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仙台都市圏の交通を考える
5.仙台都市 圏の高速バス   by荷主 研究者 (仙台都市圏非在住)


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目次
1.はじめに
2.仙台都市圏のあれこれ
3.仙台都市 圏の鉄道
4.仙台都市圏の路線バス
5.仙台都市 圏の高速バス
   5−1.仙台を発着する高速バスネット ワーク
   5−2.仙台〜福島間の高速バスとJRの競争
   5−3.仙台の高速バスターミナルを考える
6.仙台都市 圏の高速道路、自動車専用道路、地域高規格道路
7.仙台都市圏の都市計画道路
8.仙台塩釜港(仙台港区、塩釜 港区)
9.仙台空港
10. 仙台都市圏に関する資料


5.仙台都市圏の高速バス    

広瀬通りを走る仙台〜蔵王町の高速バス 2008.11

利府町内の利府街道にて 仙台〜気仙沼の高速バス 2009.7

5−1.仙台を発着する 高速バス ネットワーク  
 仙台を発着する高速バスは、1990年代半ばまでには青森、弘前、八戸、盛岡、秋田、山形、酒田などの路線が既に開設済みであったが、しかし札幌、広 島、福岡と比べると路線網のネットワークはそれほど密なものではなく、本数も比較的少なく高速バスがそれほど発達していなかった地域(東北地方全体とし て)と言えよう。
 しかし、1990年代後半から2000年代に入るころから急速に路線ネットワークが拡充され、仙台〜山形、福島、古川などは便数が頻発する路線も現れ始 めた。JRとの競争がマスコミを賑わしたのもこの頃で、仙台を中心とした東北地方も本格的な高速バスネットワークの時代に入ったのは、まさに2000年代 からであると言えそうだ。
 このように本格的な高速バスネットワーク構築が遅れたこともあってか、仙台は中心部に満足な高速バスターミナルが未だ未整備で、仙台駅の西口や東口、広 瀬通、青葉通などに分散していて分かりにくいことこの上ない。市当局やバス事業者、そして何よりも利用者がそのことを痛感しており、今後、地下鉄東西線開 業に合わせて一般のバスターミナルと共に高速バス乗り場の再編も行うとのことだが、本格的な高速バスターミナルの設置は具体化していない。東北地方の中心 都市を自負する仙台市ならば、早急に整備すべきインフラと思えるのだが、その議論は5-3項で行う。

 さて、仙台を発着する高速バスネットワークを纏めるに当たって、まずは仙台の高速バスの発展期とも言える1990年代後半から2000年代前半の状況を みておく。尚、仙台〜福島間の高速バスの展開については、別に5-2項で纏めることにする。
■仙台発着 高速バス快走 「安い」が一番
鉄道の4分の1の運賃も 便数2倍、収益急増
(1999年7月23日付『河北新報』夕刊、1面)

 不景気 で旅行や出張が減少する中、仙台発着の高速バスが順調に客足を伸ばしている。路線によってばらつきはあるが、新幹線と競合する幹線が特 に好調だ。人気の秘密は何といっても値段の安さ。利用者増で路線、便数も急速に拡大している。

客層が多様に
 JR仙台駅東口の高速バス乗り場。「就職活動で東京に行きます。これが5回目の状況ですが、毎回高速バスを使います」。宮城教育大4年の女子学生 (22)は大きなバッグを抱え、慣れた足取りでバスに乗り込んだ。
 「高速バスには『おじさん』というイメージもあったが、最近は若い人もよく乗りますね」。宮城交通高速バス総合案内所の大石誠さん(24)も、客層の多 様化を実感している。
 仙台〜新宿の往復切符は1万1500円と、新幹線を使った場合の6割足らず。JRバス東北の田村清隆乗合課長は「仕送りダウンやバイト難の学生さんに は、その差額は大きいようです」と、割安感が高速バスの快走につながっていると分析する。
 特にお得なのは新潟線。東北、上越新幹線を乗り継いだ場合、片道1万8570円(指定席)なのが、高速バスだと4500円と4分の1で済む。所要時間 は、バスが30分ほど長いだけ。JRバス東北の仙台〜新潟線は平成10年度、前年度比44.3%の驚異的な伸びを示し、JRバス東北全体でも、10年度の 高速バス営業収入は12.6%増えた。宮城交通も「路線バス収入が5.8%落ち込んでいるのに、2.0%の伸びを示す大健闘」(関靖夫計画課長)ぶりだ。

「酒代が出る」
 「成績が好調なのは、新潟、東京、秋田、福島など新幹線が並走している路線。交通費を浮かそうとしている人が流れてきている」(田村課長)。
 乗り換えなしというのも、大きな魅力だ。出張時には極力、高速バスを使うようにしているという青森市油川、会社員山田昌則さん(44)は、しっかり倹約 派。「寝たまま目的地まで行けて、出張旅費から酒代が出ますから」
 しかし、中には否応なく高速バスに乗らざるを得ないサラリーマンもいる。「会社の旅費計算が新幹線ではなく、高速バスを基準にしているので、バスで往復 しても、自分の懐は温かくならないんですよ」と、会津若松市の会社員(47)はちょっぴり不満顔だ。

対抗策を検討
 高速道路網の整備が進んだこともあって、仙台発着の高速バス路線は平成3年の13路線63便から、現在は22路線121便にほぼ倍増した。3月に開設さ れた福島線は今月10日から便数が倍に増え、24日に仙台〜大館線、27日には仙台〜古川線もスタートする。
 客を食われる格好のJR東日本は「対抗策を検討中」(今木甚一郎常務仙台支社長)で、今後「バス対鉄道」の集客合戦が激化しそうだ。

■仙台間の宮交高速バス好調 気仙沼
使いやすく料金割安 アクセス多様化促進
(2000年10月16日付『河北新報』25面)

 宮城交通(本社仙台市)が今年6月に気仙沼〜仙台間で運行を開始した高速バス(1日2往復)が好調で、9月末までに利用者が6千人を突破した。これまで 仙台行きの代名詞だったJR線快速をしのぐ勢いで、仙台までのアクセスに一石を投じている。
 高速バスは気仙沼からは午前6時半と8時に気仙沼営業所(鈴木清助所長)を出発する上り2便。仙台からは午後3時5分と5時55分に県庁市役所前を発車 する下り2便がある。高速バスの所要時間は約2時間半。JRの「快速南三陸」の最短2時間5分には約25分遅れるが、料金は片道1800円で410円安 い。割安になる回数券を使ったリピーターが多いという。
 始発の高速バスは、快速より約1時間15分早い午前9時ごろに仙台に到着する上、気仙沼、仙台市内で市役所前など中心部数カ所に停車する便利さもある。
 これまで、快速の午後5時54分の下り便では気仙沼駅到着が午後8時。離島大島の住民は駅から連絡船乗り場まで、市内路線バスで4区間ある上、割高な臨 時船を使わざるを得なかった。
 大島に住む主婦(40)は「午後3時5分発の高速バスに乗れば、連絡船乗り場近くで降車でき、夕方の便に間に合う。今や完全に乗り換えました」と喜ぶ。
 思わぬライバルの出現に、JR大船渡営業所(細井信所長)は「平日早朝のビジネスマン客を多く奪われた」と危機感を強める。JRは7月に運行時間につい て乗客アンケートを実施しており、「結果を考慮して、来春のダイヤ改正では朝の快速の出発時間繰り上げを検討したい」(細井所長)と意欲も見せる。
 JR線より格安の料金を設定し、快速の運行していない時間帯を狙うなど「使いやすさ」を打ち出して高速バスは好発進した。ただ、今後の安定走行には営業 面の課題があるのも確か。市民への認知度はまだ高くなく、乗客が平均18人ほどで採算ラインに少し足りない。利用者増にはさらなるPRが必要だろう。
 さらに道路環境からくる乗り心地の問題もある。高速バスは国道284号などの道路を通り、東北自動車道の若柳金成インターチェンジから高速道を使う。し かし、一部の区間の道路事情から、車体に揺れが生じてしまう。
 宮城交通では、ルート変更によって快適さの向上や運行時間短縮も狙うという。気仙沼営業所の鈴木所長は「今後、JRのほかにもバス会社が相次いで独自の 秘策をもって参入してくるはずで、互いに競い合っていきたい」と語る。
 気仙沼〜仙台間のアクセス改善は、今後ますます加速しそうだ。
(気仙沼支局・金野正之)

 さて、雑誌『バスマガジン vol.29』(2008年5月発売)に東北地方の高速バスの特集記事の掲載があった。文中では、「仙台市には、東北各地からの路線が集中している。他地 域では、地方と中央(首都圏や京阪神)を結ぶ路線は発達している一方、各地 域内での高速バス網は、九州を除くとこれほど発達はしていない。」との記述があ り、仙台を中心に発展する高速バス網をクローズアップしている。内容としては、実際に主要路線の高速バスの乗車レポートや各事業者ごとの動向、便数や輸送 人員などのデータも纏められ資料的価値が高い。写真が多数載せられているのも楽しい。
 と言うことで、この特集に敬意を表しつつ、下記のような表を作成した。2006年度の輸送人員が多い順に並べてみた。但し、経由地が同じでも行き先が異 なるため、別路線になっている発着地がある点に注意が必要。(郡山と郡山・須賀川、鶴岡・酒田と鶴岡・酒田・本荘、気仙沼・大船渡と気仙沼、横手・大曲と 横手・湯沢)
 また首都圏など東北地方以外の発着地の高速バスや仙台〜新庄・村山、鳴子、加美、大衡、村田・蔵王などの「特急・急行バス」と呼称されている都市間バス (高速道路を経由していないものもある)も東北運輸局が高速バスとして扱っておらず載っていない点も注意が必要。これらは別途、作表が必要である。

■仙台を発着する東北圏内の高速バス(便数は2009年4月現在)
発着地
運 行事業者
2006 年度
輸送人員
1 日あたり
輸送人員

1 日あたり
便数(平日)
運 行開始
備   考
山 形 宮城交通
山交バス
1,281,717 3,512 75往復半 1981年12月8日(一般 道)
1989年12月22日(高速道)
運行開始時は10往復。
2004年1月28日より44往復から60往復に増便。
2005年1月27日より平日68往復に増便。
2007年4月1日より平日72往復に増便。
福 島  宮城交通
JRバス東北
福島交通
740,489 2,029 45往復 1999年3月16日
運行開始時は6往復。
1999年7月10日より12往復。
2000年4月1日より土日は16往復半。
2001年8月1日より平日18往復、土日23往復半。
2005年4月1日より30往復から38往復に増便。
古 川  JRバス東北
ミヤコーバス
487,353 1,335 41往復半
1999年7月27日(JR バス)
2005年7月1日(ミヤコー)
運行開始時はJRバス東北が6往復。
2001年12月1日よりJRバス東北が17往復。
2009年4月1日よりJRバス東北は5往復増便、ミヤコーは1便増便し、
JRバス東北31往復、ミヤコーバス10往復半。
郡 山
宮城交通
JRバス東北
福島交通
268,839 737 22往復
2000年3月15日
運行開始時は6往復。2001年8月1日より12往復に増便。
盛 岡
宮城交通
JRバス東北
東日本急行
岩手県交通
岩手県北自動車
249,328 683 15往復
1989年9月21日

一 関
東日本急行
岩手急行バス
179,596 492
19往復
1999年4月1日
運行開始時は5往復。
鶴 岡・酒田
宮城交通
山交バス
庄内交通
149,814 410 13往復
1989年8月14日(一般 道)
1991年8月1日(高速道)
2001年8月1日より7往復から10往復に増便。
秋 田
宮城交通
JRバス東北
秋田中央交通
149,411 409
10往復
1990年4月19日(一般 道)
1997年7月24日(高速道)

石 巻・女川
ミヤコーバス
127,255 349 15往復
(うち女川   1往復)

1998年8月1日(石巻)
2002年3月25日(女川)
3往復は石巻専修大学行き。
栗 原
東日本急行
122,874 337 10往復
2002年12月1日

会 津若松
JRバス東北
会津乗合自動車
107,957 296 8往復 1998年7月25日
運行開始時は4往復。2000年12月1日より6往復に増便。
弘 前
宮城交通
JRバス東北
弘南バス
107,760 295 9往復
1989年6月16日
2000年8月1日より3往復から6往復に増便。
郡 山・須賀川
宮城交通
JRバス東北
福島交通
73,854 202
6往復
2006年3月1日

登 米
東日本急行
ミヤコーバス
73,017 200
16往復
2004年5月1日
旧迫町。運行開始時は東日本急行単独で8往復。
2005年7月1日より宮交登米バス(現ミヤコーバス)が6往復で参入。
青 森
宮城交通
JRバス東北
弘南バス
十和田観光電鉄
69,850 191
6往復
1989年10月2日
2001年8月1日より4往復から6往復に増便。
米 沢
JRバス東北
山交バス
65,364 179
6往復
2002年3月20日
運行開始時は4往復。
気 仙沼・大船渡
宮城交通
岩手県交通
54,801 150
4往復
2001年12月21日

い わき
JRバス東北
新常磐交通
53,952 148 4往復
1999年12月20日
1995年に運行開始したが1999年3月採算割れで廃止。
その後パークアンドバスライド導入して再開。『河北新報』99.12.10
江 刺
JRバス東北
岩手県交通
53,884 148 4往復 2000年12月1日

一 迫
東日本急行
44,194 121 5往復 2005年3月1日

八 戸
宮城交通
JRバス東北
南部バス
十和田観光電鉄
43,761 120
4往復
1989年9月27日

上 山
宮城交通
山交バス
43,367 119 7往復
2006年4月1日

北 上・花巻
JRバス東北
岩手県交通
40,179 110
3往復
1995年10月1日

鶴 岡・酒田・本荘 
宮城交通
羽後交通
庄内交通
38,921 107 3往復
2002年7月27日

と よま
東日本急行
38,427 105
5往復
2005年11月16日

気 仙沼
ミヤコーバス
32,732 90
3往復
2000年6月15日

鹿 角・大館
JRバス東北
秋北バス
29,111 80
3往復
1999年7月24日

福 島競馬場
宮城交通
JRバス東北
福島交通
26,891
2往復
2000年4月1日
運行日は競馬開催日と場外馬券発売日のため、
1日あたり輸送人員不明。
横 手・大曲
JRバス東北
羽後交通
25,343 69
2往復
1998年12月1日

横 手・湯沢
JRバス東北
羽後交通
24,219 66
2往復
1993年4月13日(一般 道)
1998年12月1日(高速道)

遠 野・釜石
宮城交通
岩手県交通
19,515 53
2往復
2003年4月26日

能 代
秋北バス


1往復
2007年3月23日
《合 計》

13,142
371往 復


『別冊ベストカー BUS magazine vol.29』2008年5月発行、「宮城県仙台市を中心に発達する東北圏内の都市間高速バスネットワーク」の資料をベースにその他資料を用いて筆者作 成。


5−2.仙台〜福島間の高速バスと JRの競争  

 仙台〜福島間の距離は約80km、仙台〜山形間が約60kmであるので、山形よりは福島がやや遠いという位置になるが、高速道路ならば1時間、新幹線な らば30分程度の距離であり、県庁所在地同士としては比較的近いと言えるのではないか。しかし仙台と山形は仙山都市圏として古くから交流が盛んであったの に比べ、仙台と福島は不思議とそれほど 結び付きが強くなかったようだ。その1つの証拠として、比較的近年まで高速バス路線すら開設されていなかったのだ。仙台と福島の両都市圏の結び付きを飛躍 的に高 めたきっかけといえる仙台〜福島間の高速バス路線の開設とそれに伴うJRの対応による競争について新聞記事を基に纏めてみたい。

■仙台〜福島間の各交通機関の輸送概要

快 速「仙 台シティラビット」
普通列車
高 速バス
新 幹線
運 転本数
平 日3往復
土曜・休日5往復
13 往復(直通のみ)
39 往復(日中20〜30分毎)
下 り43本
上り44本
所 要時間
63〜76 分
80 分強
70 分(仙台駅前〜福島駅東口)
21〜28 分
運  賃
1,280 円
1,280 円
1,000 円
3,580 円(通常期指定席)
『JTB時刻表』(2011年3月号)などから作成

■高速バス参入、鉄路と乗客争奪戦
(1999年3月2日付『河北新 報』26面)

 バス か、鉄道か−。福島と仙台の間の「公共の足」をめぐって今月、利 便性競争が始まる。
 宮城交通、ジェイアールバス東北、福島交通の3社は共同で16日から、福島〜仙台間で高速バスを運行する。東北運輸局がこのほど3社に運行を許可した。 同区間での高速バス運行は初めてとなる。
 運行は1日6往復(各社2往復)。東北自動車道を経由して仙台駅と福島県庁を1時間16分で結ぶ。全席自由で片道運賃は大人1,000円(小学生以下 500円)となっている。
 一方、JR東日本仙台支社は、東北線福島〜仙台駅間で毎週日曜日に1往復運転している快速列車を、6日から土曜日にも運転し、在来線用往復割引切符を新 たに発売する。
 福島〜仙台間で高速バスが運行されることへの対抗策だ。快速列車は午前8時41分福島発、午後4時40分仙台発。途中の停車駅は伊達、白石、大河原、岩 沼の4駅で、所要時間は約1時間10分。6月下旬まで運転する。
 同区間での在来線用往復割引切符は大人1,800円で2日間有効。通常料金に比べ約3割安く設定されており、普通列車も利用できる。発売期間は6日から 来年3月末まで。

■「福島−仙台」線はドル箱 JRと高速バス 乗客獲得競争が加速
(1999年8月13日付『河北新報』22面)

 福島市 〜仙台市間で、高速バスとJRが熱いサービス合戦を展開してい る。バスが7月10日から便数を2倍に増やしたのに対抗し、JRは13日から割引回数券の新商品「福島仙台トクトク回数券」を発売する。双方とも「集客力 が弱くなった福島市から、仙台市へ流出する買い物客がここ数年増えている」として、客獲得に自信を見せている。

 福島交通(本社福島市)、宮城交通(仙台市)、ジェイアールバス東北(仙台市)の3社は7月10日から、福島〜仙台間の高速バスを従来の6往復から12 往復に倍増させた。
 福島交通によると、同区間の高速バスは3月16日に運行を開始。1便当たりの乗客は採算ラインの21人を上回る平均30人と好調。7月の便数倍増後も平 均28人で、「利用者は確実に増えている」(福島交通)という。
 一方、JRは3月から、在来線専用の往復割引切符を発売。さらにバスの増便に対抗する形で、13日からは新幹線の乗車券にも使える割引回数券の販売に踏 み切る。
 JR東日本福島支店は「従来の往復割引切符も好調だったが、有効期間を広げ、新幹線も利用できるようサービスを向上させた」とPRする。
 双方はサービス内容でも、しのぎを削る。バスの場合、料金は大人片道1,000円で所要時間は70分。予約なしで乗車でき、必ず座席を確保する。「座れ ないお客さんが一人でもいた場合、基本的にはもう1台バスを出す」(福島交通)という徹底したサービスぶりを強調。福島市内は4ヵ所から乗車でき、仙台で も買い物に便利な広瀬通一番町で降車できるのもメリットだ。
 これに対し、JRの新商品は、4枚つづりの乗車券の回数券で大人が3,400円。片道当たり850円と通常料金1,280円に比べ430円安い。特急券 (1,790円)を購入すれば、所要時間が70分の在来線に対し、25分に短縮できる新幹線の自由席も乗車可能だ。
 バス、JRとも「主婦や若い女性を中心とした福島からの買い物客」が主なターゲット。福島市中心市街地が空洞化が進行し、買い物客が仙台の商店街に目を 向けるようになっている変化が、仙台−福島の新たな旅客輸送需要を生んでいる。サービス合戦の相乗効果で、さらに需要が拡大することも期待できるという。

■サービス合戦 激化が奏功 バス JR 利用、ともに増加
(2000年1月8日付『河北新報』9面)

 福島市 〜仙台市間の高速バスとJRが好調だ。昨年3月に高速バスが運 行を始めて以来、バスとJRのサービス合戦が激化、それが利用しやすい環境を生み、バス、JRともに利用客が増加している。昨年12月には、バスがこれま での最高の臨時増便に追われる一方、JRも週1便だった快速列車を毎日運行するなどし、年の瀬に多くの福島市民らが、買い物などで仙台市へと出掛けた。空 洞化に直面している福島市中心市街地の集客力低下に、拍車が掛かるのを危惧する声も上がるほどだ。(福島総局・玉応雅史)

競り合う両者
 高速バスは福島交通(福島市)、宮城交通、ジェイアールバス東北(ともに仙台市)の3社が、昨年3月に共同運行を始めた。1日6往復でスタートしたが、 大人片道1,000円という割安感が受けて予想を超える客数があり、7月には12往復に増便。1便当たり平均乗車数は、採算ラインの21人を上回る26− 27人台の好調な運行が続いている。「確実に乗客は増えている」(福島交通)という。
 JRも昨年3月、福島−仙台間で在来線専用の往復割引切符を発売した。さらにバスの増便に対抗する形で、8月には新幹線の乗車券にも使える割引回数券の 販売に踏み切った。「割引切符、回数券とも好調。買い物などで仙台へ行くお客さんは、ここ数年で多くなっているようだ」(JR福島支店)とみる。
 サービス内容でも、双方は激しく競り合う。バスは所要時間70分。予約なしで乗車できる上、座席を必ず確保する。一人でも座れない場合、もう1台を出す という徹底ぶりだ。福島市内は4ヵ所で乗降でき、仙台市内は買い物に便利な青葉区一番町で乗降できる小回りのよさを強調する。
 これに対しJRは、4枚つづり回数券で、大人片道850円と通常料金より430円安く、バス料金より低く抑えた。新幹線特急券を購入すれば、所要時間 25分の新幹線自由席を利用できる。「グループや家族連れだとかなりお得」とPRする。

うれしい悲鳴
 サービス合戦によって昨年12月には仙台行きの乗客がぐんと増えた。バスは、平均乗客数27.8人と、増便後の最高を記録。月平均10台程度だった臨時 増便も、47台と大幅に増えた。それでも車両の都合がつかず、「乗り切れなかったお客さんにご迷惑をかけた」(福島交通)とうれしい悲鳴を上げている。
 JRも12月4日から、週1往復だった快速列車(所要時間64分)を毎日運行。福島発が午前9時、仙台発が午後4時と買い物に便利な時刻に設定したこと もあり、前年の3〜4割増とこちらも好調だ。
 バス、JRとも「若い女性を中心とした買い物客を主力に、さらにサービス向上を目指したい」と意気込んでいる。

活性化着実に
 消費者が仙台市へ流出している現状に、福島市中心市街地の商店街では「買い物客が福島を素通りしてしまう」「JRとバスの競争が激しくなれば死活問題 だ」などと危機感が強まっている。
 福島市の中心市街地では、郊外に林立するショッピングセンターにおされ、昨年9月に大型スーパーが撤退した。動向に敏感な全国チェーンのファーストフー ド店も閉店するなど空洞化が進んでいる。地下駐車場の建設、無料巡回バスの試験運行など行政、民間が互いに活性化策を模索するが、にぎわいを取り戻す決め 手になるのかどうか。
 福島市商工会議所の本田正博振興部長は「福島と仙台では、もともと都市集積に差がある。時間距離が短縮すれば、モノや情報が多い大都市に人が流れるのは 一般的なこと」と冷静に受け止める。一方で、「中心市街地活性化に即効性を求めるのは難しい」とし、「現在取り組んでいる活性化策を着実に進めていくしか ない」と話している。

以下作成中。


5−3.仙台の高速バスターミナル を考える  

 仙台を発着する高速バスが年々増強されている現状は先に述べたが、仙台には他都市で見られるような高速バス用のバスターミナルが存在しない。そのため乗 り場が仙台駅の西口の複数の場所と東口に分散しているおり分かりにくいことこの上ない。当然、以前からこのことは問題視されており、仙台駅東口駅前広場整 備に併せ東口に集約する構想が出てきた。しかしアクセスに難があるためか一本化は実現せず相変わらずバラバラに分散した状態である。ただ仙台駅東口は高速 バスを全て集約するには狭すぎると思われる。
 一方、宮城交通の高速バスの総合案内所と宮交パーキングがあった広瀬通沿いの場所が再開発されることになり、今秋には「仙台中央広瀬通ビル」と いう高層ビルになる。高速バス乗り場もビルの一部をセットバックさせて専用バスベイをつくるということで、広瀬通の路上に駐車して乗車するという貧弱で情 けないバス停からは卒業し、ある程度まともなバスターミナルになりそうだ。同ビルは仙台駅のペデストリアンデッキを延長させてつなげるとのことで、アクセ ス面でもかなりの改善がされる。しかし、仙台駅の西口と東口に高速バス乗り場が分散している状況は改善されないままであり、総合的な高速バスターミナルの 必要性は変わらないと考えていた。
 そういった状況の中、仙台市などを中心に仙台駅周辺の交通結節機能の抜本的な改善を意図し、路線バス、高速バス、タクシーなどの乗り場を大再編させる検 討が始まった(仙 台駅周辺地区の交通環境改善のための検討)。南町通や青葉通の一部も活用するようで大胆な計画を期待したい。仙台駅前の再開発計画とも整合性を取 る必要があるだろうし、この構想は簡単にはまとまりそうにないが・・・。

■高速バス乗り場 仙台駅東口に集約 分散による不便を解消
望まれる広い待合スペース アクセスに課題も
(2001年2月10 日付『河北新報』夕刊、1面)

 JR仙 台駅周辺に分散しているため、利用者から「分かりにくい」と不評だった高速バス乗り場が、1ヵ所にまとまりそうだ。仙台市は2002年度までに計画をまと め、04年度までに、高速バスの発着所を含むバスプールを駅東口に整備する予定。完成すれば、分かりづらさの問題は解消し、JRとの乗り継ぎも便利にな る。しかし、高速道までの所要時間が増えるほか、十分な待合スペースが確保できるかどうかなど、課題もある。東北の高速バス網の拠点にふさわしいバスプー ルとなれるだろうか。(報道部・野仲敏勝)

恒常的渋滞起こす
 仙台市の案では、JR仙台駅東口の「ヨドバシカメラ」寄りに、9台分の乗り場があるバスプールを整備する。西口と同じ屋根付きの構造で、このうち4台分 が路線バス、2台分が定期観光バス、3台分が高速バスに充てられる。
 宮城県内のバス会社でつくる県バス協会が、高速バス専用の乗り場設置を、市に要望していたのが実った形。駅周辺にバラバラにあった高速バスの発着所がこ れで、ようやく一本化されることになる。
 現在の中心部の高速バス乗り場は、@広瀬通(宮城交通高速バス総合案内所前)A駅東口B駅西口バスプールC青葉通(仙台ホテル前)−などに分散している ため、乗り場を間違える利用客が少なくない。また、広瀬通の高速バス乗り場は、道路の1車線をバスが恒常的にふさぎ、渋滞の原因にもなっている。

当面は迂回ルート
 仙台発着の高速バスは、1990年ごろから急増。バス業界にターミナルを建築する財政的な余裕が無かったため、乗り場が分散し、路上がターミナル代わり になった。こうした弊害を一気に解決できると、東口バスプールへの期待は大きい。
 しかし、デメリットもある。高速バスの起点が東口に移るため、東北自動車道仙台宮城インターチェンジまでの距離が遠くなり、渋滞時などは、広瀬通を起点 とするより10分以上、高速道へのアクセスに時間がかかることになる。
 市には、仙台駅の東西をつなぐX(エックス)橋の架け替え計画もあり、完成すれば東口と広瀬通はグッと近くなる。しかし、市の都市計画道路見直しのあお りで計画は遅れており、最悪の場合では15年度の開通。当分は仙台駅南側を迂回するルートを取ることになりそうだ。

JRとの交渉次第
 十分な広さの待合室がつくれるかどうかも、計画づくりの課題。東口バスプールは屋根がかかるだけの吹きさらしの構造のため、市は待合室を作るためのス ペースを県バス協会に提供する予定だが、場所はJR東日本の所有地。「どのくらいの広さが確保できるかは、今後のJRとの交渉次第」(道路部計画課)とい う。
 県バス協会の我妻菊雄業務委員長(宮城交通常務営業部長)は「高速道のアクセスや待合室の整備なども、市などと十分に話し合いたい。携帯端末を利用した 予約システムの開発などを検討して、利用者が使いやすい高速バスにしたい」と話す。
 市は県バス協会やJR東日本と協議を続け、バスプールを着工する02年度までに計画をまとめる。高速バス乗り場を一本化するまたとない機会だけに、利用 者が満足できる高速バスの環境づくりが期待される。
 全国のバスと鉄道事情に詳しい東京在住のライター、種村直樹さん(64)は「便数の増加で、高速バス乗り場が混み合うのは全国共通の悩み。待合室などは 広さにゆとりを持ってつくるべきだ。市内バスも含めた路線や乗り場の分かりやすい表示も検討してほしい」と注文している。
仙 台発着の高速バス 東北運輸局の調べでは、1980年運行開始の東京(浜松町)便を皮切りに、東北各都市や大阪、名古屋、金沢など27路線 が運行。99年度の利用者数は延べ約198万人。特に山形便(約68万人)、福島便(約22万人)は仙台を訪れる買い物客に人気が高い。安価な運賃と快適 なバスの居住性が受けており、東北地方の高速道路の整備が進んだ効果もあって、利用者、路線数とも増えている。

■都市間高速バス乗り場を拡充へ 宮城交通
(2003 年07月15日付『河北新報』)

 宮城交 通(本社仙台市)はこのほど、仙台市青葉区の広瀬通にある都市間高速バス乗り場(総合案内所)を拡充することを決めた。面積を2.8倍に広げるほか、喫茶 スペースなどを設けるなどしてサービスを充実させる。今月下旬から工事に入り、10月初旬の完成を目指す。

 計画によると、従来の案内所をほぼ2倍に広げ、さらに約20メートル東の空きフロアに待合所を新設する。面積は現在の140平方メートルから、2カ所合 計で約400平方メートルに拡大する。
 これに伴い、待合座席数も案内所、待合所合わせて約90と、現在(約20)の4.5倍となる。

 待合所には喫茶スペースを設け、焼きたてのパンやコーヒーなど軽食を提供する。発着状況が一目で分かる大型テレビ掲示板も両方に設置する。総工費は1億 円弱を見込む。

 総合案内所の充実は、高速バスの利用客の利便性を高めるのが狙い。現在は宮城交通のほか、東北各地のバス会社が乗り入れており、利用客は1日約6000 人。
 宮城交通の岩田一雄専務は「お客さまが快適にバスを待てる環境を整備したい」と話している。

■高速バスのネット化/仙台はハブ機能の整備急げ
(2004 年07月26日付『河北新報』)

 「え、 新潟行きはここじゃなく東口!? 何分で行けます?」
 会社員風の男性は腕時計を見るとバッグを抱え駆けだした。
 JR仙台駅西口、広瀬通の宮城交通・高速バス待合所前で先日早朝見た場面だ。並んだ客の列から同情の声が上がった。
 「大丈夫、走れば間に合う。全く、一目で分かる総合案内板さえないからね…」

 高速バスは、割安な料金と確実に席を確保できる利便性が新しい交通需要を掘り当て、急速に路線と便数を増やしてきた。現在は日本の主要都市をほぼネット 化し、新幹線の長距離移動客も一部奪う勢いで、中距離交通機関として定着した。
 仙台駅前では平日36路線、337便が発着する。東北の主要市と結ぶ路線が主だが、長距離直行便も大阪を最長に東京、名古屋、金沢、群馬(藤岡)などま で延びる。

 今では仙台駅前は高速バス網の東北の大結節点だ。首都圏から出張して仙台で一仕事し、ついで山形や大船渡などに向かう場合、仙台までは新幹線、仙台から は高速バス―という選択が合理的だ。釜石から会津若松に行くなら高速バスを仙台で乗り換える利用になるだろう。

 新幹線と高速バスの組み合わせで仙台駅前はハブ機能(主路線と支線を結節する軸の機能)を担い、高速バスネットの発達でこの機能のさらなる強化を求めら れているということだ。
 それが冒頭のように路線の始発点さえ周知されていない状況では、100万都市の交通政策としてお粗末すぎる。

 広島、福岡、新潟などには「バスセンター」がある。バス会社の施設だが、中枢都市として重要なハブ機能を担っている。
 一方、仙台には類似施設はない。始発点は路線の新・増設ごとに仙台駅前にはり着く間に合わせ型。広瀬通・宮交前と東口広場が主な始発点だが、青葉通、西 口バスプールなどにも広がり、とにかく分かりにくい。

 実は仙台市は駅東口の整備に併せて高速バス用に9バース(発着場)を確保、今月末から運用を始める。しかし表口に当たる西口・広瀬通とつなぐ都市計画道 路の整備は後回しだ。このため新バースからの始発では高速道に乗るまで時間がかかり、バス各社は新規利用を敬遠し、始発点の集約は進まない。
 仙台の中枢機能を考える場合、これは気長に都市計画道の完成を待っていていい問題ではないはずだ。環境やエネルギー問題からもマイカーからバスなどへの シフトは今後の方向であり、ハブ機能は中枢都市として当然提供すべきサービスだ。

 しかし、一般路線の乗客激減でバス会社が体力を失った現状では、民間に施設整備を期待するのは現実的ではない。この種の施設は今は都市装置として整備さ れるべきだ。たとえば広島では市がバスセンターに支援出資し、第三セクター方式で運営している形が参考になろう。
 仙台にバスセンターを新設するなら宮城インター近くが好都合だ―といった提言も聞く。
 仙台がぜひ充実すべき都市装置だ。早急な整備を求めたい。

■高速バス網の拠点が完成 宮交センター、仙台にオープン
(2009 年10月07日付『河北新報』)

 宮城交 通(仙台市)の高速バス乗り場「宮交仙台高速バスセンター」が6日、仙台市青葉区中央1丁目に建設中の「東京建物仙台ビル」1階にオープンした。ビル脇の 仮施設を移設、12月1日のビル開業に先行し、営業を始めた。

 センターの床面積は約330平方メートル。乗車券発売窓口、自動券売機などを設置し、待合室には54人分の座席を設けた。広瀬通沿いの歩道がビル側に セットバック(建物後退)した部分に幅3メートルのバスレーンを設け、渋滞緩和を図った。JR仙台駅とビル2階が直結するペデストリアンデッキを建設中 で、11月末に完成する予定。

 オープン記念式典で、宮城交通の佐藤健社長は「高速バス網の拠点となって、東北と仙台の交流活性化のお役に立ちたい」とあいさつした。
 バスセンターでは東北各地、関東、関西などと往復する17路線で1日約140便が運行し、約5000人が利用している。

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