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仙台都市圏の交通を考える   by荷主 研究者 (仙台都市圏非在住)
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早朝のJR仙台駅構内 左:E721系、右:701系  2007.5


混雑する愛宕上杉通り・五橋駅付近、手前が仙台駅方面  2007.2

目次
1.はじめに
2.仙台都市圏のあれこれ
3. 仙台都市 圏の鉄道
 3 −1.仙台都市圏の鉄道網
 3 −2.仙台都市圏のJR線
 3 −3.仙台市営地下鉄
 3 −4.仙台空港鉄道
4.仙台都市圏の路線バス
  4−1.仙台都市圏の路線バスの状況
  4−2.仙台都市圏の路線バス の改良・改善について
  4 −3.仙台都市圏のバスターミナル(路線バス)
5. 仙台都市 圏の高速バス
   5−1. 仙台を発着する高速バスネッ ト ワーク
   5− 2.仙台〜福島間の高速バスとJRの競争
   5− 3.仙台の高速バスターミナルを考える
6.仙台都市 圏の高速道路、自動車専用道路、地域高規格道路
   6− 1.仙台西道路
   6−2.仙台南部道路
   6− 3.仙台東部道路
   6 −4.仙台北部道路
   6 −5.国道4号線白石〜古川の改良について
7.仙台都市圏の都市計画道路
 7−1.北四番丁大衡線
 7−2.元寺小路福室線と仙台東道路
 7 −3.川内南小泉線
 7 −4.宮沢根白石線
8.仙台塩釜港(仙台港区、塩釜 港区)
 8 −1.特定重 要港湾昇格の前後の仙台塩釜港
 8−2.仙台塩釜港の現況
9.仙台空港
 9−1.仙台空港鉄 道と他空港のアクセス鉄道の比較
10.仙台都市圏に関する資料


新寺通と東北本線、東北新幹線の三重立体交差 2007.2

仙台市営地下鉄南北線 富沢駅 2012.3


1. はじめに  

 私は大学進学から就職までの4年間を故郷の静岡県から遠く離れた仙台市内で過ごした。時期で言うと1998年4月から2002年3月末にかけてだ。仙台 にはそれまでに 旅行で訪れ た※1こ とはあったもの の、それほど深い印象や思い入れがあっ たわけではない。むしろ東北地方各地の鉄道貨物輸送の 調査をしたいという極めて趣味的な動機で私は自分の進路を選んでしまったのだ。大学入学後にインターネットの世界を知り、鉄道貨物関係の掲示板への 書き込みを初めてし た時のハンドルネームが「荷主研究者」だったのだが、それ以来同じハンドルネームを10年以上使い続けていることになる。私は、幼いころより兄(とはずが たり)の影響もあって 鉄道好 きではあったのだが、中学3年生も終わる頃になぜか鉄 道貨物輸送への興味に火 が 点いた途端に、それまでの時刻表を読みふけって全国各地に「乗りつぶし」に行くようなことには一切興味が無くなり、鉄道貨物輸送の調査にどっぷり浸かる日 々になったのだ。 最初は「専用線の 雰囲気」に惹かれたところから始まり、やがて「貨物駅の配線」に凝り、貨車に嵌ることなく「荷票」の存在に気付いたことから「荷主」というディープな世界 に迷い込んで荷主研 究者と化していくのだが、それ が高校2年生くらいだろうか。実際に「荷主研究者」とインターネット上で自称するのは、大学入学後のことだが、大学入試の機会を利用してコンテナ列車の荷 票調査に本格的に取り組んだこともあって(不真面目な受験生との謗りは免れないだろう・・・)、仙台での生活が始まる頃には荷主研究者としての練習を終え デビュー待ちしているような段階だったのだ。何しろ高校生の当時はインターネットのよう な情報源が無く、鉄道雑誌や書籍、地図だけが頼りだったので、そうなると東北地方には魅力的な 臨海鉄道や貨物駅が点在することは分かるのだが、実際どうなっているのかがよく分からないだけに、「行きたい!」という気持ちが日に日に強まり、志望校も そ れで決めてしまったので、首尾よく大学に合格した時点でそれら貨物スポットをどう攻めていこうかとそればかりが頭の中を占めていた。そういうことなので決 して仙台が元々好きだったり興味があったりしたわけではないのだ。

 ところがいざ仙台での日常生活が始まってみると、原付に乗り出したこともあって、仙台市内やその周辺に出かけることが容易であり、とは言っても最初は当 然、鉄道貨物的なスポット;例えば 基本≠フ宮 城野貨物駅や憧れ≠フ仙台臨海鉄 道、そして魅惑≠フ岩沼駅※2な どに早速出かけていたのだ が、土地勘を養うべく気の向くままに仙台市内を走り回ったりするうちに「仙台っていいなー」と自然と思うよ うになってきたのである。思い返すと仙台臨海鉄道に行くために初めて産業道路※3を 原付で走った時に、何の予備知識も無くあの国道4号線との巨大な平面交差、六 丁目交差点※4に ぶつかっ て「何じゃこりゃー」と思ったり、それを越えたら今度は道路中央の幅広い中央分離帯部分を利用して橋脚を延々と工事していて、「なるほど仙台東部道路は既 存の道路の真上に通すんだ」と静岡県出身の田 舎者らしく感心したり、その辺から道路の魅力に嵌ったような気がする。

 原付以外にも バスや地下鉄に乗る※5こ とも多く、都市内の様々な交通機関を 自ら体験することで自ずと都市計画や交通問題に興味を抱くことになった。故郷では日常の移動は自転車か親の運 転するクルマが殆どだったので日常生活における公共交通機関の存在感というものが希薄だったのだが、身近な存在としてバスや地下鉄を意識する生活 に変わったのだ。 そもそも元々「鉄道好き」であっ たし、地図も好きだったし、ドライブや散歩を含めフィールドワーク的なことも好きだったということから、「街づくり」に興味を持つ素地ができていたと言 え、そういった観点で 交通機関を捉えていくようになるのは、自然な流れだったと思う。また私が仙台で暮らしていた間に、例えば仙石線地下化工事が完成したり、仙台東部道路の仙 台東IC〜仙台港北ICや仙台南部道路の山田IC〜仙台南ICが 開通したり、地下鉄東西線や仙台空港アクセス鉄道の計画が具体化したりと交通インフラの整備が着々と進んでいたのも興味を惹かせた要因になったのだろう。

 そんなこんなで気が付けば仙台という街の魅力にどっぷりと浸かり、鉄道貨物輸送の研究と並行して地下鉄、バス、JR、道路、港湾、空港・・・といった交 通の諸問題を色 々と考えるようになっていた。当時は地元ブロック紙の河北新報を毎朝読み、図書館や市役所に出かけては目ぼしい資料を蒐集し、そして現地に行って目で確か める※6と いったことをしていた。残念なが ら写真は鉄道貨物のようには撮ったりは殆どしなかったので当時撮影した写真はあまりというか、ほぼ無いに等しい。ただ脳内で様々な問題意識を持つように なったし資料類はけっこう集めたと思う。

 静岡県の中小都市で生まれ育った自分にとって、仙台はちょうど良いくらいの都会だった気がする。それは生活する上でという意味でもあるし、都市圏の交通 を考える時にも東京や大阪では全体を把握しずらく身近な問題として 捉えきれなかったかもしれないという意味でもある。仙台で時間のある学生時代を過ごすことができたことで、それまでに醸成していた交通問題に対する興味が 開花したような気がす るのだ。ただ副作用として仙台に対して感情移入しやすくなってしまったため、札幌や広島、福岡といった所謂「札仙広福」の差異を比較したくなる癖までもつ いて しまった。冷静に考えると福岡は既にこれら4都市から頭1つ飛び抜けて名古屋クラスの都市に近づいていると思うのだが、その辺の議論を始めると交通の議論 から ズレてキリがなくなるので、いずれ項を設けて考えてみたい。

 とにかくこのサイトは体系的、学際的に交通問題を考えることが目的ではないし、そんな大袈裟なものを作るほどの能力は残念ながら無い。ただ徒然なるまま 興味がある ままに纏めてみたいというのがこのサイトを作った動機だ。もちろん問題提起や問題解決の方法も示したいが、単なる現場レポートだけになってしまうこともあ るだろう。むしろはっきり言ってその方が多くなるかもしれない。自分の好きな道路を興奮しながら撮影した写真を公開する、というようなページばかりになる かもしれない・・・。予めその点は断っておく必要があるだろう。
 さて現在、私は横浜市に在住しており、仙台市を訪れることは容易ではなく、情報源は専らインターネットとなる。不本意ではあるがやむを得ない。もちろん 仙台を離れた2002年以降に出張やプライベートで仙台都市圏を訪れて調査はしたし、今後もタイミングを見計らって仙台都市圏を訪れ現場取材をしていくの で写真は随時更新されていく筈だ。


(※ 1)中学生3年生の夏休みに友人達と乗り つぶし目的の東北旅行をしたが、その 際に仙台に宿泊。その時は地下鉄の仙台〜勾当台公園に乗車したことくらいしか印象に残っていない。
(※ 2)岩沼駅には大昭和製紙(現日本製紙) の大 規 模な専用線があったり、日 清製粉が最期のホキによる小麦粉輸送をしていたり、液化アンモニアが到着していたり、とにかく当時は興味深い駅であったのだ。
(※ 3)新寺通(県道荒浜原町線)から県道仙 台塩釜線のこと。五橋交差点から暫く は4車線で街路樹が整備された落ち着いた通りだが、宮城野陸橋に近付くと当時は陸橋部分が変則3車線のため前後は渋滞しがち、宮千代交差点前後はセット バックしつつも狭苦しい 4車線、そして急に堂々たる6車線になるという変化に富んだ道路で、とても面白かったのだ。
(※ 4)直進3車線、左折2車線、右折2車線 の片側7車線に圧倒された。まぁこん な交差点が平面っていうのはおかしくて早急に立体交差化すべき。
(※ 5)当時は太白区西の平に住んでいて、中 心部に向かう時は気が向くと長町南駅 までバスで行き地下鉄に乗り換えるということをしていた。八木山経由の仙台中心部までの直通バスよりも高いし早いのかも疑問だが、経営支援的な気持ちでわ ざわざ利用していた。
(※ 6)特に印象深いのが、(都)鶴ヶ谷国見 線の南光台の三角形の交差点用地。現在は用地の大部分を利用してみやぎ生協の店舗が開店しており雰囲気 が全く変わってしまっ たが、当時は雑草が伸び放題の巨大な空き地が住宅密集地のど真ん中に広がっていて、個人的にかなりインパクトのある景色だった。



2. 仙台都市圏のあれこれ   


青葉通と東二番丁通の交差点から仙台駅方向を望む 2008.11

仙台駅から青葉通を望む 2012.3

@仙台都市圏の捉え方
 仙台都市圏とは、当たり前のことだが仙台市を中心とした都市圏のことである。仙台市は人口104.6万人(2010年10月現在)を抱える東北地方最大 の都市であり、その周辺には 塩竈、多賀城、名取、岩沼、富谷、利府などの市町村が取り囲み仙台都市圏を形成し密接に関係し合っている。
 仙台は札幌、広島、福岡と同様に「地方中枢都市」「広域中心都市」に位置付けられ、仙台駅前などの都心部にはオフィスビルや商業施設、ホテルなどの高層 ビルが建ち並び、 地下鉄が走り、 街路樹の美しい広幅員の幹線道路が整備され、大都市としての風格を備えている。その一方で、「支店経済都市」と呼ばれ東京や大阪に本社を置く企業の植民地 に過ぎ な いという厳しい見方があり「東京都仙台区」とまで呼ばれたりする。確かに都市規模のわりに地元資本の企業が少ない点など、資本蓄積の乏しさが都市の成長力 の底の浅さ、脆弱さの一因であることは間違い ない。首都圏の更なる膨張と一極集中が仙台がこれまで持っていた中枢性を奪いつつあるとも言えよう。近年、仙台都市圏にはトヨタ関連企業の進出が相次 ぎ、愛知、北部九州に次ぐ自動車産業の集積地帯になろうとしている。リーマンショック以後の不 況から進出計画に遅れはあるものの、今後の仙台都市圏の発展に自動車産業の果たす役割は極めて大きいと予想される。しかし結局、地元資本の力では無いこの 成長の仕方には危うさがつきまとうし、仙台都市圏の自立的発展とは全く言えないと思う。しかしこのトヨタの進出が仙台都市圏にとって大きなチャンスである こと は間違いなく、工業的側面に留まらない都市圏の発展の呼び水にすべきであろう。仙台資本の奮起が今こそ求められるのではないか。今後の仙台都市圏の変化に 興味は尽きない。

 ところでそもそも「都市圏」とは何なのか。明確な定義が都市圏という言葉には存在しないため、その定義の仕方によって含まれる市町村は変わってくるのだ が、例 えば広域行政推進協議会や10%通勤圏などで仙台都市圏を定義すると、人口では約150〜160万人規模となる。
 また「仙台経済圏は300万人」という言い方も聞く。宮城県の人口が約240万人であることから宮城県と山形都市圏や福島都市圏を含めた地域ぐらいを仙 台 経済圏と呼ぶようだ。東北地方の人口は約950万人であり、近年の交通機関の発達と東北地方における仙台への様々な面での一極集中が、この所謂「仙台経済 圏」の規模をもっと大きくすることも予想される。
 しかし東北地方全体では人口が減少傾向にあり、仙台市の人口面からの成長にも陰りが見られる。日本全体が人口減少期に入った現在、今後は交流人口の増 加、そのためにも交通機関の利便性向上が都市圏の発展を左右すると言っても過言ではないだろう。


仙 台都市圏広域行政推進協議会を構成する
14市町村の人口の推移


2010 年10月
2005 年10月
2000 年10月
仙 台市
1,045,903
1,025,126 1,008,130
塩 竈市
56,490
59,357
61,547
名 取市
73,140
68,662
67,216
多 賀城市
62,979
62,717
61,457
岩 沼市
44,198
43,921
41,407
亘 理町
34,846
35,132
34,770
山 元町
16,711
17,713
18,537
松 島町
15,089
16,193
17,059
七ヶ 浜町
20,419
21,068
21,131
利 府町
34,000
32,257
29,848
大 和町
24,897
24,509
24,410
大 郷町
8,929
9,424
9,768
富 谷町
47,046
41,593
35,909
大 衡村
5,334
5,607
5,992
合  計
1,489,981
1,463,279
1,437,181
総務省「国勢調査」より作成



仙台市の中心部(仙台駅から勾当台公園にかけての一帯)

 仙台都市圏の中心部(=仙台市の中心部)は、一般的に仙台駅から勾当台公園駅にかけての一帯を指す。道路としては東西方向に南から南町通、青葉通り、広 瀬通り、定禅寺通、南北方向には東から駅前通、愛宕上杉通、東二番丁通り、国分町通り、晩翠通り、西公園通りの各幹線道路が整備されている。
 これらの道路は戦後の「戦災復興計画」によって拡幅、新設された街路であり、現在の仙台の中心部は戦災復興計画の完成によってその基盤が整えられたもの である。これら広幅員で街路樹も備えられた道路という骨太のインフラ≠ェあるからこそ仙台に大都市としての風格があると思われる。戦災復興事業の歴史的 な評価については今日半ば忘れらている感が強いが、仙台の中心部は全国各地で行われた戦災復興事業の中でも特に成功した事例の1つであり、そのことは仙台 市民にもっと知られても良いと思われる。


仙台駅前のバスターミナル 2012.3

駅前通 2012.3

勾当台公園と宮城県庁(左)とNTTドコモ東北(右) 2008.11

国道45号。正面は仙台第二合同庁舎 2012.3

A仙台都市圏の交通
 仙台都市圏の交通を概観しておく。これは概観と言いつつも私の問題意識そのものとも言える。そのため主観的な部分もあるが、以下をこのサイトにおける 基本的な仙台都市圏の交通の概観として纏めておきたい。

愛宕橋駅付近 手前は愛宕大橋 仙台駅方向を望む(この辺) 2007.2

高架化された長町駅 2011.10

 もっとも興味があるのは、やはり鉄道なのだが仙台都市圏においては、東北本線及び利府支線、常磐線、そして仙台市交通局南北線が南北軸、仙石線と仙山線 が東西軸を概ね形成している。 仙台空港鉄道が開業し、仙台市交通局東西線の建設もたけなわで、鉄道網は基本的な骨格の整備は終わりつつあると言ってもいいだろう。仙台市交通局 南北線の泉中央以北の延伸や仙台市内へのLRT導入といった新線建設構想の話題はあるものの、今後は既存の鉄道の連続立体交差化や新駅設置で更なる高度化 を図 りつつ、ダイヤの充実といったソフト面での改善が欠かせない。特にダイヤに関しては、JRや民鉄の本社所在地であったり、交通機関同士の競争原理が強く働 いている福岡、札幌、広島と比 べて大きく遅れているという印象が強い。列車本数が少ない、等間隔ダイヤになっていない、快速が少ない又は無い、など不満を挙げればキリがない。近年の高 速バス の発達によって競争原理が生まれ、こうした問題を多少改善した側面もあったが、ターゲット層が完全に一致しているわけでもなく、棲み分けができて落ち着い てきている。仙台都市圏の 鉄道網は、JR東日本をどのようにやる気≠ノさせるかが大きな課題であると言える。また仙台市交通局の地下鉄も南北線の利用者数の伸び悩みや東西線建設 に伴 う経営悪化の懸念などの問題は市民の関心が大きい。この点もどのように考えていくか、自分なりに纏めていきたいと考えている。

 
次にバスについては、まず路線バスは仙台都市圏においては、仙台市交通局と宮城交通が主たる事業者で、鉄道網を補完するように 路線網を構築 している。しかし路線バスに対する利用者の不満は大きく、本数が少ない、始発が遅く最終が早い、運賃が高い、系統がわかりにくい、渋滞に巻き込まれ定時性 が確保されない等の問題点を抱えている。仙台都市圏では鉄道利用者数は横這いや微減がある一方で大きく増加している駅があることから全体的には微増傾向を 維持しているのに対し、路線バスの利用者は年々減少している。路線バ スは仙台市がオ ムニバスタウンに指定されて以降、公共車両優先システムやバスロケーションシステム、バス停の改良といったインフラ整備や快速バスの 導入といった 改善策 を打ち出している。今後は(都)北四番丁大衡線の開通に伴い「幹線バスシステム」の導入が予定される計画もある。路線バスの活性化については、鉄道との機 能分担や道路網の整備といった部分も考える必要があり、路線バス単独の問題ではないだけに総合的な視点で捉えていきたいと思う。
 そして近年成長著しいのが高速バスだ。高速バスの運行数や路線網の拡大そのものも大変面白いが、仙台都市圏の拡大という議論において高速 バスの果たしている役割が非常に大きいというテーマも非常に興味深い。例えば高速バスの運行開始以後、急激に運行数を増やした仙台〜福島線の開設の場合、 従来それ ほど交流が 活発でかった仙台と福島の都市圏の人の行き来が盛んになり、仙台〜山形と同様の都市間流動が生まれてきたのである。これは高速バス開設による心理的距離の 短縮が非常に大きいと思われる。高速バスによるこのような都市間の流動を活発化させる効果は、仙台都市圏の発展の大きなカギと考えている。このような点で 仙台都市圏にとどまる話ではないが、高速バスについても色々と考えていきたいと思う。

 道路網は、仙台都市圏は自動車専用道路で環状道路網が完成しつつあることが大きな特徴であろう。東北自動車道と仙台東部道路が南北軸、仙台南部道路と三 陸道及び仙台北部道路が東西軸を形成し環状道路を形成している。これら環状道路と都心部を結ぶ自動車専用道路には仙台西道路がある。更に仙台東部道路と都 心部を結ぶ自専道として仙台東道路が計画されているが、まだ実現の見通しは立っていない。仙台市の都市計画道路は「3環状12放射状線」を骨格に整備が進 められている。1999年7月に発表された仙台市による『ア クセス30分 構想』やその後の『仙 台 市総合道路整備計画(2006年度〜2010年度)』に よると公共交通機関の走行改善に繋がるような都市計画道路を優先して整備するという。これら都市計画道路の建設の進捗を纏めていくのもこのサイトの目的の 1つである。

 港湾は2001年に特定重要港湾に昇格した仙台塩釜港(仙台港区、塩釜港区)があり、南東北の国際中核港湾に位置付けられている。特に仙台港区は発展を 続けており、コンテナターミナルの整備が進み定期国際コンテナ航路も着実に拡充され、海上コンテ ナの取 扱個数は増加を続けており年間10万TEUの水準を突破した。また新日本石油精製(株)仙台製油所が立地し、東北地方唯一の製油所として能力増強がされた り、仙台市ガス局のLNG基地や東北電力(株)の火力発電所があり、塩釜港区に古くから存在する石油元売各社の油槽所と併せエネルギー基地としての役割が 大 きい。更に近年は複数の飼料メーカーと商社の共同出資会社である仙台飼料(株)が稼働するなど、石巻港や塩釜港区が担ってきた飼料基地としての機能も持ち 始めた。仙 台港区の周辺では土地区画整理事業が進められており、大規模なアウトレットモールが開店するなど工業や物流機能だけでなく商業的機能も高まっている。仙台 臨海鉄道や仙台東部道路といった交通機関が仙台塩釜港と有機的な結び付きを強化しており、今後も自動車産業の集積を目指す仙台都市圏にとって仙台塩釜港の 機能強化は必須で、接続する交通機関を含め発展が期待できる。

 空港は仙台空港が名取市と岩沼市に跨って存在する。乗降客数は年間約340万人(国内線:約300万人強、国際線:約40万人弱)で広島空港よりも多く 国内第10位にランクされる。羽田便の無い3大都市圏以外の地方空港としてはダントツのトップである(仙台空港に次ぐのが新潟空港の年間約130万人)。 アクセス鉄道 が2007年3月に開業し、 よりいっそう東北地方のゲートウェイとしての機能が高まった。今後このアクセス鉄道が仙山線に乗り入れるようにするなど山形県からの集客を強化すると共 に、福島県北部、岩手県南部なども自県の空港よりも仙台空港が便利な地域といえ、これら地域の利用者の更なる拡大を図ることで、仙台空港に発着する航空便 の維持拡大に繋がる筈だ。 航空業界の規制緩和に伴い路線の改廃が簡単に行われる現在、県域を超えた連携で仙台空港の機能を強化することが東北地方全体にとって有益だと考えるべきで あろう。

3.仙台都市圏の鉄道

4. 仙台都市圏の路線バス

5. 仙台都市圏の高速バス

6.仙台都市圏の高速道路、 自動車専用 道路、地域高規格道路

7. 仙台都市圏の都市計画道 路

8.仙台塩釜港(仙台港区、 塩釜港区)

9.仙台空港

10. 仙台都市圏に関する 資料     

 私が所有する仙台都市圏(東北地方全体もあるが・・・)に関する資料類を50音順に適当に纏めてみた。見落としや今ちょうど手元に無いものもあるし、言 わば本人のための備忘録である。

書   名
種 類
著 者
出 版社
発 行年
備 考・内容・コメントなど
環状道路の時代
書籍

日経BP社
2006年4月
仙台都市圏環状自動車専用道路
規制緩和と全県一元化バス会社の再生
−宮城交通の経営改善計画
雑誌
谷田貝 勲
(財)運輸調査局
2001年11月
『運輸と経済』第61巻第11号、所収
岐路に立つ東北 「30兆円経済圏」飛躍の 条件
書籍

日本経済新聞社
1998年4月

公共交通機関を活かしたまちづくり
仙台の都心交通に対するいくつかの提言
書籍

仙台都市総合研究機構
1998年10月

航空写真集 仙台アンヴォル
「仙台市地下鉄南北線沿線・東西線計画路線沿線編」
書籍

マップ・システム・カンパニー
2002年1月

コンパクトシ ティ創造のための基本方向についての調査研 究
書籍

仙台都市総合研究機構
1999年3月

支店機能再編と都市再編
〜地方中枢都市の歴史と現況〜
雑誌
野間 重光
URC都市科学
2001年3月
『URC都市科学』Vol.47所収
ジミ都市 仙台の本 −杜の都へのナビゲー ション−
書籍
大内 順
しののめ出版
2007年5月

写真で読む地域の変貌−東日本編−
書籍
穂積 修一
二宮書店
2001年11月
宮城県
図説 日本の生活圏
書籍
伊藤 喜栄
古今書院
2004年11月
広域中心都市
全国アメニティストリート大研究
書籍
山口 貴久男
東洋経済新報社
1991年7月
仙台サンモール一番町
仙台一番町四丁目モール
仙台の小さなたのしさ
仙台141ビル
仙石線・石巻線
雑誌
鈴木 文彦
鉄道ジャーナル社
2001年4月
『鉄道ジャーナル』通巻第414号、所収
仙石線・仙山線・石巻線
雑誌

朝日新聞出版
2010年5月
『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線』No.41
仙台うわさの現場検証
雑誌

仙台経済界
2001年4月

仙台学 Vol.6
雑誌

別冊東北学編集室
2008年7月
仙台駅24時
高速バス、仙台へゆく

仙台空港鉄道の建設
雑誌
佐藤 信之
鉄道ジャーナル社
2003年9月
『鉄道ジャーナル』通巻第443号、所収
仙台交通案内 バス路線 JR 地下鉄
地図

塔文社
2000年

仙台市営地下鉄東西線計画
雑誌
佐藤 信之
鉄道ジャーナル社
2003年11月
『鉄道ジャーナル』通巻第445号、所収
仙台市地下鉄南北線の開業をめぐって
雑誌
佐藤 悳 鉄道図書刊行会
1987年10月
『鉄道ピクトリアル』通巻第485号、所収
仙台市電
書籍

ネコ・パブリッシング 2007年2月
仙台市の発展動向と都市交通
雑誌
西川 由造
(財)運輸調査局
1975年4月
『運輸と経済』第35巻第4号、所収
仙台商圏'06 雑誌 仙台経済界 2005年11月 毎年発行
仙台都市圏で活躍する個性派近郊電車
雑誌
土屋 武之
鉄道ジャーナル社
2012年5月
『鉄道ジャーナル』通巻第547号、所収
仙台とっておき散歩道
書籍
西大立目 祥子
無明舎出版
2003年5月

仙台の春 活況の都市圏輸送と空港アクセス を見る
雑誌
鶴 通孝
鉄道ジャーナル社
2007年5月
『鉄道ジャーナル』通巻第487号、所収
仙台のプロジェクト100 仙台経済界 2009臨時増刊号
雑誌

仙台経済界
2009年5月
毎年発行
仙台発着の高速バス事情
雑誌
遠藤 広正
古今書院
2003年2月
『地理』通巻第570号、所収
地域経済特集 動き出す杜の都 仙台
雑誌

東洋経済新報社
2003年3月
『週刊 東洋経済』通巻第5814号、所収
地域経済特集 日本一住みやすい街への挑戦 仙台
雑誌

東洋経済新報社
2004年7月
『週刊 東洋経済』通巻第5901号、所収
地域経済特集 2010年仙台経済はここまで変わる
雑誌

東洋経済新報社
2005年3月
『週刊 東洋経済』通巻第5947号、所収
地域交通をあるく
書籍
大西 隆 山海堂
1980年9月
仙台−地下鉄は切札たりうるか
地図で見る仙台の変遷
解説と地図

(財)日本地図センター
1998年10月

地方中心都市を拠点とする昼行高速バスの発 達
雑誌
鈴木 文彦
(財)運輸調査局
2001年2月
『運輸と経済』第61巻第2号、所収
地方都市圏シティライナーの現状
雑誌

鉄道ジャーナル社
1991年5月
『鉄道ジャーナル』通巻第295号、所収
地方都市圏にお ける公共交通機関の利用促進調査報告書
書籍

運輸経済研究センター
1998年3月

昼行高速バスの実績と課題
雑誌
鈴木 文彦
(財)運輸調査局
1997年11月
『運輸と経済』第57巻第11号、所収
東北開発120年
書籍
岩本 由輝
刀水書房
1994年1月

東北新幹線・東北本線の最近の輸送状況と今 後
雑誌
中島 幹夫
鉄道ジャーナル社
1995年3月
『鉄道ジャーナル』通巻第341号、所収
東北 地図で読む百年
書籍

古今書院
2000年12月
東北の中枢都市−仙台市
急激な都市化に対応する街−仙台市泉区
東北本線利府駅前広場が完成
雑誌
遠藤 浩一
鉄道図書刊行会
1990年9月
『鉄道ピクトリアル』通巻第532号、所収
東北650駅
書籍

小学館
1993年5月

都市の景観地理−日本編1
書籍
阿部 和俊
古今書院
2007年3月
仙台における市街地景観の変遷と景観計画
都市発展と支店立地−都市の拠点性−
書籍
日野 正輝
古今書院
1996年12月

21世紀をめざして羽ばたく仙台都市圏の交 通
雑誌
天野 義信
(財)運輸調査局
1990年6月
『運輸と経済』第50巻第6号、所収
日経都市シリーズ 仙台
書籍

日本経済新聞社
1995年3月

日本経済地理読本(第7版)
書籍
竹内 淳彦
東洋経済新報社
2004年4月
東北−後進性の克服と直面する課題
日本の空港なるほど事情
書籍
谷川 一巳
山海堂
2003年9月
仙台空港
別冊ベストカー バスマガジン  Vol.29
雑誌

三推社/講談社
2008年5月
東北圏内の都市間高速バスネットワーク
変貌する都市圏 2004年版
2000年国勢調査にみる全国都市圏の盛衰
書籍

日本経済新聞社
日経産業消費研究所
2003年11月

みなとを拓いた400年 −仙台湾沿岸域の 歴史−
書籍

運輸省第二港湾建設局
塩釜工事事務所
1987年8月

宮城交通
書籍

BJエディターズ
1999年12月

宮城電気鉄道よもやま話
雑誌
佐藤 悳
鉄道図書刊行会
1987年3月
『鉄道ピクトリアル』通巻第477号、所収
もっともっと仙山線
書籍
越前 勤
創栄出版
1994年9月

忘れかけの街・仙台 〜昭和40年頃、そし て今〜
書籍

河北新報出版センター
2005年4月