石線の線路移設による復興と東北本線の乗り入れ新設により、仙台〜石巻間の快速を中 心とした鉄道輸送は新たな局面を迎えることが予想される。しかし@の項で見たように石巻駅の乗車人員 数は年々減少傾向にあり、横這い又は増加傾向にある仙石線の仙台寄りの各駅とは対照的な動向にある。現在、高速バスやマイカーに移行してしまった利用客を 仙石線利用に戻すことができるのか、仙台〜石巻間の輸送を俯瞰してみたい。

 まずは、人口面の推移から仙石線沿線の動向を考察してみる。宮城野区、多賀城市は順調に増加している。特に宮城野区は増加率が上昇しており、新田東の土 地区画整理事業等によって人口増が続いているよ うだ。一方、塩竈市は近年急速に人口を減らしていて2000年には多賀城市とほぼ同じ人口になり、2005年の国勢調査時には6万人の大台を割っており、 現在は多賀城市とは5千人の差がつくほどまで減っている。本塩釜駅の乗車人員も年々減少しているが、人口減の影響が強く影響しているのかもしれない。

■仙石線沿線自治体の人口推移
市 区 町
宮城野区
多賀城市
塩竈市
七ヶ浜町
松島町
東松島市
石巻市
年 月 日
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
1980 年10月1日


 50,785

 61,040

 16,393

17,246

 36,865

 186,094

1985 年10月1日


54,436
7.2%
61,825
1.3%
18,106
10.4%
17,568
1.9%
39,280
6.6%
186,587
0.3%
1990 年10月1日
 172,718

58,456
7.4%
62,025
0.3%
19,523
7.8%
17,431
-0.8%
40,424
2.9%
182,911
-2.0%
1995 年10月1日
176,827
2.4%
60,625
3.7%
63,566
2.5%
20,668
5.9%
17,344
-0.5%
42,778
5.8%
178,923
-2.2%
2000 年10月1日
178,780
1.1%
61,457
1.4%
61,547
-3.2%
21,131
2.2%
17,059
-1.6%
43,180
0.9%
174,778
-2.3%
2005 年10月1日
182,678
2.2%
62,745
2.1%
59,357
-3.6%
21,068
-0.3%
16,193
-5.1%
43,235
0.1%
167,324
-4.3%
2010 年10月1日
190,485
4.3%
62,979
0.4%
56,490
-4.8%
20,419
-3.1%
15,089
-6.8%
42,908
-0.8%
160,704
-4.0%
(総務省「国勢調査」より作成)

 石巻市の人口減少も深刻だ。石巻のベッドタウン化が進む東松島市に流出している要因も大きいようだが、石巻都市圏全体で見ても減少傾向が続いてい る。石巻駅の乗車人員は、1990年度時点と比較すると2010年度では半減していて、人口減少以上に著しく減っている。
 仙石線のあおば通〜 石巻駅 間の快速列車が不便になったとの指摘が新聞記事でされており、快速列車の分析から始めてみよう。

■守ろう「地域の足」<21> 第3部 仙台との距離 6完
快速電車減少 石巻 20時以降は廃止 ダイヤ改正で不便さ増す
(2000年4月6日付『河北新報』20面)

「7分差」死活問題

 「今回のダイヤ改正は大学の死活にかかわる大問題だ」。石巻専修大(石巻市)の佐藤清生事務局長は険しい表情を浮かべる。仙台から通う学生が朝、最も多 く利用するJR仙石線の仙台〜石巻駅は1時間10分だったが、3月11日の改正後は1時間17分となり、7分余計にかかるようになったからだ。
 仙台市を中心に受験生を募る石巻専修大にとって、「7分」は無視できない時間だ。少子化のため学生が減り、大学は「大競争時代」を迎えている。仙台との 時間距離が1分でも短い方が、高校側に「入学後も自宅から通えます」とアピールしやすい。
 実際に、学生2,500人のうち6分の1近い400人が仙台から通学しており、現役学生に対する影響も少なくないという。

18本減り上下26本
 一部地下化に伴う3月のダイヤ改正では、仙石線で平日に上下44本走っていた快速 列車が26本に減った。その上、午後8時以降の下り快速は すべて廃止になるなど、石巻〜仙台はさらに遠くなってしまった。
 仙石線を利用して仙台市青葉区の会社に通う石巻市の佐竹弘子さん(34)。3月下旬は年度末の業務のため残業が多く、午後8時以降にあおば通駅(仙台市 青葉区)を出る列車で帰ることが多かった。1時間前後で石巻に到着する快速列車は午後7時2分発が最後で、あとは1時間20分かかる普通列車しかなくなっ た。
 以前は夕方以降、1時間に1本の割合で午後10時台まで快速列車があった。残業を終えて少しでも早く帰宅したい会社員にとって、快速列車の減便は痛手 だ。
 横浜、大阪で電車通勤を経験した佐竹さんは言う。「宮城では仙台とその他の地域を結ぶJRのアクセスが悪い。ほかの政令市ならば石巻ま での距離なら通勤圏なのに、この列車事情では通うのに一苦労です」

町民はあきらめ顔
 隣接の女川町。仙石線の延長線上に位置しながら、町民が仙台に行く場合、石巻線で石巻駅まで行き、仙石線に乗り換えなければならない。町は10年以上前 から仙石線の女川への延長を要望しているが、実現するどころか、仙台方面への接続を無視したかのようなダイヤ改正で乗り継ぎはさらに不便に なった。
 ある町民は「JRは民間会社だから、費用対効果が見込めない区間は改善してくれないだろう。仙石線にはトイレもないし、積極的に利用しようという気持ち になれない」とあきらめ顔。
 菅原康平石巻市長は、こうした声があることについて、「利用者の声をまとめて、夏ごろまでにあらためてJRに申し入れたい」と強調する。
 JR東日本仙台支社広報室は「石巻線は小牛田駅での新庄市方面への乗り継ぎ改善のため、昨年改正したばかり。仙石線についても、早急なダイヤ改正は難し い。トイレについては本年度以降、検討する」と話している。
赤字は 筆者

 上記記事で赤字で目立つようにしたが、2000年3月の仙石線仙台地区の地下化に伴うダイヤ改正で快速の列車本数が少なくなり、午後8時以降の下り快速 は全て廃止になって、不便になったという趣旨の記事だ。
 2009年現在はどうかと言うと、午後8時台の快速だけは復活しているものの、それ以降の時間の快速はやはり無いままで快速の列車本数も変わっていな い。(Cの(2)項を 参照)
 また、ほかの政令市ならば石巻までの距離なら通勤圏との指摘されているが、実際に他の政令市(東京を含む)の快速の現況を、仙台〜石巻間に相当する 50km圏で比 較してみたのが下記の表である。

■仙台及び東京・名古屋・大阪及び札幌・広島・福岡のJRの50km圏の快速列車の 状況
発 駅
着 駅(線名)
営 業`
列 車名
最 速所要
時間

表 定速度
運 転頻度
備 考
仙 台
石 巻(仙石線)
50.2km
快速
63分
47.8km/h
日中毎時1往復

仙 台
石 巻(仙石線)
50.2km
特別快 速 うみかぜ
44分
68.5km/h
休日1 往復
ノンス トップ、2000年3月 ダイヤ改正で廃止
仙台
白石(東 北本線)
45.0km
快速 仙台シティラビット
38分
71.1km/h
平日3往復、土日5往復
土日のみ運転する列車が停車駅が少なく速い
仙台
山寺(仙 山線)
48.7km
快速
51分
57.3km/h
日中毎時1往復

仙台
涌谷(石 巻線)
49.4km
快速 南三陸
40分
74.1km/h
1日2往復
ディーゼルカー
東京
藤沢(東 海道本線)
51.1km
快速 アクティー
44分
69.7km/h
日中毎時1往復

名古屋
蒲郡(東 海道本線)
55.4km
新快速
38分
87.5km/h
日中30分間隔

名古屋
瑞浪(中 央本線)
50.1km
快速
47分
64.0km/h
日中毎時2往復
セントラルライナー(毎時1往復)は所要39分
名古屋
加佐登 (関西本線)
50.9km
快速
51分
59.9km/h
日中毎時1往復

大阪
明石(山 陽本線)
52.5km
新快速
37分
85.1km/h
日中15分間隔

札幌
新千歳空 港(千歳線)
46.6km
快速 エアポート
36分
77.7km/h
日中15分間隔

札幌
余市(函 館本線)
53.7km
快速 ニセコライナー
63分
51.1km/h
1日1往復
ディーゼルカー
広島
河内(山 陽本線) 49.6km
快速 シティライナー
47分
63.3km/h
主に朝夕毎時1〜2本運転

広島
安浦(呉 線)
49.2km
快速 通勤ライナー
58分
50.9km/h
朝夕に運転
日中は広で安芸路ライナーに乗り換え
広島
甲立(芸 備線)
52.6km
快速 みよしライナー
65分
48.6km/h
2時間に1本
ディーゼルカー
広島
南岩国 (山陽本線)
46.0km
快速 シティライナー
47分
58.7km/h
主に朝夕毎時1〜2本運転

博多
黒崎(鹿 児島本線)
53.3km
快速
49分
65.3km/h
日中毎時2往復
日中は準快速が毎時1往復
博多
筑前植木 (筑豊本線)
51.0km
快速
60分
51.0km/h
日中毎時2往復

博多
唐津(筑 肥線)
52.4km
快速
69分
45.6km/h
1日4往復

博多
羽犬塚 (鹿児島本線)
47.9km
準快速
52分
55.3km/h
日中毎時2往復

2009年6月時刻表から筆者作成

 表定速度を見ると、赤抜がベスト3だがいずれも特急並みの 俊足を誇る。頻発しているのも特徴だ。一方、仙石線快速を含む青抜が 鈍足のワースト3になる。芸備線快速は旧型ディーゼルカーが山間部を走るのでしょうがないとしても、筑肥線の快速がこれほど遅いのは意外であった。地下鉄 線内が各駅停車なのが遅い理由かもしれない。それにしても、仙石線はもう少し表定速度をあげられないものか。例えば60km/hになれば、所要時間は50 分となる。実際、2000年3月まで設定されていた仙台〜石巻のノンストップ特別快速は70km/h近い表定速度で44分の所要時間であり、60km/h 程度の表定速度というのはそれほど無理はないのではないか。そうなれば他の政令市と、まぁ同レベルと言えるだろう。
 ところで、この表を作っていて気付いたのだが、札幌は50km圏域には快速網の広 がりが乏しいという点だ。札幌からの快速列車網は、空港アクセス以外では小樽(札幌駅からの営業キロ33.8km)、岩見沢(同 40.6km)、千歳(同41.0km)、が最終目的地になるが、いずれも30〜40km圏に位置し、50km圏まで行く快速を探すと千歳空港と余市ぐら いしか 無いのだ。「札仙広福」で比較すると、札幌以外の都市ではいずれも50km圏を超えて快速列車が運転されている。日常的な移動手段として使われる快速列車 の運転範囲は都市圏の広がりと重なると考えられ、そういった観点で言うと札幌が相 対的に都市圏の広がりに乏しいということも言えそうだ。


(3)連続立体交差事業   
 仙石線は、あおば通駅〜苦竹駅間、多賀城駅周辺、西塩釜駅〜東塩釜駅間の3カ所で連続立体交差事業が実施され、地下化又は高架化が実現している。それ以 外にも苦竹駅は単独立体交差で高架駅になり、東日本大震災で不通になっている区間のうち陸前大塚駅〜陸前小野駅は線路が移設され途中の東名駅と野蒜駅は高 架駅になる。
 3カ所の連続立体交差事業の施工延長の合計は約8.5kmとなり、仙石線の営業キロ50.2kmの約17%が連続立体交差事業によって地下化又は高架化 されたことになる。


あおば通駅 2013.9

陸前原ノ町駅 2011.10

■仙石線仙台地区連続立体交差事業
事 業区間
仙台駅〜 苦竹駅間
施 工延長
3,933m (地下式:3,530.5m 地表式(掘割式):402.5m)
総 事業費
654億 円
除 却踏切数
14箇所
交 差道路
都市計画 道路 8路線(将来4路線含む)
その他の道路 10路線
事 業期間
昭和56 年度〜平成12年度
関 連事業
仙台駅東 第一土地区画整理事業  約55.8ha
仙台駅東第二土地区画整理事業  約45.3ha
仙台駅東西地下自由通路整備事業 L=392m W=5〜15m
踏 切すいすい大作戦 これまでの成果より)



■仙石線地下線仙台駅・あおば通駅 乗降者 旧駅より12%増 JR調べ
中心部乗り入れ効果鮮明
(2000年4月28日付『河北新報』23面)

 JR東日本仙台支社は26日、3月11日に開業した仙石線地下線の仙台駅と、あおば通駅で4月17日に実施した乗降調査結果を発表した。両駅合計の乗降 者数は2万5560人で、昨年6月時点で調査した元の仙石線仙台駅乗降者数に比べて2800人(12%)増加した。高校生が試験休みと言う特殊要因で通常 期より少なかった3月13日の調査と今回を比べると、7100人増えた。同支社は「仙台市中心部に直接出られる、あおば通駅の設置効果で新規利用者が増え た」と分析している。
 調査したのは平日の4月17日、通勤通学時間帯に当たる午前6時半〜午前9時半の3時間。
 駅別の乗降者数は仙台駅が1万6050人、あおば通駅9510人で、仙台駅63対あおば通駅37の割合。3月調査の57対43に比べ、仙台駅の比率が高 まった。うち降車人数の比較では、3月調査では47対53とあおば通駅の方が多かったのだが、今回は55対45と仙台駅が逆転した。
 仙台駅の比重アップは、料金が安くなるなどの理由で手前の仙台駅で下車し、東西地下自由通路を徒歩利用する人が多いためではないかという。
 仙台市地下鉄との乗換駅であるあおば通駅の乗車人数のうち、地下鉄へ乗り継いだのは19%の1360人。乗車人数のうち、地下鉄から仙石線へ乗り継いだ のは67%の1610人だった。


■ 多賀城地区連続立体交差事業
事 業主体
宮城県
施 工延長 1,780m
総 事業費
約132 億円
除 却踏切数 4箇所
事 業期間
平成11 年度〜平成23年度
踏 切すいすい大作戦 これまでの成果より)




多賀城駅 3番線(下り線)は工事中 2013.9

■仙石線塩釜地区連続立体交差事業
事業主体
宮城県
事業内容
◎西塩釜 〜東塩釜間の高架複線化
◎西塩釜・本塩釜・東塩釜各駅舎新築
施工延長
総延長 2,770m(高架橋延長1,627m 上工部延長1,143m)
総事業費
約100 億円
負担区分(都市計画業者:約44.5憶円 鉄道事業者:約55.5憶円)
交差道路
計19路 線(都市計画道路8路線 一般道路11路線)
事業期間
昭和49 年度〜昭和56年度
関連事業
都市計画 道路の整備
駅前広場の整備


本塩釜駅 塩釜埠頭駅の貨物ヤード跡地に駅前広場が整備された 2012.3




F仙山線の改良を考える      

北仙台駅に進入する「快速」山形発仙台行き  2008.11

橋上駅舎化と駅前広場の整備がされた陸前落合駅 2012.3

(1)仙山線の改良・改善の歴史   

 仙山線は国鉄時代末期までは、電車以外にディーゼル急行や客車列車が走る鄙びたローカル線で、仙台と山形を結ぶ都市間連絡鉄道としての役割は担っていた が、仙台市内の都市鉄道としての機能は低く、そのような利用客も非常に少なかった。しかし1984(昭和59)年2月に北仙台〜陸前落合間に北山駅と国見 駅が同時に開業したのを皮切りに、新駅の設置、行き違い設備の設置、仙台〜愛子間の普通列車増発などの改良・改善が続き、都市鉄道としての機能は飛躍的に 高まった。
 ただ全線単線の現状ではこれ以上の列車増発は困難になりつつあり、より抜本的な改良である複線化や周辺道路の渋滞緩和を目的とした中江〜東照宮付近の高 架化計画があるが、現時点では具体化に進展が見られない。仙台市当局が地下鉄東西線建設に集中し、仙山線改良に力を注げない現状があるようだ。また仙台空 港アクセス鉄道の列車が仙山線を経由して山形までの乗り入れる計画は、アクセス鉄道の計画が打ち出された当初から構想されていたが、JR東日本が難色を示 し実現には至っていない。仙台市は「東北の首都」を自負するならば、より広域的な視点で仙山線の改良を捉え、東西線建設が順調に進み開業までのメドも立っ てきただけに、JR東日本と調整し仙山線の改良に本腰を入れるぐらいの気概を見せてほしいものだ。
 さて、国鉄時代末期から現在までの仙山線の改良・改善策の歴史を纏めてみたい。仙台〜山形間の高速バスの拡充に伴い仙山線の機能は仙山間の都市間連絡よ りも仙台市内の都市鉄道としての役割を期待される存在に変わりつつある。特に2004年以降は快速が国見駅と陸前落合駅に停車するようになり、仙台〜山形 間の速達性に優れた特別快速が廃止されるなど、都市「内」鉄道としての機能強化が顕著になっている。

■国鉄時代末期から現在までの仙山線の改良・改善策
年 月日
内    容
1984.02.01
北山駅、国見駅が開業
1986.07.03
東北新幹線開業による仙山線利用増に備え、奥羽本線北山形−羽前千歳間 2.9kmの複線化が完成、使用開始
1987.06.01
国見駅の列車交換設備使用開始、仙台−愛子間に普通列車10往復増発
1988.11.18
東照宮駅が開業(一部普通列車通過)
1989.03.11
ダ イヤ改正
▽東照宮駅に全ての普通列車が停車するように
1991.03.16
葛岡駅が開業(一部普通列車通過)
1993.12.01
ダ イヤ改正
▽葛岡駅に全ての普通列車が停車するように
1997.12.01
国見駅で混雑緩和のため朝ラッシュ時に上下線入替を実施
『鉄道ピクトリアル』通巻第650号、90頁、1997年
1998.12
仙台−山形間のノンストップの特別快速「仙山」が北仙台駅と山寺駅に停 車化
1999.12.04
ダ イヤ改正
▽仙台−山形間の快速列車の平均所要時間が3分短縮
▽仙台−愛子間に朝夕1往復ずつ新設
2001.04
愛子駅の駅前広場が完成、同駅発着のバス停が国道48号沿いから駅前広 場内に変更
2001.04.01
ダ イヤ改正
●休日ダイヤの導入
▽快速列車が上下26本を上下35本に拡大
▽特別快速列車を2往復新設
▽愛称も平日と区別、「ホリデー仙山号」とする
▽仙台−愛子間に普通列車1往復新設
▽仙台−愛子間の折り返し列車9往復を作並まで延長
●平日ダイヤ
▽1編成(4両)当たり約150-250人多い乗客を輸送できる701系電車を導入
2002.03
国見駅の混雑緩和のため、駅北側の臨時改札口を常時改札とし、従来の南 側の改札を臨時改札に入れ替え
2002.03.23
ダ イヤ改正
▽休日ダイヤを土曜日に拡大、快速列車上下26本から35本に、普通列車は上下52本が27本に
2003.07.24
北山駅は自動改札機導入のため駅舎を改築
2004.03.13
ダ イヤ改正
▽仙台−愛子間に正午前後に普通列車1往復新設、平日と休日をほぼ同じダイヤに
2004.10.16
ダ イヤ改正
▽土曜・休日ダイヤを廃止し平日ダイヤに一本化
▽仙台−愛子間に普通列車2往復新設
▽仙台−山形間の快速が国見駅、陸前落合駅、羽前千歳駅に停車
▽快速列車の愛称「仙山」を廃止
2005.03.28
陸前落合駅の橋上駅舎化及び駅前広場が完成
2007.03.18
東北福祉大前駅が開業
2007.04.23
E721系電車が一部列車に導入

 国鉄末期と現在を比較して、乗車人員が大きく増加した路線は全国に多数あるが、殆どが地方交通線(札沼線、越後線、芸備線、香椎線な ど)で、幹線では珍しいかもしれない(ちょっと考えてみたが福知山線ぐらいか?)。そもそも幹線は国鉄時代からある程度まとまった輸送をしていた路線であ るので、仙山線はそう いった意味では仙台と山形の都市間輸送としては機能している幹線ではあったが、都市内輸送としての機能は持ち合わせてはおらず、その点では幹線らしからぬ 状態だったが、改良・改善によって一気に都市鉄道型の幹線に変貌を遂げた路線であると言えよう。


(2)「中 江 駅」構想と高架・複線化構想について  
 ここ数年仙山線の輸送改善に関連して、話題に上り続けているのが、いわゆる新駅の「中江駅」構想とその周辺の高架化、更には複線化の構想である。

中江駅構想の予定地付近、JT所有地(専用線跡地)が仙山線の線路沿いに伸びる 2009.7

■JR仙山線 進まぬ「輸送力強化」
(2003 年09月18日付『河北新報』)

 仙山圏 の大動脈、JR仙山線の混雑を緩和しようと、東北運輸局やJR東日本、仙台市などが昨年10月から始めた「機能強化」の議論が足踏みしている。輸送力強化 の必要性では一致しているが、肝心の強化の方法をめぐって足並みが乱れているからだ。仙山線は単線なため、列車が行き違える施設を駅に整備することで解決 を図りたいJRと、踏切などでの渋滞解消も視野に仙山線の高架化を進めたい仙台市。利用者の不満をよそに、解決まではまだ時間がかかりそうだ。

<1時間4往復が限度>
 JRによると、仙山線の輸送人員は仙台―山形間が一日平均約2500人仙台―愛子間だけでみると約2万人に上る。しかし単線のため、運行は「1時間に4往復が限 度」(JR)で、朝のラッシュ時には激しい混雑が起きている。
 行政機関とJRは昨年10月、仙台圏の公共交通の活性化を考えるプロジェクトを発足。輸送力アップや高速化について検討を始めた。
 解決策として浮上しているのが、列車が行き違えるように一部駅の構内を複線化する案。市中心部に近い北山葛 岡両駅と新駅「中江」(仮称)の3カ所を想定してお り、実現すれば1時間当たり1往復、増発することができる。
 だが、「中江」駅の予定地は都市計画道路・北四番丁岩切線との交差付近にあり、渋滞が激しいことで知られる。周辺には大型スーパーの開店も予定されてい るため、仙台市は「行き違い施設に列車が待機し遮断機が下りる時間が長くなれば、渋滞をさらに悪化させかねない」(谷沢晋都市整備局長)と懸念する。

<事業費100億円単位に>
 これに対し、JR仙台支社の坪田卓哉企画部長は「現在行われている北四番丁岩切線の拡幅で渋滞は解消できるのでは」とした上で「行き違い施設の位置や遮 断機の運用を工夫すれば、開かずの踏切にはならない」と反論する。
 仙台市としては総合的な交通体系整備の観点から、各種交通計画に盛られている仙山線の高架化を実現したいと の思いがある。谷沢局長は「市中心部を走る区間を高架にすれば、渋滞問題も一気に解決できる。将来の街づくりをにらみ、高架化と機能強化はセットで進めた い」と語る。
 だが、約60億円程度と見込まれる行き違い施設の整備とは違い、高架化は100億円単位の事業費が必要になると見込まれる。工事も大掛かりになり、建設 に時間がかかる。高架化を主張する市自体、最優先事業には地下鉄東西線を掲げているだけに、国など関係機関の間では「高架化は早急には無理」との見方が強 い。

<「空港直通が不可欠」>
 仙山線については、2006年度中の開業を目指す仙台空港アクセス鉄道との相互乗り入れも課題として浮上している。山形県交通企画室は「アクセス鉄道と 仙山線が接続されても仙台空港まで時間がかかれば山形県民に利点はない。直通運転と仙山線の輸送力強化は不可欠」と強調する。
 公共交通活性化プロジェクトの事務局を務める東北運輸局は「輸送力強化の方法について年度内にも本格的な協議をしたい」と話している。
(報道部・藤本貴裕)

■仙山線・中江踏切 05年度までに4車線化 仙台
(2004 年02月24日付『河北新報』)

 仙台市とJR東日本仙台支社は23日までに、渋滞が慢性化しているJR仙山線の「中江踏切」(宮城野区幸町2丁目)を将来的に高架化し、それまでの間は 暫定的に踏切部分を4車線に拡幅することで合意した。車線の拡幅工事は今年夏までに開始する。高架化の時期は未定だ が、現在、市などが太白区で進める長町副都心整備事業でJR東北線の高架化工事にめどが付き次第、整備に着手する予定

 中江踏切は仙山線と、青葉区上杉と宮城野区岩切を結ぶ都市計画道路が交差している。現在は上り(西行き)1車線、下り(東行き)2車線の計3車線となっ ている。計画では踏切南側に用地を確保し、全体の幅を現在の2倍の30メートルに拡幅。05年度までに中央分離帯を設けて片側2車線の4車線に広げ、歩道 も整備する。事業費は市が負担し、工事をJRに委託する。市の調査によると、中江踏切の交通量は平日の午前7時から午後7時までの12時間で約1万 9000台、ラッシュ時の午前9時台と午後5時台は一時間当たり約1800台の車両が通過している。

 踏切を通る都市計画道路も同時に4車線化される見込みで、市街路課は「車線拡幅で渋滞緩和と市内の交通の円滑化が図られる」と期待する。JR東日本仙台 支社は「中江踏切の高架化は市と連携して取り組むため、工事の時期などはまだ未確定だ が、拡幅によって踏切事故の危険性も軽減できる」と話している。

中江踏切の4車線化は完成済み(下り車線から利府方向を望む) 2009.7

中江踏切は「新石巻街道踏切」が正式名称のようだ 2009.7

■景観か渋滞緩和か 仙山線踏切高架化で「東照宮隠れる」 仙台
(2005 年02月12日付『河北新報』)

 JR仙 山線の東照宮踏切(青葉区)、中江踏切(同)付近の渋滞解消を目指し線路の高架化を計画している仙台市が、悩ましい問題に直面している。線路がお宮のすぐ 前を通る東照宮では、高架になると境内の風景がふさがれてしまうからだ。地元では「門前町として栄えてきた街の景観が損なわれる」との声が上がっており、 問題解決はそう簡単ではなさそうだ。

 東照宮踏切を通る宮町通は朝夕、小松島・旭ケ丘方面と市中心部とを行き来する車で渋滞する。渋滞に拍車をかけているのが踏切。住民の間では「立体交差化 で渋滞を緩和してほしい」との要望が以前から多く、地元の連合町内会長らが促進期成同盟会をつくって要請活動を続けてきた。

 一方で、高架にすると東照宮付近の景色が分断されると、抵抗感を示す住民も少なくない。現在の宮町通から続く門前町として栄えてきた歴史があり、石段や 御社殿と街が一体となって味わい深い景観をつくり出しているからだ。期成同盟会などもこれを意識して「高架」という言葉を避け、「立体交差」と表現してき たことからも、問題のデリケートさがうかがえる。近くに住む50代男性は「朝夕の渋滞のひどさは切実な問題だが、歴史ある都市景観はいったん壊したら元に 戻すのは大変。悩ましい問題だ」と話す。

 線路の地下化で対応する案が出たこともあったが、工事費の増大が予想され、現実的な選択肢でないとの見方が専らだ。計画が具体化すれば、市は「景観に配 慮した高架化」という重い宿題に直面しそうだ。仙山線の高架化計画は渋滞解消策として10年ほど前に市政課題として浮上した。中江地区の線路沿いには細長 い空き地があり、この土地も利用した高架化で付近の複線化を図り、仙山線の輸送力を強化したい狙いもあるとされる。

 市は当初「中江から北仙台駅近くまでを連続的に高架化する方針を いったん固めた」(都市整備局)が、最近では部分高架案が強まっている。同局は「どこからどこまでの 高架化が望ましいか、2、3年のうちにめどはつけたい」と話す。一方、中江踏切周辺は線路高架化を前提に道路拡張工事が進められているほか、高架の請願駅 「中江駅」を設ける構想もある。


(3)北仙台駅とその周辺の改良・ 改善を考える  

マンションが林立する北仙台駅周辺 2013.9
 北仙台駅を考える上で長町駅と比較することは様々な示唆があるように 思われる。

 北仙台駅はJR仙山線と地下鉄南北線が接続する仙台市中心部の北部に位置するターミナルである。時代を遡れば仙台市電の北仙台線(1969年4月廃 止)、仙台鉄道(1950年休止) の起点・終点であり仙台の北のターミナルとしての地位を古くから確立していた。

 一方の長町駅はJR東北本線と地下鉄南北線が接続する南のターミナルであり、古くは仙台市電の長町線(1976年4月廃止)、秋保電鉄(1961年5月 廃止)が集まっていたので国鉄、市電、私鉄の3者が揃っていたという点で北仙台駅と共通する。

 しかし北仙台駅は長町駅と比較して市電も私鉄もその廃止時期が早いという点で地下鉄開業までの間はターミナル機能を喪失していた期間が長く、またJR長 町駅が高架化によって駅設備を刷新、仙台空港鉄道の開業による列車本数の大幅な増加による利便性向上、長町副都心としての再開発などの近年の急速な発展が 見られるのに対して、北仙台駅周辺は再開発などが行われたものの、鉄道面での変化は緩慢で、長町地区のような副都心的な位置付けもされていない。

 ただ北仙台駅は古くから北のターミナルとして機能していた街ならではの利便性や風格を持っているように感じる。周辺の改良・改善を含めてポテンシャルを 感じる北仙台駅を様々な角度から分析してみたい。

■北仙台駅に関する年表
年月日
事  項
1929 年09月29日
仙山東線の仙台〜愛子間開業により北仙台駅が開業
同時期に仙台鉄道の北仙台駅が開業
1937 年10月26日
仙台市電北仙台線(北四番丁〜北仙台駅前)が開業
1937 年11月10日
仙山線が全通
1950 年12月20日
仙台鉄道の北仙台〜加美中新田間の運輸休止を請願(1956年廃止)
1969 年04月01日
仙台市電北仙台線が廃止
1987 年07月15日
仙台市営地下鉄南北線が開業により北仙台駅が開業
1998 年
地下鉄北仙台駅・北2出口供用開始
2003 年03月06日
JR北仙台駅に自動改札が導入
2003 年10月26日
JR北仙台駅にICカードSuicaを導入
2004 年10月16日
JR北仙台駅改札口にLED発車標を導入
2007 年03月
JR北仙台駅のKIOSKが廃止
2008 年03月
JR北仙台駅のホーム待合室が改築・完成
2008 年10月
JR北仙台駅の駅舎に待合室が完成、指定席券売機運用開始
2010 年01月16日
地下鉄北仙台駅で可動式ホーム柵の運用開始


 北仙台駅周辺の問題箇所を地図上にA〜Eで示している。

:JR北仙台駅に北口が存在しない。そのため北仙台駅北側の住民がJRを利用するのが不便である

:地 下鉄・北仙台駅とJR北仙台駅の接続が不便。屋根も無い歩道で接続。

:バ スターミナルが整備されているが利用度が低い。

:踏 切に加え複雑な交差点形状が渋滞を招く。クルマの流動は青矢印のような右折方向の流れがメインであるため混雑しやすい。

:都 市計画道路が未開通。


(4)仙山線乗車記  
  2011年10月某日。山形発12時41分発の快速列車に乗り仙台駅までの仙山線全線を久しぶりに堪能した。そこで見たこと、感じたことが色々あるので乗 車記録を残しておくことにした。

 山形発12時41分仙台行きの快速列車はE721系の4両編成。山形駅を 発車する数分前に左沢線の山形駅着のディーゼルカーが反対側に到着。仙山線の快 速列車に乗り換える乗客もありボックス式クロスシートに最低1人以上程度の乗客がいるような状態になったところで、定刻通り発車。
山形駅 2011.10
 奥羽本線沿いの山形市の市街地はすぐに戸建て主体の低層住宅地となり、郊外の雰囲気が濃くなると北山形駅に到着。左沢線が分岐する構内は広い。続く羽前千歳駅にも停車して、ここで奥羽本線と別れ、いよいよ仙山線へと進入する。楯山駅の日米商事の油槽所を横目で確認しながら同駅を通過、人家が途切れ山並み が近付 いてくると、やがて山寺駅に到着。反対側には仙台発山形行きの普通列 車が停車している。向こうは普通列車ながらE721系の6両編成とこちらよりも長い。乗 車率もそれほど悪くなさそうだ。山寺駅ではさすがに観光地らしく年配の観光客らしき乗客も多く、席は更に埋まった感じだ。

 山寺駅を出るといよいよ奥羽山脈 に分け入る雰囲気が強くなる。大自然に囲まれる中を線路のみ走っているようにも感じられるが、林道のような道も並行して見えるので人跡未踏の山地というわ けではないようだ。面白山高原駅を出るとすぐに仙山トンネルに突入。 トンネル内の山形寄りには面白山信号場があり、暗いトンネル内でも空 間が広がるのが分 かる。トンネルを抜ければそこはもう仙台市内だが、とても政令指定都市内に入ったとは思えない深い山の真っただ中である。それでも少し開けてきたなと思っ たところで作並駅に到 着。山寺駅で乗ってきた年配の観光客などが下車する。また行き違いで仙台発山形行きの快速列車がやってきた。今度は4両編成である。作並駅を出発すると国 道48号線と並行して走るようになり、やがて廃駅のような雰囲気を醸し出す臨時駅の西 仙台ハイランドを通過。熊ヶ根駅も通過し少し人家が増 えてきたかなと 思った矢先、熊ヶ根鉄橋で深い渓谷を渡る。この突然の深い渓谷の出現にはいつも驚かされるものがある。陸前白沢駅を通過する頃から周囲は本格的に人家が増え出 し、やがて線路の両側に工場が目立ち出だす。進行方向右手にアドバンテストの綺麗な工場が現れ、それを過ぎると、新しい住宅が目立ち始め国道48号が頭上 を跨ぐと久しぶりの停車駅である。

 その愛子駅は仙山線の運転上の大きな要であり、乗車中の快速も同駅 からは各駅に停車する。言わば区間快速のような運転形態だ。 また同駅を始発又は終着とする 列車が非常に多く実際、反対側のホームには仙台発愛子止まりの普通列車が停車していた。同駅からは学生や主婦などの乗客がどっと乗り込み車内も都市近郊の雰囲気に一変する。愛子駅の周囲はマンションよりも戸 建て住宅が目立つが、住宅の密度はかなり高い。次の駅は陸前落合駅で、 橋上駅に改良された同駅は更に都市近郊 駅の体裁が整っている。周囲もマンションや団地などの集合住宅が目立ち、丘陵部の西花苑や折立などの住宅地も見渡せる。学生などを中心に乗 客は一層増えて、立 客の姿も増えてきた。

 ここから一気に都市化した景観が加速しそのまま仙台の市街地内に入るのかと思いきや、陸前落合駅を出発すると再び山を登り出 し、周囲は再び緑に取り囲まれるのが面白い。やがて東北自動車道と仙台北環状線を相次いでオーバークロスする。両道路とも片側2車線の道路だが、クルマの 交通量は多くや はり仙台市街地には確実に近付いていることを実感できる。またチラっとだが仙台宮城ICや仙台西道路まで俯瞰でき仙台随一の道路交通の拠点が一望できるの も楽し い。
 そんな環境に次の葛岡駅はあるが、同駅は愛子〜仙台間では旅客数が ずば抜けて少ないエアスポット的な駅で、霊園の最寄駅という駅設置の理由からすれば当然かもしれない。

 山越えはま だ続いており、短いトンネルを抜けるとすぐに国見駅に到着した。同駅 は学生の乗り降りが非常に多く活気がある。混雑緩和のため狭い地形ながらホームを増設し、上下線の利用者を 分けたという経緯を思い出す。同駅では下りの愛子行き普通列車と交換をした。国見駅周辺はその名の通り仙台平野を見渡せる景色の良い場所なのだが、残念 ながら仙山線からはそれほど良い景色を眺めることはできなく、一瞬仙台市街地の高層ビル群が一望できる程度。
北仙台駅 2008.11
 国見駅を発車して間もなく、あっという間に東北福祉大 前駅に到着した。2007年3月に開業した現時点では仙山線内で最も新しい駅で、大学と直結かつ仙台市道の真上に設けられ交通の便の良さそ うな駅だ。大学生っぽい乗客を中心にホームで待つ人は多く、新駅特有の明るさもあって活気がある駅だ。
 この辺りからは丘陵地帯を切り開いた住宅地が延々と線路両側に続いており、そんな住宅密集地に次の北山駅がある。ここは駅の改札口が東北福祉大前駅寄りの端っこに1カ所のみしか な く、乗客はそちらサイドに片寄って電車を待っている。ホームも狭苦しいが、やはり利用客は多い。

 開業当初から存在する陸前落合駅の後は葛岡、国見、東北福祉大前、北山と近年の新設駅が4つ続き、次の北仙台駅まで来てようやく陸前落合と同様の開業当初からの駅となる。仙台市街地 の北のターミナルといった趣のある同駅だが、ここでもまた行き違いがあり山形行きの快速列車とホームを挟んで停車し合う。双方の電車とも乗り降りが多く、 仙山線の中間駅で最大の乗客数を誇るだけのことはある。北仙台駅を発車するとクルマの流れが途切れることのない県道仙台泉線(上り4車線、下り2車線)を 跨ぎ、NTTドコモ東北ビ ルの大きな姿が見える。電車は梅田川に沿って市街地内を進むが、車窓の左手は保存緑地のため、丘陵地帯が樹木に覆われている。右手は古くからの市街地と いった感じで、すぐに東照宮駅に 到着。同駅手前の踏切では電車を待つクルマが列を成し、高架化の必要性を痛感させられる。東照宮駅もホームは狭く、たくさんの乗客が待っているため一層窮 屈な駅 に見えてしまう。
新石巻街道踏切 2009.7
 さてここで愛子駅〜東照宮駅間について考えてみると、この間の営業キロは15.0km、平均駅間距離は約1.7kmであり都市内輸送にふさわしい駅数があると 言えそうだ。そして単線でかつ交換可能駅も限られていることから列車本数のこれ以上の増加は難しいとされるが、平日の日中でもこれだけ活発な利用があることを目の当たりにすると、やはり複線化など の輸送力の抜本的な増強が必要と思われる。
 東照宮駅を発車すると高架化や新駅設置(仮称:中江駅)の構想があ る新石巻街道踏切を通過。この4車線道路も踏切待ちをするクルマでプチ渋滞が起きている。踏切直後から築堤を登り始め、進行方向右手には仙台市中心部のビ ル群とその背後の奥羽山脈まで一気に眺望が開ける。非常に爽快な 景色だ。そのまま東北本線をオーバークロスし、駅弁の「こばやし」の工場脇をすり抜けて東北本線と並行して走り出す。この辺は仙台市街地の古くからの住宅 地で狭い道路との踏切が多数残っている。この辺は道路網が未整備だが居住人口は多そうで東北本線と一緒に新駅を設置仮称:小田原東丁駅)しても良いのではないか。愛子方面と岩切方面の接続を良く すれば、仙台駅で乗り換えるよりも便利という効果も期待できる。どの程度の需要があるかは不明だが(笑)。先程の中江駅から近いという指摘があるかもしれ ないが、仙台駅〜東照宮駅間の営業キロは3.2kmあり、市街地内であること考えれば2つの新駅を設置しても問題ないとも思える。

 そんなことを考えていると頭上を国道45号線が跨ぎ、拡幅工事をしている宮城野橋(X橋)を見ながらビルの谷間を進み新幹線の高架橋が頭上を覆うため薄 暗くなり、構内が広がると終点、仙台駅のホームに到着。ホームには折 り返しを待つ乗客が列を成しており、降車する我々が電車から溢れ出すとホームはごった返した。山形駅から到着すると一段と仙台駅の喧騒が都会的に感じられ る久しぶりの仙山線乗車体験であった。



G常磐線の改良を考える
 いわき以北の常磐線は単線区間が殆どで、列車本数も少ない。相馬以北は仙台都市圏を志向した輸送体系となっているが、東日本大震災の影響で浜吉田〜相馬 間は依然として不通のままとなっている。この区間は線路を山側に移設の上、復旧させるというがその際は高架化され、駅の施設も一新されることになる。今な お人口流出が続いているというだけに、早急な復旧が望まれるところだ。

■県境ものがたり 宮城−福島 行き交う人々▼8 (抜粋)
(2000年1月19日付『河北新報』21面)

 県境の新地駅は無人駅。千人を超えていた乗降客数は現在900人ほど。高校生らの相馬方面の利用は多いが、車の利用者が増えたためか仙台方面の利用客の 伸び悩みは否めない。
 新地町は相馬市、山元町と協力、仙台駅発、山下駅折り返しの普通列車6本のうち、幾つかを新地駅、相馬駅まで延ばしてもらおうと運動をしている。新地駅に列車を止められる待避線があるからで、宮城、福島側の双方の県 境駅の坂元、新地両駅の利便性向上につながると期待をかける。
 しかし、JR東日本は「朝夕以外は利用客が少ない」(仙台支社広報室)と、当面は現行のままとする考え。運動が思うように任せない背景として、地元には 「もう1つの境」が影響しているのではとの見方がある。県境はJR東日本の 仙台、水戸両支社の管轄の境でもあるのだ。
  ■  □  ■
 常磐線の運行管理は岩沼駅まで水戸支社が受け持つが、駅などの管理は県境で分かれるため、両町の陳情は2つの支社に行われる。
 「支社間をまたぐ列車でも対応に変わりはない」(仙台支社広報室)とは言うものの、新地駅までの延長について両支社の現場には、「大半が仙台支社管内を 走るので仙台の問題」「延長部分を管轄する水戸にイニシアチブがある」といった声もあり、ことは簡単ではなさそうだ。
 民営化後の昭和63年、仙台方面の利用実績が高いことから岩沼駅から県境 までの管理が、水戸から仙台へ移管されたこともあって、福島側では「新地が仙台支社の管轄だったら、もっと簡単に運ぶのではないか」との思 いがくすぶる。
 「利用客を増やすJR側の努力も必要」と、一部複線化による速度アップなどを提言している鉄道友の会会員の高木敏夫さん(68)=いわき市=は、こんな 見方をする。
 「いわき市以北の常磐線の活性化は一部地域に任せるのではなく、宮城、福島両県が本腰を入れるべき課題だ。そうしないとJR内の管轄の問題に、矮小化さ れてしまいかねない」

■県境ものがたり 宮城−福島 見える壁 消えゆく壁▼3
(2000年11月8日付『河北新報』19面)

 JRの12月のダイヤ改正によって、県境で接する福島県新地町と山元町が相馬市や亘理町と共に陳情してきた要望が、1つ実を結ぶ。
 改正されるのは、常磐線の仙台駅発の普通列車。山元町の山下駅止まりになっている午後9時台の1本が県境を越えて、新地町の新地駅まで延伸される。
 延伸は新地、坂元両駅の利便性向上が狙いだ。延伸部分は、県境はもちろん、JR東日本の水戸、仙台両支社の境界もまたぐ。両町が粘り強く両支社に陳情を 重ねてきただけに、地元は歓迎している。
  ■  □  ■
 坂元駅の活性化に取り組む、山元町の住民グループ「坂元駅を考える会」(日下紀郎会長)は10月29日、同駅で大芋煮会を開催し、延伸実現を祝った。
 考える会も町同様、新地町の議員らと懇談の機会を持つなど、延伸に向けて運動を続けてきた。日下会長は「新地との協力もあって実現した。喜ばしいこと だ」と評価しつつも、「課題も控えている」と表情を引き締める。
 さらなる利便性の向上には、利用者数の増加が不可欠だからだ。1日の平均乗降客数は、坂元駅が1700人、新地駅が850人で、山下駅(3200人)、 相馬駅(4000人)と比べていかにも少ない。
 坂元、新地両駅から仙台市に通う利用者の間では、今回のダイヤ改正について、「もっと遅い時間帯を延長して欲しい」(新地町の専門学校教員)という声が 少なくない。「従来の利用者が分散するだけ」といった懸念も強く、利用者の増加を図るためにはダイヤの改善に加えて「まちづくりそのものが問われる」(日 下会長)状況にある。
 利用増対策の1つが転入者の確保だ。新地町は先手を打つ形で、ダイヤ改正発表後直ちに、新地駅前に約250戸を張り付ける宅地開発構想を打ち出した。
 「約7割を町外、それも仙台圏から呼び込みたい」と荒和英町長。あくまで地権者組合による団地開発を目指しているが、町は道路整備などに10億円を投じ ることを明らかにしている。
 そこには県境を意識せざるを得ない事情がある。
 「宮城側に広告を出しても反応はさっぱり。県境を越えて福島側に住むには かなりの抵抗がある」と言うのは、相馬市内の不動産業者。宮城側にアピールできる新地の宅地価格は「坪(3.3平方メートル)8万円台」と 指摘する。
 実は新地町の10億円投入の理由もそこにある。山元町内では「立地の良いところで坪10万円」(町内の不動産業者)とされ、「駅前の一等地を山元町より 安い坪10万円以下に抑える」(都市計画課)ための必要経費≠ネのだ。
  ■  □  ■
 一方の山元町。森久一町長は「急激な人口増加は望まない」という考えで、坂元駅前の整備は検討しているものの、新地町のような具体的な宅地開発計画はな い。立地環境の違いを背景にした、ある種の余裕が見え隠れする。
 通勤人口に占める仙台市への通勤割合(平成7年)は、新地町の12.0%に対して、山元町は42.2%。やはり同じ県内という強みがうかがえる。
 通勤ばかりではなく、仙台市内の県立高校への通学も可能。亘理郡内の中学3年生が仙台一高など仙台市内(仙台南学区)の高校を受験することは認められて おり、選択の幅は広い。
 このため、山元町は「相馬の工業団地への進出企業の社員、特に子供を抱える世帯は宮城側に住みたいと思うのではないか」(企画調整課)と読み、福島側に 熱い視線を送る。
 団地開発を柱とするハード整備に乗り出す新地町に対して、仙台市とのつながりをてこに、ソフトを重視した手堅いまちづくりを進める山元町。県境を超えた 連携が呼び込んだ列車延伸の陰には、県境で向き合う自治体間の競争も待っているようだ。


■常磐線沿線自治体の人口推移
市 区町
亘理町
山元町
新地町
相馬市
南相馬市
年 月日
人 口
増加 率
人 口
増加 率
人 口
増 加率
人 口
増加 率
人 口
増加 率
1980 年10月1日
27,822

17,630

8,704

38,332

74,296

1985 年10月1日
29,263
5.2%
18,236
3.4%
8,876
2.0%
39,346
2.6%
77,139
3.8%
1990 年10月1日
30,301
3.5%
18,268
0.2%
8,904
0.3%
39,134
-0.5%
77,253
0.1%
1995 年10月1日
33,034
9.0%
18,815
3.0%
9,093
2.1%
39,449
0.8%
77,860
0.8%
2000 年10月1日
34,770
5.3%
18,537
-1.5%
9,017
-0.8%
38,842
-1.5%
75,246
-3.4%
2005 年10月1日
35,132
1.0%
17,713
-4.4%
8,584
-4.8%
38,630
-0.5%
72,837
-3.2%
2010 年10月1日
34,846
-0.8%
16,711
-5.7%
8,218
-4.3%
37,796
-2.2%
70,895
-2.7%
総務省「国勢調査」より作成

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