1.はじめに |
2.仙台都市圏のあれこれ |
3.仙台都市
圏の鉄道 |
4.仙台都市圏の路線バス |
5.仙台都市
圏の高速バス |
6.仙台都市
圏の高速道路、自動車専用道路、地域高規格道路 |
7.仙台都市圏の都市計画道路 |
8.仙台塩釜港(仙台港区、塩釜
港区) 8−1.特定重 要港湾昇格の前後の仙台塩釜港 8−2.仙台塩釜港の現況 |
9.仙台空港 |
10.仙台都市圏に関する資料 |
仙台臨海鉄道 仙台港駅 2007.5 横浜本牧駅〜仙台港駅間に海上コンテナフィーダー列車が走る |
仙台臨海鉄道 仙台埠頭駅 2007.5 船舶で輸送されたレールを陸揚げして発送する駅として機能している |
痛い航路休止 「非常に残念なニュースだ」。宮城県の及川研・港湾空港局長はくちびるをかみしめた。 北米から仙台港を経て欧州に向かう国際定期コンテナ船を運航しているエバーグリーン・マリーン・コーポレーション(本社台湾)が14日、仙台寄港の一時 中止を正式発表した。 仙台港が持つ3つの国際定期コンテナ航路の1つだった。寄港中止はエ社の世界的な戦略見直しの一環で、寄港中止については、大型船着岸の難しさを問題点 の1つとして挙げた。 だが、「貨物量が少なくコンテナ1本当たりのコストが高くなる地方港には寄りたくない」というのが海運業者に共通する本音。 この航路を利用していた仙台市の輸入住宅業者は、「企業経営や経済波及効果への影響だけではない。例えば、航路の休止が長引けば、税関職員の削減にもつ ながりかねない」と痛手の大きさを懸念している。 小名浜港(いわき市)に昨年9月、初の国際コンテナ航路として東南アジア、韓国航路が就航した。しかし、東南アジア航路は仙台、八戸と競合、韓国航路は 仙台を除く東北各港と競合する。福島県港湾課は「仙台港と茨城県の常陸那珂港に挟まれ、相馬市など浜通り北部や県北部の貨物は仙台に流れる。後背圏が狭 く、厳しい」と話す。 共栄へ強調を 「東北の貨物は7、8割が京浜地方へ流れ、東北各港は残りの小さいパイを取り合ってきた。本来は、その7、8割の方を取り合ってほしい」。こう訴えるの は、東北経済連合会の福島昭夫事務局部長。3月に発表した提言書「東北における新物流体系の構築に向けて」を取りまとめた。 提言書には「ポートセールスでの各県、経済界の協力」「各県港湾の機能分担の明確化」などが盛り込まれた。共存共栄には良い意味での競争と強調が必要だ が、「需要より先に、各県の競争意識が働き、広域的な観点に立った強調は少なかったようだ」(福島部長)というのが現実だ。 宮城、山形両県は平成7年度に実施した地域連携軸形成に関する調査を受け、仙台、酒田両港で8年秋から、ポートセールスで互いにPRの場を提供する「交 換プレゼンテーション」を実施。連携プレーは芽生えつつあるが、共同ポートセールスには至っていない。 経費減に効果 プリンター、ファクシミリのメーカー「沖データ」(本社東京)は、仙台港の北米西岸航路就航(9年4月)を機に、福島市の工場で生産する北米向け輸出品 を仙台港利用に 切り替えた。京浜利用では、陸送費や倉庫地代など国内コストが非常に高くつくためだ。 「京浜に運ぶより19%、ダイレクトバンニング(自社の直接荷積み)を合わせると41%、約1億円のコスト削減につながった」。同社の高橋克己IBO部 長兼ロジスティックス部長はこう説明する。地元に生産工場があるため、八戸港の利用に踏み切った金属原料メーカー太平洋金属(本社東京)のケースも同様 だ。 横浜税関の昨年9月の調査によると、東北6県の海上輸出コンテナが東北の港を経由する割合(重量ベース)は40.0%で前年同期比20.5ポイントアッ プ。輸入コンテナも8.6ポイントアップの28.8%だった。 これまでは、貿易取り扱い業務の機能が東京に集中し、京浜への貨物流出を招いてきたが、企業側が地元港活用のメリットに注目し始めたとみられる。 ある海運関係者は、東北全体の潜在需要掘り起こしに向けて、「仙台港はソフト面でリーダーシップを発揮すべきだ。ノウハウの集積、人材育成に努め、東北 の他港にアドバイスできる力をつけてほしい」と指摘している。 |
世界へ
のゲートウェーを目指す東北各地の港湾が今、正念場に立たされている。国際物流の主役、海上コンテナ輸送の面では、貨物取扱量は徐々に伸びているとはい
え、域内の貨物の7割以上が東京湾の各港経由で輸出入されているのが実情だからだ。各県の港湾関係者は、これらの貨物を何とか取り込もうと、地元港湾の整
備やポートセールス(利用促進)に懸命だ。東北の港が、世界経済のグローバル化の中で生き残るには何が必要か。5つの港湾の現状と課題を追った。(5回続
き) ◇ 役所の発想と指摘 「貨物が少ない港には、船会社は寄港したくない。それが当然の論理だ」。東北経済連合会(明間輝行会長)の物流効率化検討委員会委員長を務める稲村肇東 北大大学院教授は、東北の港の置かれている現状をずばり指摘する。 東北最大の国際貿易港・仙台港(塩釜港仙台港区)。平成8年に核となる高砂コンテナターミナルが完成。2機の高速荷役機も設置された。大型船が着岸でき る待望の高砂2号埠頭(水深14メートル)は13年に使用が開始される予定で、ハード面の整備は着々と進んでいる。しかし、貨物不足はここも例外ではな い。 「港湾を整備したからといって船会社が新航路を開設するというのは役所の発想だ」とある海運関係者は指摘する。 1社の定期便休止 国際コンテナ定期便の3航路のうち、北米−アジア−欧州航路を運航するエバーグリーン(本社台湾)は今年6月、同港への寄港休止を発表した。「岸壁の未 整備などの問題もあるが、世界的な航路見直しの一環」というのが休止の理由だった。 だが、稲村教授は「エバ社の場合は、貨物不足による採算性の問題が大きい」と指摘する。逆に言えば、貨物量の増加が見込めれば「すぐにでも運航を再開す る可能性が高い」(稲村教授)ということになる。 仙台港のコンテナ貨物取扱量は、平成7年の7,365TEU(1TEUは20フィートコンテナ1個に相当)から、10年には3万 3,185TEUと急増 した。しかし、船会社が諸手を上げて新航路を就航させるには程遠い集荷量だという。 仙台港と同様、運輸省の「中核国際港湾」に指定されている清水港(静岡県)の場合、約20航路で、32万TEU(10年実 績)の取扱量があり、その差は 歴然としている。 7割が京浜へ流出 集荷の不振は、東北全体の貨物の7割以上が京浜港に流れていることが、最大の要因だ。宮城県や仙台市、仙台商工会議所は、「せめて5割程度に防がなけれ ば」と、集荷のため地道なセールスを強化し始めた。 荷主をどこか1ヵ所に集め、一方的に説明していたこれまでのセールスの仕方も一変。宮城県は、5月から荷主となる東北の企業を個別に回り積極的な売り込 み作戦を開始した。「物流コストを削減できる」などと、仙台港を使うメリットを説明して東京圏経由の物流体系を変えてもらうためだ。 インフラ整備と並行しながら、どれだけの貨物量を仙台港に集めることができるか。エバ社の寄港再開の実現は、仙台港の将来を占う指標の1つになる。 |
メ
モ コンテナヤード面積6万6,000平方メートル、コンテナ対応バース1、最大水深12メートル。全体計画では水深15メートルの岸壁2
バースを含む8バースになる。今年10月、臨港地区に「仙台港国際ビジネスサポートセンター」がオープンする。 |
トヨタ自動車系列の関東自動車工業岩手工場(岩手県金ヶ崎町)で、今年10月から増産されるトヨタ車(乗用車)の約8割が、従来通り仙台港を経由して、関
東、中部方面に海上輸送される見通しが27日までに強まった。トヨタ側に仙台港の利用を働きかけてきた県は、「東北の物流拠点港としての発展に一層の弾み
がつく」と歓迎している。 岩手工場では、「マークU」や「アルテッツァ」などの乗用車の組み立て作業を行っており、年間の生産台数は約10万台。このうちの2割は釜石港から海上 輸送しているが、残りの8割については東北自動車道を利用して仙台港まで陸送し、仙台港から船積みしている。 トヨタ自動車はリストラ策の一環として、7月に関東自動車工業(本社横須賀市)の横須賀工場を閉鎖し、10月から岩手工場に生産を集約させる。これに伴 い、岩手工場の1日当たりの生産規模は、現在の400台から700台に増えるとみられる。 トヨタ自動車車両物流部は「増産、輸送計画はまだ検討中だ」としながらも、「関東、中部方面から仙台港に車を陸揚げした船の帰りの作業効率を考えると、 これまで通り、仙台港がメーンの積出港になるだろう」と話している。 仙台港の取扱貨物量(移出・移入計)は平成11年実績で、3,180万トン。自動車の取扱量は560万 トンで、原油(580万トン)に次ぐ主要貨物と なっている。県土木部は「岩手工場で増産が始まれば、仙台港の自動車取扱量は100万−150万トンは増えるのではないか」と期待している。 |
宮城県
内の大手電機メーカーなどの工場が、これまでの首都圏経由の輸出ルートを見直し、仙台港や仙台空港を利用するケースが増えてきた。各工場が本社や親会社か
ら「自立」して独自に輸出業務を行い、物流コストの削減を図るようになったためだ。東北の輸出製品の7、8割は首都圏の港や空港を経由しており、地元経済
界は「今後は地元港の利用が増えるのではないか」と期待している。 時間も短縮 宮城県大和町の宮城日本電気(NEC宮城)は1999年、北米向けのコンテナ貨物をすべて、京浜(東京、横浜港)から仙台港に振り替えた。北米向けの航 空貨物も、3−5割の通関業務を成田空港から仙台空港に移している。地元港を利用すれば、首都圏までのトラック代や梱包代が安くなるほか、輸送時間の短縮 にもつながる。これまでよりコストを5割も削減した輸出ルートもある。 NEC宮城の輸出関連業務は、親会社のNEC(本社東京)が一括管理していたが、10年ほど前からグループ全体の効率化を進める中で、徐々に自前で行う ようになった。「系列やグループを超えた取引が進み、子会社に独り立ちしてもらいたいという親会社の意向もある」という。 本社通さず 日本ケミコン宮城工場(宮城県田尻町)も出荷業務を東京の本社から工場に移し、輸出ルートを首都圏経由から仙台港に切り替える準備を進めている。今年夏 にも北米向けの貨物を仙台港から出荷する予定だ。 すでに、昨年秋から、本社を通さずに海外の販売先と納期を調整する業務をスタート。「コスト削減や時間短縮の効果はもちろん、海外の販売先と直接、情報 をやり取りできるメリットも大きい」と、同工場は業務全体への波及効果を強調する。 仙台港のコンテナ航路は東南アジア、北米向けにそれぞれ週1便、韓国向けに週2便(2月から週3便)が就航。仙台空港の貨物専用便はソウル向けに週2便 ある。取扱量は年々増えているが、まだ首都圏に流出している貨物の方が圧倒的に多い。 東北経済連合会によると、東北の輸出製品は、航空便では約8割、コンテナ船便では約7割が首都圏を経由している。福島昭夫産業基盤部長は「東北の企業の 輸出業務が首都圏の本社や商社主導で行われるため、京浜に貨物が流れてしまう。地元港を利用してコスト削減を行っている会社があることをPRの材料にした い」と話す。 IT弾みに 日本貿易振興会(ジェトロ)仙台FAZ(輸入促進地域)支援センターの刈谷雅巳アドバイザーは「IT(情報技術)を応用した物流管理が導入されれば、機 構改革が進んで子会社や工場の機能が強まるはず。地元港の利用はさらに拡大するのではないか」と期待している。 |
6月に
開港30周年を迎える仙台港(仙台市、多賀城市、宮城県七ヶ浜町)が2001年度、現在の「重要港湾」から東北初の「特定重要港湾」に格上げされる。大型
コンテナ船に対応できる岸壁の完成も間近に迫るなど、仙台港は飛躍に向け大きな節目に差し掛かった。しかし、真に「東北の物流拠点」と呼べるかとなると、
港湾としての実績や風格は決して十分ではない。仙台港が拠点性を高めるには何が必要なのか。多方面から課題を見る。(報道部・鹿又久考)=7回続き 実績重ね昇格 「21世紀に入ってすぐの(特定重要港湾)昇格で大変喜ばしい」。東京都内で20日に開かれた仙台国際貿易港首都圏セミナーで、仙台国際貿易港整備利用 促進協議会の村松巌会長(仙台商工会議所会頭)は、港湾関係者ら約250人を前に胸を張った。 特定重要港湾への格上げは、協議会が1990年から要望してきた悲願。村松会長は「名実ともに東北の拠点港湾になるには、ハード、ソフト両面でまだ課題 が多い」とも語り、今後の対応の重要性を強調した。 仙台港は「塩釜港仙台港区」が正式名称。特定重要港湾への格上げは昨年末、「塩釜港」全体として国に認められた。ただ、「塩釜港」の取扱貨物量の85% は仙台港が占めており、実際には国も、仙台港の実績などを主な判断材料に格上げを決めたとされる。 アクセス改善 「仙台港が、国全体の物流体系を考える上で、極めて重要な港湾と位置付けられたということだ」と、国土交通省東北地方整備局の秋元恵一副局長(港湾空港 担当)は指摘する。国は仙台港のコンテナ対応整備を強力に進めており、大きく変貌する仙台港の姿がこの言葉を裏付ける。 国際物流の主役であるコンテナ貨物に対応するため仙台港では95年、水深12メートルのコンテナ埠頭「高砂1号岸壁」(岸壁延長270メートル)が完成 し、翌年には、陸揚げしたコンテナを保管する「高砂コンテナターミナル」(面積13万7,100平方メートル)も運用を始めた。 今年6月には、水深14メートルの「高砂2号岸壁」(岸壁延長330メートル)が完成し、ターミナルは約20万平方メートルに拡張される。水深が深くな れば、それだけ大型船舶への対応が可能となる。3万トン級船舶の接岸が限界だった仙台港は、東北で初めて、5万トン級大型コンテナ船への対応が可能な港湾 に生まれ変わる。 2001年度前半には、港湾への陸送ルートとなる自動車専用の仙台東部、仙台南部両道路が全線開通し、東北自動車道や仙台空港も一気に改善する。仙台港 のコンテナ貨物取扱実績は急速に伸びており、仙台港は体力、実力ともかつてない充実ぶりを見せている。 試練これから 課題もある。仙台という百万都市を背後に抱える港湾の割には、国内での位置付けが高くない。仙台港の貨物全体の取扱量(1998年)は3,191万トン で全国30位。北海道・室蘭港や大分港にも水をあけられている。 旧運輸省などの調査によると、東北のコンテナ貨物の7割は、横浜港や東京港など京浜地区の港湾を経由しているとされており、地元の港湾関係者は「仙台港 は潜在的な需要を十分掘り起こし切れていない」(伊藤整史宮城県土木部長)と口をそろえる。 国土交通省は本年度、全国的な港湾再編に向け格付けの見直し作業に着手、格上げの陰で格下げされる港湾も出ている。仙台港の特定重要港湾も「決して不動 のものではない」(秋元東北地方整備局副局長)というのが厳しい現実だ。待望の金看板は、新たな試練を仙台港に突き付けた。 |
特
定重要港湾 港湾法で「重要港湾のうち国際海上輸送網の拠点として特に重要な港湾」と定義されている。港湾施設建設の直轄事業で国の負担率
が引き上げられるなどの特典がある。塩釜港(仙台港区、塩釜港区)の昇格は全国22番目。昇格を機に法的名称の「塩釜港」は「仙台塩釜港」に改められる。 |
コスト3割減 録音可能なコンパクトディスク「CD-R」(追記型光ディスク)を各国に輸出する福島県梁川町の電子部品メーカー「ザッツ福島」(湯本孝社長)は昨年 10月、北米向けの積み出し港を、それまでの横浜港から仙台港に切り替えた。 梁川町内の工場から仙台港までの距離は、横浜港の3分の1。トラックによる港までの陸上輸送費が大幅に削減され、「3割以上のコストを縮減できた」(湯 本社長)という。 急な注文に応じて輸出する場合は、今も横浜港を使う。仙台港の北米航路は週1便だけの運航になっているためだ。「最大で1週間も待たされるのでは納期に 対応できない。何とか増便できないものか」と、湯本社長は訴える。 便数足りない 地元の港湾関係者の多くが「仙台港は航路、便数ともまだ足りない」と異口同音に唱える。 仙台国際貿易港整備利用促進協議会が1999年度に東北の企業約5,000社を対象に実施したアンケートでも、「仙台港が京浜地区の港に比べ、競争力が 劣る理由」で最も多かったのは、「航路が少ない」の28.6%。「便数が少ない」(21.4%)を合わせると5割に達した。 仙台港と海外を直接結ぶ国際コンテナ定期便は現在、香港、シンガポールなどに向かう「東南アジア航路」(週1便)、ロサンゼルス、バンクーバー、シアト ルなどに寄港する「北米航路」(週1便)、釜山と結ぶ「韓国航路」(週3便)の計3航路。 輸出入コンテナ貨物を積んで、国内の積み替え港との間を行き来する「内航フィーダー船」は、東京便と横浜便の2航路(計週8便)が就航している。 これに対し、東京港や横浜港は欧州や中国、オーストラリア、アフリカ、ロシアなど全世界とコンテナ定期便と結ばれ、主要ルートの北米航路はおおむね1日 2便体制。仙台港との利便性の違いは歴然としている。 採算性が壁に 「航路や便数が少ないと荷主企業はコンテナ船の出港日に合わせて製造工程を組まなくてはならない。荷主の都合で商品を作れないというのは、仙台港を売り 込む際の大きなハンディだ」。仙台港でコンテナ貨物を扱う港湾運送業者、塩釜港運送(塩釜市)の中柴末基常務取締役営業本部長は言い切る。 仙台港では昨年5月に韓国航路が週1便体制で開設され、段階的に週3便まで拡充された。その陰で、台湾の船会社が運航していた北米地中海航路が、採算性 などを理由に99年6月に仙台港から撤退。その子会社が開設した東南アジア航路も、昨年9月に仙台港を離れた。 「採算が取れるだけ積み荷が集まるなら、船会社は定期航路や便数を増やすし、その逆なら即財に手を引く。外国の船会社は特にシビアだ」と、宮城県内の船 会社代理店は解説する。 地元では北米航路の増設のほか、中国航路の新設などを求める声が出ているが、「当面は現在の航路、便数を維持していくので手いっぱい」(仙台国際貿易港 整備利用促進協議会関係者)というのが本音に近い。 |
現れぬ借り手 「お荷物施設を抱えたのは確かだが、計画自体を止めるわけにはいかない」。仙台港で輸入促進地域(FAZ=フォーリン・アクセス・ゾーン)の事業を手掛 ける第三セクター「仙台港貿易促進センター」(社長・浅野史郎宮城県知事)の畠山重光専務は力説する。 「お荷物」と名指しされたのは、港の一角に昨年3月にオープンした「仙台港国際ビジネスサポートセンター」(愛称アクセル)。FAZ計画の一環として、 三セクと宮城県企業局が共同で建設したが、貸事務所や貸しスタジオなどからなる5階建ての多目的ビルは、市中心部から遠いこともあって営業不振が著しい。 1月末現在の集計によると、1,900人収容の貸しホールは10ヶ月間で15件の利用があっただけ。28室ある貸事務所は半分以上の15室が空き室と なっている。物販業者向けの店舗用貸しホールは3区画とも借り手が現れていない。 県企業局の資産では、光熱費や清掃費など年間経費約1億4千万円に対し、収入見込みはわずか2割の2,700万円にとどまる。 「アクセルはもちろん、FAZ計画そのものが失敗だった」。三セクの出資企業の1つ、三陸運輸(塩釜市)の佐瀬安彦代表取締役専務は辛辣に言い放つ。 FAZは、輸入を促進して貿易不均衡を是正するために旧通産省などが導入した制度で、指定地域は関連施設の建設などで国の支援が受けられる。 新施設に期待 指定地域は全国で22ヵ所。宮城県内では1995年、仙台港と仙台空港の一帯が地域指定を受けた。仙台空港の輸入貨物実績は仙台港の千分の一以下に過ぎ ず、「FAZの中心はあくまで仙台港」(県商業・流通課)というのが実態だ。 仙台港のFAZ施設ではさらに、コンテナ貨物の荷捌き・保管施設「仙台港高砂輸入貨物ターミナル」の建設が計画されており、2003年度にオープン予定 だ。 「ターミナルはFAZの主力事業。コンテナ貨物は増えており、事業性はある」(畠山専務)と展望する見方もあるが、FAZを取り巻く状況は依然として厳 しい。 三陸運輸の佐瀬専務は「オフィスビルや倉庫を造ったからといって、輸入が増えるわけではない。情報技術(IT)の発達で、倉庫自体の必要性も薄れてい る。状況認識が甘いのではないか」と指摘する。 景気回復待ち 宮城県は仙台港の輸入貨物取扱量の2000年目標(実績は未集計)を約956万トンに設定しているが、99年実績の約745万トンからすると目標達成は 厳しい状況だ。 有識者による宮城県FAZ推進委員会の委員長を務めた須田熙東北大名誉教授(港湾工学)は「FAZの趣旨は間違っていないが、日本国内の消費低迷が計算 外だった。景気が回復しないと目標達成は今後も難しいだろう」と冷静に見る。 宮城県は、総工費35億円を予定していたターミナルの規模を含め、FAZ計画全体の見直しを検討している。「アクセルの二の舞は踏まない」(畠山専務) と関係者は気を引き締めるが、暗雲はまだ晴れない。 |
取扱量横ばい 宮城県は2001年度当初予算案に、県内の主要港を対象にした港湾計画調査費1,100万円を計上した。仙台港については、広大な埋め立て地造成による 港湾の拡張計画を抜本的に見直そうというのが趣旨だ。 県土木部の伊藤整史部長は「計画には『壮大すぎる』との批判がある。現在の経済社会情勢に合わせた見直しをすることになるだろう」と、計画縮小の可能性 も暗ににおわす。 仙台港の港湾計画は1996年度に改定された。目標年次は2005年度で、@蒲生干潟北側の向洋地区の海岸を約130ヘクタール埋め立てるA埋立地に水 深15メートルのコンテナ用岸壁2バースを建設する−などの事業が盛り込まれている。 計画の事業規模は約2,300億円。ただ、6月に運用が始まる水深14メートルの高砂2号岸壁(事業規模約100億円)など一部を除き、ほとんどの事業 は事実上、凍結されたままだ。港湾需要の低迷などが、背景にあるとみられる。 仙台港の99年の取扱貨物量は3,181万トンと、ここ5、6年、横ばい状態が続いている。計画が掲げる05年度の目標4,480万トンの達成は困難だ とみられている。 当面間に合う 取扱貨物のうちコンテナ貨物は、2000年実績(速報値)で約5万4,800個(20フィートコンテナ換算)。前年比30%増と好調だが、高砂2号岸壁 と周辺のコンテナヤードが完成すると、年間18万個までの対応が可能になり、「当面は十分間に合う」(県港湾課)という。 港湾計画に詳しい東北大大学院情報科学研究科の稲村肇教授(交通計画論)は「仙台港が今のポテンシャルのままなら、向洋地区を拡張しても批判の対象にな るだけ。現計画にこだわらず、多方面から考え直すことが必要だ」と指摘する。 仙台港周辺では、大型プロジェクトが途切れることがない。岸壁の建設や仙台東部道路の工事と並行して、港の後背地では、宮城県と仙台市の共同施工による 土地区画整理事業が大がかりに進められている。 ソフト改善を 施工面積は仙台、多賀城両市にまたがる約260ヘクタール。事業期間は91年度から06年度までの16年間で、総事業費は592億円が見込まれる。流通 業務地区(79.2ヘクタール)や工業地区(49.5ヘクタール)などを造成する計画で、既に半分の工事が終わった。 県は「多くの企業を誘致し、新たな物流、貿易の拠点にする」(都市計画課)と事業の意義を強調する。 岸壁を囲む形で整備された仙台港工業用地(532ヘクタール)は分譲率が既に97.8%に達しており、土地区画整理事業には新たな土地需要にこたえる狙 いがある。問題は、工業用地の分譲率90%を達成するのに、25年間を要したことだ。事業の先行きは決して楽観できない。 仙台港を拠点にする船会社幹部は「荷主にとって重要なのは、ハード整備より港湾サービスなどソフト面の改善だ」と言う。「費用対効果」の観点から、港周 辺の大型プロジェクトを問い直す時期に来ているのかもしれない。 |
学生らが提案 宮城大事業構想学部の顧客満足ゼミの学生たちが昨年7月、JR仙台駅や仙台空港など宮城県、仙台市の「玄関口」を観光客の視点で再点検した。 出来上がったのが「『ようこそ仙台・宮城』、できていますか」と題した報告書だ。 仙台港についてもいくつかの提案をしている。例えば「仙台港の名称を『仙台常長港』に変える」「使われなくなったフェリー内に郷土料理を提供するレスト ランやホテルをつくる」「松島港との間にクルーズ船や屋形船を運航する」などだ。 仙台港は物流基地としての性格が強く、横浜港や神戸港など他の主要港と違い、一般市民から縁遠い存在になっている。学生たちも「観光客や市民に親しまれ る港にするにはどうしたらいいか」という観点で、アイデアを出し合った。 隔離され整備 指導に当たった久恒啓一教授は「仙台港はウォーターフロントという港の持ち味を生かしていないのではないか」と、問題点を提起する。 仙台港は1971(昭和46)年、新産業都市の中核施設を目指し、工業・商業港として誕生した。臨港地区一帯は現在も、都市計画法の「工業専用地域」に 定められており、レストランや遊園地など飲食施設や遊興施設は原則として建設できない。 岸壁で目に付くのは、情緒に欠ける倉庫や立ち入り禁止のコンテナヤードばかり。仙台港を「観光スポット」「デートスポット」と見る市民は、ほとんどいな いといっていい。 「仙台港は重厚長大型の港湾を目指したこともあり、市民から隔離した形で整備が進められてきた。国際貿易港へと性格を変えていく中で、市民に親しまれる よう施設配備を見直すことがあってもよかった」と、仙台市空港港湾対策室の犬飼良次室長は話す。 上がる集客力 そんな臨港地区にあって目を引くのが、キリンビール仙台工場内のビアレストラン「ビアポート」のにぎわいぶりだ。ビール製造工程を一般に公開する見学施 設の1つとして工業専用地域の用途制限をクリアし、97年4月に開業した。 年間の利用客は約8万5千人。仙台市内から車で30分と決してアクセスは良くないが、「市内から松島方面に向かう観光バスなどが結構立ち寄る」(同工場 広報担当)という。 仙台港では、観光目的の大型クルーズ船も徐々に目に付くようになってきた。一昨年までは年間5、6隻だったが、昨年はこれまでで最も多い10隻が寄港し た。県内最大のイベント会場「夢メッセみやぎ」も人気ぶりを示している。徐々にではあるが、臨港地区が集客力を発揮してきた。 「今の仙台港には、船を眺めながらお茶を飲むところもない。暴走族ばかりが集まる悪いイメージを一掃するためにも、市民が立ち寄りやすい港づくりを考え る時期にきているのかもしれない」。仙台商工会議所の津島秋夫専務理事はこう言って、意欲を見せる。 ウォーターフロントの魅力を生かすためにも、用途区域の見直しを含めた大胆で斬新な青写真づくりが求められている。 |
韓国便で摩擦 韓国・釜山港と仙台港を週1回結ぶ興亜海運(本社ソウル)運航の新たなコンテナ定期航路が、2月13日就航した。仙台港に初めて韓国航路が開設されたの は昨年5月。当初の週1便体制は12月の増便を経て、開設9ヶ月足らずで週3便体制に拡充された。 「仙台港の拠点性が一段と高まった。さらに積極的に韓国航路をPRしていきたい」(宮城県港湾振興室)と、喜びに沸く仙台港関係者の陰で、複雑な思いを 抱いているのが酒田港(酒田市)の関係者だ。 酒田港には、唯一の国際コンテナ航路として韓国航路が週2便就航している。これまで「日本海航路は酒田」「太平洋航路は仙台」をうたい文句に仙台港との 協調関係を築いてきた酒田港だが、仙台港は紛れもない競争相手になった。 酒田商工会議所の小野寺勇常務理事は「(仙台港の韓国航路3便化は)『一体どういうことだ』と言いたい。地域連携、機能分担と口で言うのは簡単だが、現 実は難しい」とこぼす。 全体でPRを 東北6県には現在、重要港湾が15港あり、そのうち八戸、仙台、秋田、酒田、小名浜(いわき市)の5港に国際コンテナ定期便が計10航路開設されてい る。韓国航路は5港すべてに就航し、運航本数は合計週13便に上る。 「なぜ仙台港までが韓国航路に血道を上げなければならないのか。横の道路網整備が進んでおり、酒田港を利用した方が合理的だ」と、東北経済連合会の福島 昭夫産業基盤部長は憤る。 東経連は1999年3月、東北の港湾、空港の利用促進を目指して「東北における新物流体系の構築に向けて」と題した報告書をまとめ、その中で「各港湾の 機能分担の明確化」を提言した。 「横浜港や東京港など京浜地区の港湾とまともに勝負するには、各港がバラバラではだめだ。東北全体で見れば航路も多い。新潟を含めた各港が連携してポー トセールスを展開すべきだ」と福島部長は訴える。 「地元に回せ」 理想と現実の溝は深く、なかなか埋まらない−。 トヨタ自動車系列の関東自動車工業岩手工場(岩手県金ヶ崎町)は、海上輸送する乗用車の8割を仙台港、2割を釜石港から積み出している。釜石市は「少し でもいいから仙台港で扱う分を地元に回してもらいたい」(野田喜一港湾振興室長)とセールスに余念がない。 他の港湾関係者からも「他県の港と連携している余裕はない」(宮城県港湾振興室)「地元の貨物は地元の港から出してもらいたい」(青森県空港港湾課)と いう本音が漏れる。 国の方針に基づいて設置されている東北地方総合物流施策推進会議(東経連、東北6県、東北運輸局など19機関で構成)は昨年11月、東北の港湾をPRす るホームページを開設した。ブロック単位では初めての試みだという。 「東北には連携できるだけの素地がある。この取り組みをきっかけに港湾の機能分担を進めたい」と福島部長は意欲を見せる。物流面でも「東北は1つ」と言 える時代が来るのは果たして、いつか。 |
取扱量は7.4倍 「(仙台港の)国際化は予想以上のテンポで進んだと言えるじゃないか」。仙台港でコンテナ貨物を扱う港湾運送業「三陸運輸」(塩釜市)の佐瀬安彦代表取 締役専務は言う。 仙台港は、初の国際コンテナ定期航路となる東南アジア航路が1995年7月に開設されたのを機に、国際貿易港として本格的に歩み始めた。 コンテナ貨物取扱量は、95年が7,365個(長さ20フィートのコンテナ換算)だったのに対し、2000年は5万4,833個。5年間で7.4倍に膨 らんだ。 「国際貿易港としての歴史が浅い割には健闘している。ただ、使いにくさが克服されたわけではない。官民が一体となって、サービスの向上など、使いやすさ を追求していく姿勢が必要だ」と、佐瀬専務は注文を付ける。 仙台港を使う港湾運送業者の間に、以前からくすぶっているのは「港湾の施設使用料が高い」という不満だ。 例えば岸壁使用料は、コンテナ船など旅客船以外の船舶を岸壁に係留する場合、船舶の重量1トン当たり5円25銭(係留時間12時間以内)。小名浜港(い わき市)は同じ12時間以内の係留で、仙台港の半値程度の1トン当たり2−3円の料金設定になっている。 ある港湾運送業者は「仙台港は、港湾施設で採算を取ろうとしているんじゃないか。港は赤字になっても、取引が活発になって地元経済が潤えば最終的に元が 取れる。長い目で見てほしい」と訴える。 格上げ生かす 他港では、港湾使用料に対する補助制度を設けているケースもある。青森県や八戸市、地元財界などでつくる八戸港国際物流拠点化推進協議会は、農産物など を陸揚げして薫蒸施設を使う場合、1回当たり5万円を港湾運送業者に補助している。 近海郵船仙台営業所の山本幹所長は「荷主や運送業者が物流ルートを選ぶ際の最大の決め手となるのはコストだ。千円、2千円の差が結構大きい。仙台港の利 用を促進するために、仙台東部道路の割引制度をもうけることなどがあってもいい」と提案する。 宮城県は財政的理由などから値下げや補助制度には消極的だが、その代わり、「特定重要港湾への格上げを生かしたい」(港湾振興室)とポートセールスを積 極的に展開する構え。 知名度高める 及川研・県港湾空港局長は、今後の仙台港の課題として@コンテナ以外の貨物の積極的な誘致A地震など災害に強い港湾づくりB塩釜港との連携強化−などを 挙げる。その上で「全国的、世界的な知名度アップに努めたい」と意気込む。 各自治体とも物流システムの強化策に積極的に取り組んでおり、地域間競争はさらに激しくなると予想される。仙台港の拠点性を高めるために、官民が一体と なって取り組むべき課題は、間違いなく増えていく。 県や地元財界でつくる仙台国際貿易港整備利用促進協議会の津島秋夫副幹事長(仙台商工会議所専務理事)は、「最大の目標だった特定重要港湾への昇格は決 まったが、協議会の役割はむしろこれからの方が大きい」と強調する。 先を見据えた具体的な戦略づくりが急がれる。 (報道部・鹿又久孝) |
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フィンを楽しみ若者でにぎわう浜辺と隣り合う仙台市宮城野区の仙台港の光景に6月、小さな変化があった。 東北初の海上コンテナ専用施設として仙台港高砂2号岸壁(水深14メートル、長さ330メートル)が完成。1号岸壁(水深12メートル、長さ270メー トル)の隣に、約65億円かけて整備された。浜辺からの眺めは、船の停泊位置が少し動いたようにしか見えないが、東北の海上物流に大きなインパクトを与え る可能性を秘めている。 「仙台港クラスでは、寄港は難しい」。1999年6月、宮城県庁と物流業界に激震が走った。北米−アジア−欧州航路を運航していた台湾の船会社「エバー グリーン」が突然、仙台寄港休止を表明したためだ。エ社は、取扱貨物量の伸び悩みに加え、港湾施設の不備を指摘した。 ◇ ◇ 当時の寄港船は4万3千トン級で、高砂1号ではぎりぎりの大きさ。しかし、欧米の船会社が8万トン級コンテナ船を次々に建造するなど大型化競争が進む中 で、同社は世界戦略として同航路に5万3千トン級の投入を決定、仙台港は航路から外される形になった。 当時の事情について、宮城県港湾振興室の早川孝室長は「世界の潮流に仙台港が対応していない現実を見せつけられた」と振り返る。 高砂2号岸壁には2002年3月までに、東京港から大型ガントリークレーンを移設する。既存のクレーンに比べ3列多い16列まで船上のコンテナを扱え、 5万トン級の受け入れが可能になる。 早川室長は「4月の特定重要港湾(特重)への昇格、今月1日の仙台東部道路全通など仙台港の利便性を売り込む上で、近年になく好材料に恵まれている」 と、積極PRの機会をうかがう。 仙台港を利用したコンテナ貨物の取扱量は順調に伸びている。20フィートコンテナに換算した輸出入量(東京・横浜港経由を含む)は98年が3万3千個、 99年が4万2千個、00年が5万6千個と、毎年30%前後の成長を遂げている。2000年5月と01年2月には韓国の船会社2社が相次いで参入し、世界 でも指折りのハブ港である韓国・釜山との間に週3便の運航が実現した。 ◇ ◇ ただ手放しで喜べない事情もある。仙台市内に事務所を持つ海運関係者は「地方港共通の課題だが、仙台港も輸出入のバランスの悪さを放置すれば、航路の将 来性は危うい」と指摘する。 米国を例に取ると、輸出はコンテナ1万3千個(2000年)で仙台港全体の取り扱いの46.2%を占めるが、輸入は6千個で24.3%にしぼむ。逆に韓 国や中国からは輸入量に比べて輸出が少ない。 東北の港湾戦略に詳しい東北経済連合会(仙台市)の福島昭夫産業基盤部長は「今は仙台港を東北全体のゲートウェーとして定着させていく時期。特重昇格を 機に、エバーグリーンの寄港休止で途絶えた欧州航路の復活などネットワーク強化が実現すれば、輸出入のアンバランスは軽減されていくはずだ」と話してい る。 |